最近やってるフリーRPGと、本音と建前について

 
 とうとう、仕事関係の資格を取るハメになってしまった。転職しようといろいろしたのがバレたせいである。ひそかに、エロゲのシナリオライターを目指すべく、あえぎ声における「……」の割合について研究していたのだが、その成果を世間に発表することもできなくなってしまった。嗚呼。
 
 そんなわけで、その資格勉強をしなければならないのだが、ついつい僕は「RPGのレベル上げ」という、世界でもっとも安っぽい「報われる努力」に専念してしまうのだ。
 

↑戦闘回数が失われた時間を如実に物語っている……
 
 今プレイしているのは、RPGツクール2000で作られたフリーゲーム「はにょう5+」のオマケRPGである。
 
・VIPRPG@Wiki http://www10.atwiki.jp/vip_rpg/
・はにょう5+攻略wiki http://www23.atwiki.jp/hanyou5/
 
 作者自身が作中で認める「作りこみの甘さ」と、「キャラクターメイクのランダム性の高さ」ゆえに、攻略ページすら作られていない、不憫なこのオマケRPGなのだが、なかなか実験的なゲームデザインで面白いのだ。ヒマだったら、紹介記事を作るかもしれないが、余計な情報がないからこそプレイして楽しかったわけで、僕にできることは「ラスボスを倒したぜ!」と報告するだけでいいかもしれない。
 
 ところで。
 
 フリーゲームをプレイすると、「本音」と「建前」について、僕はいろいろ考えてしまうのだ。
 
 今から十年ぐらい前に、フリーゲームにハマって、その紹介ページを作っていたときに、それぞれの作者にアンケートをしてみたことがある。
 
 その一つがこれ。
 
Q:あなたのRPGのテーマとは何ですか?
 
 たいていの作者の人はこの設問に口を濁した。「それは作者が語るべきではない」という人や「テーマなんていらない」という人がいた。
 
 これは僕にとって驚くべきことだった。僕はただ、その作者が「俺にしか作れないゲームを作る」という創作動機を知りたくて「テーマ」という言葉を使ったのに。
 
 例えば、「私の作品のテーマは、爽快感のあるバトルが楽しめるRPGを作ること」とか。それをきっかけに「爽快感のあるバトルとは何か?」という考察が始まり、そこからどのような戦闘形式にすればよいかというゲームデザインが練られて、それに反映された架空世界が構築される。それが、RPGを作る基本ではないか、と僕は思っていたのだ。
 
 ところが、フリーゲームの作者たちは、RPGの「建前」を気にしていたのだ。RPGというものには、「主人公は世界を救わなければならない」「愛と平和を主題にしなければならない」などの「建前」がなければならないと、彼らの多くは考えているようだった。それがゲームを作ったことのない僕にとっては、新鮮だった。
 
 でも、それは表現者にとっては欠かせないものであったのかもしれない。
 
 最近、ラノベを乱読して感じたのは、十年前のフリーゲーム作家が抱えていた「建前」というジレンマが感じられないことである。
 
 ラノベにおいては、「弱い者イジメをしてはいけない」という「建前」よりも、「いじめられるぐらいなら、いじめる側に回ったほうがいい」という「本音」がまかり通っていることが多い。そういう世界観でほとんどの物語は語られているので、読んでてゲンナリしてくる。いやいや、イジメってものは、自然発生するものじゃないだろう。それを阻止すべき方法はあるはずじゃないかと。
 
 例えば、明治維新において、多くの偉人を輩出した「鹿児島県下加治屋町」。この町から、西郷隆盛大久保利通などの明治のリーダーが生まれた。世界を震撼させた日露戦争のとき、陸軍の総司令官は大山巌で、海軍の連合艦隊総司令官は東郷平八郎だったが、どちらも下加治屋町出身である。
 
 薩摩藩では武士の子は「郷中」というグループに属したのだが、下加治屋町では西郷隆盛を中心として、次のような教えが徹底されていた。
 
・決して嘘を言うな
・軽薄な言動を慎め
・弱い者いじめをするな
 
 そういう「武士の子としての誇り」こそ、現在でも語り継がなければならないものではないかと思う。まあ、僕は両親が立派な人だったし、兄がいたりで「弱い者いじめをしない」ということが実践できたわけだけど、そうじゃない人がいっぱいいることは知っている。
 
 ただ、こういう「建前」というのは、やっぱり大事にすべきだと思うし、何かを表現しようとする人は、そんな「建前」と向かい合っていくべきだ。何でもかんでも「受け手のニーズにこたえる」を盾にするんじゃなくて。
 
 くれぐれも「いじめられるぐらいなら、いじめる側に回れ」と言うような大人にはならないように。そんな考えを持ちたくなるときは、西郷隆盛の顔を思い出せばいい。きっと、西郷さんはそんなあなたを見て悲しむと思う。
 
 と、そんなことを考えながら、RPGのレベル上げにはげむ最近の僕でありました。