『はがない』11巻が出ない理由と、僕が二次創作でそれを書いた理由
※これは、11巻が出ないと僕が信じて書いた記事です。
11巻の感想については下のエントリをご覧ください。
→はがない最終巻が俺の二次創作に比べてクソだった理由を、各ヒロイン別に検証してみる - esu-kei_text
ライトノベル『僕は友達が少ない』の10巻にて、男子主人公(羽瀬川小鷹)は、あるヒロインの告白にこう答える。
「え、あ、はい」
その10巻のあとがきで「次巻はまるごとエピローグ」と書いている。
つまり、『はがない』本編はこの情けない告白の返事で終わったということだ。
だから、このヒロインと結ばれる展開以外にない。
(あったとしても、それは作者が10巻を書き終えたときに想定したものではない)
さらに、その告白の返事をしたときの、男子主人公はどういう状況であったか。
(1)自分がハーレム状態だった部活への退部届を申請する書類を受け取った
(2)冬季休暇後、一週間の停学処分を受けている
そして、この『はがない』には読者人気投票ダントツ一位の別ヒロインがいるのだが、その告白に男子主人公は結局のところ「はい」とは一度も言っていないのだ。
読者の多くはこの結末に納得できないだろう。
ただ、それは物語の各ヒロインたちもそうなのだ。
特に、終盤の9、10巻のメインヒロインというべき後輩女子は、男子主人公が告白に「はい」と答えたヒロインのことだけは気にかけていないのである。
(例えば、10巻で混浴場にいたことを律儀に報告しているくだりを見れば、彼女が自分の立ち位置をどのように受け止めていたのかがわかる)
そして、「はい」の返事をもらったヒロインがどのようにふるまうかについては、10巻の『人狼』のリプレイを見ればわかる。
つまり、彼女は男子主人公のハーレムENDなんて甘っちょろい結末は、さらさら望んでいないのである。
二週間の冬季休暇、そして一週間の停学処分は、男子主人公の目を覚ますには十分すぎる時間である。
男子主人公は優柔不断ゆえに「はい」という返事を取り消すことができない性格である。
後悔することはあっても、「気の迷いだったからなかったことにしてくれ」と責任逃れな口上はできないだろう。
『はがない』を読み返せば、そのヒロインと結ばれる伏線(と、それ以外のヒロインとは結ばれない伏線)が至るところに張り巡らされていることを知ることがわかるはずだ。
個人的にこれは作者の狙いではないかと考えている。
推理小説で犯人が意表をつく人物であるのと同じである。
その解決編として、作者は最終巻である11巻を書く予定だったのではないか。
ところが、その11巻が出る気配がない。
理由の一つは、担当絵師の健康状態にあるだろう。
2013年10月から2014年4月まで放送されたアニメ『凪のあすから』のキャラクター原案以降、この絵師は表立った仕事をしていない。
もう一つが読者の反応である。ネット世論の多くが、10巻の結末を「なかったこと」ととらえている。読者が望んでいないのならば、いっそのこと未完にしてやれ、と作者はふてくされているのかもしれない。
ということで、おそらく世に出ないであろう11巻を想定して書かれたのが、僕の二次創作である。
二次創作というものは、基本的に原作の設定を無節操に取り入れるのが一般的だが、今回の二次創作は原作準拠である。
その中で、男子主人公が退部届の申請をしたり、告白に「はい」と答えた動機はすべて説明しているので、知りたければ読んでくれ、というほかない。
原作のそれぞれのエピソードにどのような意味があったのかに気づくことができるはずだ。
ただし、二つだけオリジナルエピソードを入れている。いずれも12月上旬の隙間を埋めたものだ。これは、物語を終わらせるためには不可欠な要素として入れた。
原作が、男子主人公の視点でしか描かれていないので、そのエピソードは原作設定の許容範囲内だと思うのだが、読者をいたずらに困惑させる結果を招いたのかもしれない。
僕は『はがない』作者ではなく、一読者にすぎない。
これは僕が予想した「作者が書きたかってであろう、そして世に出ることはないであろう隣人部の結末」である。
・隣人部のいちばん長い放課後
http://d.hatena.ne.jp/esu-kei/20141123/p1
(余談)
10巻には挿絵がない。ならば、そのエピローグまで書いて、『はがない』を終わらせても問題なかったはずだ。担当絵師が仕事に復帰できる見込みはあるのだろうか。10巻のあとがきを読めばわかるように、書き終えてから発行までは、数ヶ月の猶予があったのだ(これは他の巻ではなかったこと)
そもそも、その予想されるエピローグが、これまでの『はがない』のような、短いエピソードの積み重ねでは書けない内容である。どれぐらい修羅場かといえば、僕の二次創作を読めばわかる。原作に準拠するならば、あれぐらい書かなければならない状況なのだ。
そして、そのエピローグは、おそらく男子主人公の視点では書けない。三人称か各ヒロインの語りとなるはずである。ところが、そういうエピソード断片集の第一弾が、なぜか『コネクト』というわけのわからないタイトルで出されている。
『僕は友達が少ない コネクト』は外伝ではなく本編で9番目に読むべき内容である。二期のアニメ制作を通じて、ふくらんだキャラの設定をまとめ、来るべき結末に備えたであろう短編集である。なのに『コネクト』なんて題名をつけたら、読者が何番目に読めばわからないではないか。
もし『コネクト』を9巻として発表したならば(最初に数ページの序文を書くだけでよかったのに)、そのエピローグが読者に受け入れられる下地ができていたではないか。
読者に理想的な『はがない』は6巻までといっていい。
以降に出てくる生徒会の面々が出てくる二次創作なんて、僕が書いたもの以外まずお目にかかれまい。
9巻以降の夜空と小鳩のコンビについてもそうだ。たいていの『はがない』二次創作では、星奈は夜空に最終的には必ず言い負かされる。つまり、星奈は夜空に勝てない関係だと読者は受け止めている。だからこそ、星奈が絶対にさからえない相手である小鳩と夜空がコンビを組むことは、読者には受け入れがたいのだ。
もし、ラノベの理想的な人間関係を知りたいなら、『はがない』の7巻以降は読むべきではない。
ただ、多くのファンには「迷走」の一言で片付けられた7巻以降の展開は、作者の各キャラへの思い入れの強さが導いたものだと感じる。
その方向性の先にあるものは何か。10巻の続きが世に出ないかぎり、読者がそれを知るてだてはない。僕は二次創作でそれを書いたが、所詮は二次創作にすぎない。
いつか、どのような形であれ、『はがない』の結末が作者の手で出ることを願っている。
※これは、11巻が出ないと僕が信じて書いた記事です。
11巻の感想については下のエントリをご覧ください。
→はがない最終巻が俺の二次創作に比べてクソだった理由を、各ヒロイン別に検証してみる - esu-kei_text