初音ミク、金星へ ― 「あかつき」、「はやぶさ」、宇宙のロマン - ニコニコ技術部員たち(7)

 
 
 初音ミクなどのイラストを載せた、金星探査機「あかつき」打ち上げが、5月21日(金)6:58に再設定された。
 
 ニコニコ技術部では「ミクとあなたを金星へ」企画を立ち上げ、一万人以上の署名を集めていることに成功している。
 

http://j.nicotech.jp/akatsuki-miku
 
 「なぜ、わざわざ、初音ミクを持ち出すのか」と、あきれる人も多いだろうが、この「ミク宇宙進出計画」、かなり本格的なプロジェクトなのである
 
 

 
 米国ネバタ州にて、小型ロケットを飛ばして「ネギ振り実験」なんてものを行っていたりしてるのだ。
(なぜ、ネギ振りなのかは、「ニコニコ技術部員たち(2)」を参照のこと)
 
 
 JAXA(宇宙航空研究開発機構)の人たちは、初音ミクなどのキャラクタ―には、きわめて好意的であるらしい。
 「あかつき」メッセージキャンペーンでの「著名人枠」にて、「はちゅねみく」の生みの親「おんたま」氏も、堂々と紹介されている。
JAXA|「あかつき」メッセージキャンペーンに寄せられたメッセージ
 
 
 政治的に、JAXAは、事業仕分けの対象になっている
 その広報施設「JAXAi」は、事業仕分け第2弾で「廃止」と判定された。
事業仕分けで「廃止」とされたJAXA広報施設、来場者急増 :日本経済新聞
 
 宇宙開発は、これまでに何度も「税金のムダづかい」としてバッシングを受けている。
 そんなJAXAからすれば「ミクの手も借りたい」のが現状なのだ。
 
 それにしても、他の宇宙開発先進国家が「軍事利用」「国家掲揚」のためにそれを続けているなか、日本のJAXAは誇らしげに「技術と夢」を掲げて、開発を続けているのだ。
 そんな技術立国日本の象徴であるJAXAを、事業仕分けの対象としてよいものだろうか。
 
 
 さて、ニコニコ技術部では、5月21日(金)に打ち上げ予定の、金星探査機「あかつき」に、初音ミクが搭載された様子を動画で公開している。
 

 
 
 それでは、内容をキャプチャー画像で紹介。
 

↑ミク枠として三枚のプレートが搭載されることになる。
 そこには一万人以上のメッセージと三枚のイラストが描かれている
 

↑ご存じ、種子島宇宙センター
 

↑なんと、「あかつき」を、こんな近くで撮影してます
 

↑諸外国なら、こんなこと絶対許されないことでしょう
 ああ、日本人で良かった!
 
ITmediaでの記事はこちら。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1004/08/news044.html
 
 この動画作成者は「超電磁P」と呼ばれているニコニコ技術部員、森岡澄夫さん。
 本業では、NECで、プレイステーション・ポータブル」(PSP)や「プレイステーション 3」(PS3)のLSIを手掛けている
 そんなスゴい人が、うっかり、みっくみくにされてしまい、少年時代からの夢である「宇宙へのロマン」を、ニコニコ技術部員として叶えようとしているのだ。
 
 
 残念ながら、国民の多くは宇宙開発に無関心であるようだ。
 今の現実的な子供たちの間では、宇宙に思いを寄せるよりも、お金持ちになるために努力するほうがマシだと思っているのかもしれない。
 
 しかし、はるか遠くにある宇宙だからこそ、人々はそのロマンに駆り立てられるのだ。
 遠くのものを追いかけたからこそ、人々は多くの発見をすることができたのだ。
 
 人類の歴史とともに占星術は始まった。
 そして、今も、JAXAの技術者たちは、暗闇にのまれそうな宇宙を見据えながら、何度もトラブルを乗り越え、その成果を我々に残してくれている。
 
