プロのミュージシャンも歌っている、ゲームBGMに詞をつけた「ファミうた」
http://www.youtube.com/watch?v=QXEsu6dzJ6I
5月5日、この「イーアルカンフーでラップ」で有名なヒャダイン氏が、自身のブログにて、プロのミュージシャン「前山田 健一」であることを告白して話題になった。
⇒ヒャダイン - ニコニコ大百科
【ゲーム元ネタ】イー・アル・カンフー - Wikipedia
手がけた曲で、オリコンチャート1位を三度もとっている彼が、どうして、ニコニコ動画に、その活躍の場を求めたのか。
それは、みずからの好きだった、レトロゲームのBGMを作詞・編曲して歌うという欲求を抑えきれなかったせいだろう。
プロの音楽業界にいるからこそ、そのアイディアが「商品化」される可能性はないことを思い知り、「ヒャダイン」という名で、ニコニコ動画に作品発表の場を求めたのだ。
ニコニコ動画で音楽作品を投稿するユーザはアマチュアばかりではない。
しかし、プロという肩書きが再生数に直結しないことが、ニコニコ動画の面白いところだ。
ヒャダイン氏が人気を博したのは、そのクオリティの高さだけではなく、多くの人の共感を呼ぶアイディアが優れていたからである。
今回は、そんなヒャダイン氏が得意としていたファミコンなどのレトロゲームBGMに詞をつけた「ファミうた」を紹介してみよう。
http://www.youtube.com/watch?v=4xQ6_MDC6hA
ニコニコ動画の数ある歌い手のなかで、もっとも才能があると僕が思うのが、このタイツォン氏。
⇒タイツォン - ニコニコ大百科
初めて、彼のロイツマラップを聴いたときに、僕は強い衝撃を受けたものだが、その才能を(プロからすれば呆れるばかりに)ムダづかいしている歌い手である。
なお、この歌詞をつけたのは、タイツォン氏ではなく、Martin Hagwallなる人物である。
「スーパーマリオRPG」のBGMに歌詞をつけた、この「Rawest Forest」は、日本でも評判になり、高い人気を得ている。
海外の「ファミうた」最高傑作といっても過言ではない優れた楽曲だろう。
【ゲーム元ネタ】スーパーマリオRPG - Wikipedia
さて、全編英語詞できわめて難度の高いこの曲を見事に歌いあげたタイツォン・バージョンを聴いて、ニコニコ動画ユーザは「タイツォンは英語もできる! 天才!」と賛美した。
しかし、Youtubeにアップされたそれには、外国人からの痛烈な批判コメントが書きこまれる。
「何うたってるのかサッパリわからん。英語じゃないだろ、これ」
実は、彼は英語を歌おうと努力していなかったのだ。
耳で聴こえたその音を真似ているだけなのである。
たいていの人が英語詞を歌うとき、まず、英文を読むことから始めるだろう。
しかし、彼は、英単語を目で読もうとせず、耳から聞こえるそれをそのままを歌っているだけなのだ。
ネイティブ・スピーカーには不完全と思われたとはいえ、耳コピだけでこのような難度の高い曲を歌えることが、彼の才能の素晴らしさであろう。
その滑舌の良さと耳の鋭さは、その他MAD動画で生かされている。
プロからすれば「もっと自分のブランドを大事にしろ」と思われような作品が多いけれど。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm5613282
こちらは、まやろーやる女史による「タクティクス・オウガ」の「ファミうた」
⇒まやろーやる - ニコニコ大百科
【ゲーム元ネタ】タクティクスオウガ - Wikipedia
その形容しがたい歌声の幅の広がりの素晴らしさもさることながら、なんとあきれたことに、「ラテン語」による歌詞をつけて歌っている。
どう考えても、タダ者ではない人なのだが、その素性は未だ明かされていない。
と、ニコニコ動画の歌い手には、才能あふれる人が少なくないのだが、かといって、歌声に自信がない人にも「ファミうた」を公開することができるのだ。
そんなときのための「初音ミク」である。
