初音ミクのいる風景 ― フリーソフトでもできる3D実写合成映像「マッチムーブ」 - ニコニコ技術部員たち(6)

 

 
 
 「ニコニコ技術部員たち(5)」で紹介した「【3DCG】くるっと・おどって・初音ミク【ねんどろいど】」のように、実写と見間違うような3DCGが、映画やCMの世界だけでなく、ニコニコ動画でも公開されるようになっている。
 
 その中には、フリーソフトMMD」で作成した初音ミクを、実写映像に出演させている動画だってある。
 

 
 17秒という短い動画ながらも、様々な可能性を感じさせる作品だ。
 
 作者によれば、これは「Adobe After Effects」のモーショントラッキング機能で合成したものであるらしい。
 高価であることで有名な「After Effects」だが、この作者は試用中に、この動画を完成させたとのこと。
「Adobe After Effects CS5」公式ページ
 
 
 これら、実写と3DCGを合成した映像を「マッチムーブ」と言う。
 映画やCMではおなじみの技術だが、今では個人レベルでの作成も可能になってきているのだ。
 
 この「マッチムーブ」を使ったMMD動画はほとんどないのが現状だが、逆に言えばチャンスがあるということだ。
 そして、実はフリーソフトだけでも実写合成映像「マッチムーブ」を作ることはできる(くわしくは後述)
 
 
 さて、ニコニコ動画で、もっとも有名な「マッチムーブ」動画作成者といえば、通称厳島神社の人」だろう。
 

 
 この動画、作者の地元である広島市の祭りを映したドキュメンタリ映像のはずなのだが、とんでもない人たちが次々と登場して、目が離せない展開になっている。
 
 
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↑おなじみの緑色の髪をした少女が出てきたり
 
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↑爪かみそうな人が、ゆっくりしそうな人形売っていたり
 
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↑こっそり建物にへばりついたクモ男がいたり
 
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↑そして、まさかの使徒襲来!
 
 
 「ちょっと不自然すぎるだろ」と思いきや、その背後でとんでもないキャラが動いていたりするなどの仕掛けが楽しく、何度見ても面白いムービーだ。
 
 このような実写合成映像「マッチムーブ」は、前述した「After Effects」だけでは実現することはできない。
 作者による解説動画があるので、それを参考にしてほしい。
 
 

 
 こちらは「カメラトラッキング」について説明している。
 カメラトラッキングができるソフトとしては、無料である程度の機能が使える「Voodoo Camera Tracker」が有名だ。
http://translation.heteml.jp/wiki/index.php?Voodoo%20Camera%20Tracker%20HP%20%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E8%A8%B3
 
 この「Voodoo Camera Tracker」の出力は、フリーソフトBlender」にも対応している。
Blender.jp
 
 

 
 そして、こちらは「After Effects」による映像効果の解説である。
 これに匹敵するフリーソフトとしては「Jahshaka」というものがある。
Jahshaka 日本語サイト
 
 
 これらのソフトの解説等は、下のWikiを参考に。
初心者向け解説 - マッチムーブ@ wiki - アットウィキ
 
 
 と、この動画やマッチムーブ@Wikiを参考にすれば、実写合成技術の作り方が見えてくるはずだ。
  
  
 さて、この作者は、実写映像に3Dキャラを融合させるだけではなく、3DCG世界を人が動く合成ムービーにも挑戦している。
 
 

 
 NHK大河ドラマの導入部よりも、クオリティ高いんじゃないかと思えるぐらいの見事さである。
 
 
 この作者のような「マッチムーブ」を作成するためには、かなりの労力と費用がかかることだろう。
 しかし、冒頭で紹介した「MMD」キャラが出てくる「マッチムーブ」のような小品も、ニコニコ動画ではひそかな注目を集めつつある。
 
 もし、ストーリー性がある「MMD」を利用した実写合成動画を作成することができれば、多くの再生数を期待することができるはずだ。
 MMDコミュニティでは、「MMD杯」というコンテストがある。
 「厳島神社の人」には及ばないクオリティでも、「マッチムーブ」という話題性があれば、「MMD杯」で興味をひきつけることはできるかもしれない。
 MMDコミュニティにおいては、実写合成映像は、まだまだ珍しいものであるからだ。
 
 
 実写と3DCGが融合した「マッチムーブ」ほど、映像の面白さを表現できる技術はない。
 初音ミクのいる風景」という題材こそ、みずからのセンスを生かすことができる格好の素材ではないだろうか。
 
 見慣れた景色の中に、仮想世界のキャラクタがあらわれる。
 そんな映像が個人レベルで作れることを、ニコニコ技術部員は教えてくれているのだ。
 
 

 
 
【関連リンク】
Studio Sleipnir
 「厳島神社の人」ことzoziさんのブログ。
 映像多めで、実写合成技術に興味ある人には楽しめる内容です。
 
zoziさんの自作動画
 こちらはマイリスト。
 今回紹介した動画のメイキングなどが公開されています。
 
マッチムーブ@wiki
 まだまだ利用者が少ない「マッチムーブ」のWikiサイト。
 逆にいえば、それだけチャンスがあるってことです。
 
 



【追記】
 
 この「厳島神社の人」は、マッチムーブを自作するだけではなく、様々な3D技術を紹介している。
 
 そのひとつが「3Dプリンタ
 
 

 
 TVなどでご存じの人が多いかもしれないが、画像データをもとに3Dフィギュアを出力するのが、この3Dプリンタである。
 
 
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↑こんなカラーで精巧なオリジナルフィギュアができるんです
 
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↑これがウワサの3Dプリンタ
 
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↑少しずつ石膏を積み重ねて造形していくわけです
 
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↑もちろん、カラー印刷にも対応です
 
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↑プリントアウトしたときは、こんな感じですが……
 
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↑ほこりを払って、みがいてやれば、この通り
 
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↑そして、水につけて、乾かせば……
 
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↑世界で一つだけのオリジナルフィギュアが完成!
 
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↑まあ、この動画の見どころは、そのフィギュアに匹敵する3Dアニメにあるかもしれませんが
 
 
 この3Dプリンタによる立体出力サービスを受け付けている会社が「株式会社アイジェット」
株式会社アイジェット 公式サイト
 
 その受付ページでは、気になる価格を公開している。
 
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http://www.ijet.co.jp/miku10.html
  
 もちろん、安い買い物ではないが、新技術「3Dプリンタ」を利用することは、今や誰でも可能になっているのだ。
 
 
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↑なお、この3Dプリンタでは、建物模型などのジオラマセットも出力できます。
 僕にはこっちのほうが興奮するんですが。