【感想】虎虎『中二病でも恋がしたい! 2』 (評価・D)

 
七宮なんとかさん反省会開催のお知らせ
あと、パロディはまどマギじゃなくて京アニ作品にしろ!
 

中二病でも恋がしたい! (2)

中二病でも恋がしたい! (2)

 
 『中二病でも恋がしたい!』アニメ二期の評判がイマイチである。
 例えば、《animeanime.jp》の視聴アニメアンケートによると、男性人気はあるが、女子には支持されていないという。
http://news.nicovideo.jp/watch/nw962585
 
 ラブコメは、男女ともに支持を得なければ人気作にはならないと考える。
 といっても、男女の恋愛観は大いに異なる。基本的に、男子は恋愛をナメすぎているし、女子は恋愛にハマりすぎる。
 では、異性に媚びれば成功するのかといえば、そんな中途半端なスタンスでは面白さが損なわれる。
 結局は、読者がそれぞれのキャラに感情移入できるほど深みのある描写をする他ない。
 物語の展開上、むくわれないキャラに思い入れをいだくことができるラブコメ。思わず、ファンが二次創作をしたくなるラブコメ
 それこそが、人気作のラブコメになる条件ではないだろうか。
 
 
 では、『中二病でも恋がしたい!』アニメ二期が、なぜ女子に支持されないか。
 原作二巻を語る前に、まずそれを分析してみる。
 
(1)男主人公の唯一の友人である一色誠のぞんざいな扱い
 
 アニメ二期第1話にて、高2になった主人公・富樫勇太は、友人である一色誠とクラスが別になるのだが、それを嘆くどころか、喜んだ様子を見せる。
 このことに、視聴者は嫌悪感というより戸惑いを感じたのではないか。
 女子に支持を得る男性視点のラブコメといえば、男子の友情をなおざりにしないことだろう。それは、男子同士のカップリング妄想のネタという意味ではない。女子はギスギスした自分たちの友情に疲れているので、男子の適当な友情関係に憧れているのだ。
 それなのに、アニメ『中二病』二期は、1話にて一色誠を見捨てた。これは「このアニメはキャラ萌え作品です。ヒロインにブヒブヒするだけのアニメです」と宣言するに等しい。
 
 また、一色誠は「中二病」患者ではない。だから、客観的な視点を持つことができる貴重な人物なのだ。
 一色からすれば、「中二病」は自分の憧れている「恋愛」という要素から、遠く離れたものだと考えている。ところが、「中二病」に理解のある富樫勇太は、女子に囲まれてニヤニヤしているのだ。
 読者にもっとも近い存在として、一色誠を物語に活用できる展開は、いくらでも用意できたはずなのだ。
 一色誠を軽く扱ったことで、その可能性は断たれてしまい、視聴者は意味不明の「中二病」バトルを、ツッコミ不在で見ることを強制される。漫画『ボボボーボ・ボーボボ』のバトルを、ビュティ無しで読まされるようなものである。これでは、一般的視聴者は音を上げてしまうだろう。
 
(2)七宮なんとかさんの魅力の無さ
 
 アニメ二期第9話にて、ようやく七宮なんとかさんは「都合の良い女」から脱した。遅すぎた、といっていい。
 『中二病』の特徴は、男主人公が「六花ひとすじ」でブレないところにある。だが、そんな一途な男主人公のラブコメを、女子が支持しないのはなぜか。それは、恋敵であるはずの七宮なんとかさんの不甲斐なさにあるだろう。
 この七宮なんとかさんは、アニメ二期のメインビジュアルで、眼帯ヒロイン六花と2ショットを飾っている。ところが、ほとんどの視聴者に下の名前を覚えてもらえないほどの扱いが悪い。
 七宮なんとかさんは、中学時代に、富樫勇太と知り合い、彼の「中二病」資質を開花させてコンビを組んでいた。自分を「魔法魔王少女」と名のり、勇太を「勇者」と呼んでいた。魔王と勇者が手を組んでいたのだ。
 『ドラゴンボール』における、孫悟空とピッコロがコンビを組むようなものである。なぜ、孫悟空とピッコロが共闘したのかといえば、異星人サイヤ人が襲来してきたからだ。では、勇太と七宮は何らかの敵がいたのか? というような設定は語られない。
 その後、七宮なんとかさんは転校し、ひとりになった勇太は「中二病」から卒業した。その記憶を封印しようとしていたときに、眼帯少女である現役「中二病」患者の六花に出会い、いろいろあって恋人同士になるという設定である。
 こうして、勇太と六花が磐石カップルになったときに、七宮なんとかさんはやって来るのだ。視聴者は思わず修羅場を期待したのだが、七宮は「都合の良い女」を演じるのである。
 それに耐えられなくなるのが第9話なのだ。あまりにも遅すぎる。
 『魔法少女まどかマギカ』の成功例から考えるに、第3話で物語の方向性を提示させないと視聴者は離れてしまう。
 だから、次のような脚本にすべきであった。
 