 ニコニコ動画では、そんな宇宙関係の良質な動画が数多く公開されている。
 
 その一つが、「あかつき」打ち上げ予定だった18日に合わせるように、実物大の小惑星探査機「はやぶさ」を作ってしまった「yuyaP」の動画。
 

 
 
 では、動画の内容をキャプチャーしてご紹介。
 

↑かなり不純な目的もあったりする制作動機
 でも、一番の目的は、最後のミッションを果たすべく、地球に近づいている「はやぶさ」の応援です
 

↑年末年始もどこ吹く風で制作中
 こういう姿、僕にはたまらなくカッコよく映るんですが
 

↑細部まで忠実に再現しています
 

↑旋盤も使ってます。本業は板金屋さんのようです
 

ソーラーパネル塗装中。とても趣味とは思えないレベルになりました
 

↑あまりの大きさに、工場内では組み立てられないことに
 

↑そして、半年以上の時間を費やして、ついに完成!
 そのすごさは、ぜひとも動画(http://www.nicovideo.jp/watch/sm10757175)でご覧あれ
 

↑もちろん、探査ロボット「ミネルバ」も搭載!
 
 
 このような実物大モデルを作ってしまう人が出てしまうほど、小惑星探査機「はやぶさ」には、数多くのドラマがある。
 
 他国からすれば笑っちゃうぐらいの低予算での開発。
 そして、打ち上げ後に何度も襲った致命的トラブル。
 システム障害、故障、燃料漏れ、そして、二ヶ月近くの通信途絶……。
 
 それらのトラブルを克服し、いま、「はやぶさ」は地球の帰還を目指している。
 その予定日は2010年6月13日
 しかし、「はやぶさ」本体が、地球に降り立つことはない。
 
 はやぶさ」は、その探査の成果である「再突入カプセル」を投下のち、大気圏で焼失する予定である
(姿勢制御系エラーによるカプセル投下精度低下を補うため、離脱不可能な距離でカプセルを切り離さざるをえなくなったため)
 
 そんな「はやぶさ」の物語を、ドラマティックに知ることができる動画がこちら。
 

 
 「はやぶさ」をミクに擬人化させたPVである。
英語圏では「船」を「she」として、女性化する表現が多い。擬人化は人間文化の伝統なのである)
 
 

↑満身創痍で地球を目指す「はやぶさ」ことミク。
 大事に抱えているのは「再突入カプセル」であるタコルカ
 

↑「はやぶさ」には、数多くの致命的トラブルが待ちかまえていた
 リアクションホイールの故障、燃料漏れによる喪失、姿勢制御機能のエラー……
 

↑しかし、一ヶ月以上に及ぶ通信途絶を乗りこえて、「はやぶさ」は復活する
 残存したわずかなキセノンガスと、一基だけ残ったアクションホイールだけで、姿勢制御に成功
 

↑そして、2010年1月、「はやぶさ」は地球帰還軌道に乗る
 
 
 はやぶさ」の小惑星への二度の着陸および離陸は、人類初の快挙である
 それは、開発資金に恵まれた、米国やロシアでも成し遂げられなかったものなのだ。
 
 

↑自律型探索機である「はやぶさ」だが、すでに、多くのメモリ(記憶)は失われている
 彼女に残された機能(自我)は、地球に「再突入カプセル」を届ける任務を果たすことだけ
 混濁するCPU(意識)の中、彼女は地球を目指す
 

↑5月21日に打ち上げ予定の「あかつき」とのランデブー
 しかし、それに応じる体力は、もはや彼女には残されていない。
 

↑そして、7年ぶりの故郷である地球が彼女の目前に広がる
 だが、彼女には、その大地に降りることはできないのだ。
 

↑2010年6月13日、最後の力をふりしぼって、「再突入カプセル」(タコルカ)を投下したあと
 
 

↑彼女は地球の重力に引きこまれ、大気圏で燃えつきる
 
 
 現在の科学力で、「はやぶさ」本体を回収する手段は、ない。
 
 
 この「再突入カプセル」には、二度におよぶ採取から、小惑星イトカワの岩石が含まれていると予想されている。
 しかし、「はやぶさ」が命をかけて届けたその中に、「何もない」可能性を否定できないのが現状である。
 