「ファミうた」では、ボーカロイドによる作品も、数多く投稿されているのだ。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1810054
個人的には、これが「ファミうた」の最高傑作であると思う。
ドンフライPの「ミクランカー」である。
⇒ドンフライP - ニコニコ大百科
【ゲーム元ネタ】スペランカー - Wikipedia
ゲーム史上最弱の主人公が活躍(?)する「スペランカー」の、BGMだけではなくゲーム性をも歌詞にしたクオリティの高い作品だ。
プレイ内容も、それに同期して行われている。
そして、効果音もすべて、初音ミクである。
「スペランカー」の主人公の弱さが何なのかを知りたければ、この「ミクランカー」を見ればわかるだろう。
ゲームを紹介する動画といえば、実況動画やTAS動画があるが、ボリュームといいオチといい、この「ミクランカー」のわかりやすさに勝るものはないのではないかと思われる。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm990834
何度聴いても笑ってしまうのが、このワンカップPの「忍者ハットリくん」
⇒ワンカップP - ニコニコ大百科
【ゲーム元ネタ】忍者ハットリくん - Wikipedia
二十代後半以上の人でないと、まったく楽しめないネタにあふれた歌詞だが、そんなことが許されるのも「ファミうた」ならではの魅力だ。
また、BGMの旋律をそのまま歌うのではなく、アレンジを加えた「ファミうた」だってある。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1912342
そんな「ファミうた」アレンジの中で優れている作品が、よよPの「恋するロードランナー」
⇒よよP - ニコニコ大百科
【ゲーム元ネタ】ロードランナー - Wikipedia
まさか、あの単調なロードランナーのBGMから、これほどの曲を生み出すとは、高橋名人も驚きだろう。
ひょうきんな歌詞とあいまって、ひそかな人気を得ている「ファミうた」である。
そして、そんな「恋するロードランナー」を大胆にもカバーした人がいる。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm6980772
それが、この若干Pのカバー。
ハニーボイスと思われるかもしれないが、実は歌っているのは男の人である。
⇒若干P - ニコニコ大百科
この若干Pがニコニコ動画で公開している作品は、ボーカロイドに歌わせた曲がほとんどだが、DTM中心のミク曲のなかで、心地よいロックサウンドを聴かせてくれる人だ。
それぞれの曲につけられるアニメも自作であり、人気が高い。
この「恋するロードランナー」は、カバーだからこそ、ニコニコ動画にみずから歌った曲を投稿したのだろう。
女性と間違うような中性的ボーカルと、センスのあるアニメのストーリーが楽しくて、ついつい何度も見てしまう、最近の僕のお気に入り作品である。
(しかし、電子楽器「ELECTRIBE」を使いこなす「よよP」の楽曲を、生楽器をいかしたロックを聴かせてくれる「若干P」がカバーするとは、ニコニコ動画ならではのコラボレーションであろう)
と、このように、ヒャダイン氏のような、オリコンチャートで一位をとるほどのミュージシャンをはじめ、数ある才能ある人が「ファミうた」を公開している。
そして、それぞれの歌詞には、彼らのゲームBGMに強い思い入れを感じることができる。
ぜひ、皆さんも、かつてプレイしたゲームの「ファミうた」を探してみてはどうだろうか?
そして、それを聴いていると、自分がそのゲームをしていたときの感覚を思い出すはずだ。
もしかしたら、あなたもデタラメな歌詞を口ずさみながら、それをプレイしていたかもしれない。
もし、既存の「ファミうた」の歌詞に満足できなければ、自分の詞をつけて、歌うなり、ボーカロイドに歌わせるなりして、ニコニコ動画に投稿すればいいと思う。
それを受け入れる自由度の高さこそが、ニコニコ動画の魅力なのだから。
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