第1話 七宮なんとかさん登場。勇太と六花のカップルを祝する
第2話 勇太と六花のラブラブデート
第3話 七宮なんとかさん、六花の「邪王真眼」の能力低下を指摘。
    中二病バトルで、六花、七宮に敗れる。
第4話〜 凸守と森夏とか適当に出してお茶をにごしつつ、
     迷える六花が、みずからの能力をさらに開花させることに成功
 
 実は第9話で物語が動くという展開は、原作二巻を読めば納得できる。
 七宮なんとかさんが、まともに行動を起こすのは、一度しかないからだ。
 
 だが、いろいろやりかたはあったはずだ。少なくとも、僕に七宮なんとかさんじゃなくて、七宮智音と呼ばせるようなエピソードを積み重ねるやり方が。
 七宮は丹生谷森夏とも浅からぬ関係にある。そのことを利用すれば、視聴者に彼女の下の名前を覚えさせることはできただろう。
 
 結局のところ、七宮なんとかさんのキャラ造形ができていないから、第9話まで本性をあらわすことができなかったのだ。これは、原作二巻の完成度の低さが、一つの要因ではある。
 
 さて、原作二巻についてだが、アニメとは展開が異なるものの、それを列記する必要性は感じない。
 とりあえず、七宮なんとかさんの存在感の無さである。読者の想像力を刺激する要素がまったくない。勇太が『六花ひとすじ』な時点で、敗北が決定しているヒロインだが、それでも美学を貫くことはできたはずだ。
 原作二巻を読んで、七宮視点の二次創作を書こうとするファンはいるだろうか?
 そして、文中には『魔法少女まどかマギカ』のパロディが目立つ。せめて、京都アニメーション作品を使うべきだろう、と読みながら思ったものだ。
 
 『中二病』が文学賞を受賞したのは「作者の真面目さ」にあるという。一巻では、まがりなりにも、プロローグ+12話+エピローグという体裁がとられていて、文章の精度が最後まで落ちることはなかった(上がることもなかったが)。二巻では、プロローグ+9話+エピローグとボリュームダウンしている。
 そして、肝心の謎解きが拍子抜けする。「恋願うな」という暗号を頼りに、六花の居場所を探しだすという、まともな展開になったと喜んでいたら、小説では影のうすい丹生谷森夏が、光の速さで謎を解き明かしてしまう。そのガッカリ度は、イスから滑り落ちるどころの騒ぎではない。
 勇者と魔王の設定にしろ、恋願うなの暗号にしろ、もっと練りこめば面白さにつながったはずなのだ。それができなかったのは作者の努力不足である。編集者がボツにすべき完成度であろう。こんなものを読まされる一般読者の身にもなってほしい。
 学校生活の勉強面の描写は、意外にも丁寧なところがあり、高校時代の作者が真面目だったことがうかがえるが、恋愛描写は実に頼りない。妄想全開でも良いのだ。妄想して相手を誤解することこそが、高校ラブコメの魅力ではないのか。
 しかし、そういう誤解が描かれることはない。自己完結していて、二次創作の可能性などないラブコメである。このシナリオでは、ギャルゲが作れるかどうかも疑問であろう。