 もし、小惑星イトカワの砂粒を一粒でも持って帰ることができたならば、それは人類初の快挙であり、科学技術の発展に大きく寄与することができるだろう。
 
 
 この5月21日に、金星探査機「あかつき」の打ち上げが予定されている
 
 それに至るまでの、日本の宇宙開発には、数多くの悲劇とロマンがつまっている。
 しかし、広報施設「JAXAi」が事業仕分けにより廃止に追いこまれるなど、その風当たりは強い。
 
 宇宙開発は、世界中の人にもわかる「科学技術の証明」である。
 先人たちの努力をムダにしないためにも、日本がいつまでも「夢がある国家」であるためにも、世界から敬意を抱かれるためにも、宇宙開発の資金をこれ以上削減してはならないと思う。
 
 だから、もし夢を持つ人ならば、まずは、ニコニコ動画でこれらの動画をご覧になってほしい。
 フィクションでは絶対に描くことのできないドラマを、そこから見つけることができるはずだ
 
 
【関連エントリ】
【ニコ動生放送】あかつき(ミク搭載)、イカロス君を載せたH2Aロケット、打ち上げ成功!
 
 

 
 
【関連リンク】
 
「はちゅね実体化とか宇宙とかw」 den さんの公開マイリスト - ニコニコ動画
 超電磁Pのマイリスト。「はちゅね初!宇宙へ」はドキュメント番組として楽しめる作りになっています。
 
JAXA|宇宙航空研究開発機構
 予算削られてばかりで大変なJAXA(宇宙航空研究開発機構)の公式サイト。
 カタそうに見えますが、初心者でも楽しめるコーナーが多いです。
 
404 File Not Found | 宇宙科学研究所
 公式では男の子である「はやぶさ」君のサイト。
 小学生向けに書かれているはずだが、どうしても専門用語が出てきてしまい、結局、チンプンカンプンな内容である。
 「あかつき」は、ぜひとも女の子設定でお願いしたい。
(いや、女の子設定にしたほうが、文章がやわらかくなると思うんですよ、何となく)
 



【追記】
 
 
 ニコニコ大百科での宇宙関連記事の項目は、尋常とは思えない確かな文章力で、思い入れたっぷりに、そのドラマが紹介されている。
(宇宙関連のニコニコ動画の質の高さが反映されていると思う)
 
探査機「はやぶさ」とは (タンサキハヤブサとは) [単語記事] - ニコニコ大百科
 
 火星探査機「のぞみ」の無念を晴らすべく作られた「はやぶさ」には、「のぞみ」に劣らぬほどの、数多くのドラマが待ち構えていた。
 それらを知りたい方は、ぜひとも記事の関連動画を参考にしていただきたい。
 
 そんな「はやぶさ」とともに、飛び立ったのが、小型探索ロボット「ミネルバ」である。
 
小惑星探査ロボット「ミネルバ」とは (ミネルバとは) [単語記事] - ニコニコ大百科
 
 わずか3000万円という予算でやりくりして制作された「ミネルバ」は、しかし、その任務を果たすことができなかった。
 大百科記事の最後のくだりは、とても涙なしに見ることはできない。
 

民生部品を元に作られ過酷な旅路を二年間、時には太陽風に焼かれながらも撮影された唯一の写真は、任務を全うできなかった悔しさ、寂しさを感じさせるとともに、自分を頑丈に作ってくれた親と、ここまで無事に送り届けてくれたはやぶさへの「この写真だけは」という文字通り精一杯の感謝の気持ちであるかのようにも思えてくる。
 
小惑星探査ロボット「ミネルバ」とは (ミネルバとは) [単語記事] - ニコニコ大百科
 
 そのミネルバ唯一の写真がこちら。
 

 
 わずか、80×160ピクセルのその画像は、しかし、確かに「はやぶさ」のソーラーパネルを映し出していた。
 
 意味を知ったあとでは、とてつもなく深い感情に包まされる画像である。