「YOU ARE MY SUNSHINE」は元祖ヤンデレ曲?

 

Elizabeth Mitchell - YOU ARE MY SUNSHINE
http://www.youtube.com/watch?v=Tv5iYj4TIbg
 
 「YOU ARE MY SUNSHINE/君は僕の太陽」といえば、英語や音楽の授業で習った人が多いであろう、ポピュラーなラブソングである。
 よく知られている歌詞はこの通り。
 

You are my sunshine
My only sunshine
You make me happy when skies are gray
You'll never know, dear, how much I love you
Please don't take my sunshine away
 
(日本語訳)
君は僕の輝く太陽
かけがえのない僕の太陽
空が曇っているときでも、僕を幸せにしてくれる
僕が君のことをどれだけ好きなのか、君は知らないんだろうね
僕の太陽よ、行かないで

 
 さて、上記で紹介した動画は、沈んだ調子で歌われているし、画像はヤンデレ気味であり、イメージと違うと感じた人が多いかもしれない。
 しかし、この曲のフルバージョンを聴けばわかると思うが、「You are my sunshine」という歌は、ハッピーなラブソングではないのだ。
 
 では、フルバージョンの歌詞を紹介してみよう。
 
 

Jimmy Wakely & the Sunshine Girls - YOU ARE MY SUNSHINE
http://www.youtube.com/watch?v=jDNDELFF1ok
 

You Are My Sunshine
(Jimmie Davis / Charles Mitchell)
 
The other night, dear
As I lay sleepin'
I dreamed I held you in my arms
When I awake, dear
I was mistaken
and I hung my head down and cried
 
You are my sunshine
My only sunshine
You make me happy when skies are gray
You'll never know, dear, how much I love you
Please don't take my sunshine away
 
You told me once, dear
You really loved me
And no one else could come between
But now you've left me and love another
You have shattered all of my dream
 
You are my sunshine
My only sunshine
You make me happy when skies are gray
You'll never know, dear, how much I love you
Please don't take my sunshine away
 
Please don't take my sunshine away
 
(日本語訳)
 
ある夜、あたしは夢を見たの
あなたをこの腕で抱いている夢
目が覚めて、それがウソだとわかって
あたしは頭をうなだれて泣いちゃったんだ
 
あなたはあたしの太陽
あたしのたった一つの太陽
どんなに曇っているときも、幸せにしてくれる
あなたにはわからないの?
どんなにあたしがあなたのことを愛しているのか
あたしの太陽よ、行かないで
 
いつかあなたは言ったよね
あたしを本気で愛しているって
誰にも二人の仲を引き裂くことはできないって
でも、あなたはあたしのもとを去り、別の人を愛した
あなたはあたしの全ての未来を粉々にしちゃったんだ
 
あなたはあたしの太陽
あたしのたった一つの太陽
どんなに曇っているときも、幸せにしてくれる
あなたにはわからないの?
どんなにあたしがあなたのことを愛しているのか
あたしの太陽よ、行かないで
 
どうか、あたしの太陽よ、行かないで
 

 
 あえて、女→男に訳してみると、相当ヤバい歌詞である。
 このあとに殺人事件が起こってもおかしくない。
 
 「被疑者は『彼は私の太陽だった』などと、意味不明な供述をしており……」という新聞記事が思い浮かぶ内容ではなかろうか。
 
 この曲のサビの部分だけ知っている人は、結婚式で歌ったらもりあがる曲かも、と思われるかもしれないが、とてもそんな歌ではない。
 失恋の恨み節に満ちた曲なのだ。
 元祖ヤンデレ曲に認定してもいいだろう。
 
 
 僕自身、中学時代にこの曲を聴いて「ポップなラブソング」と思ってたので、この事実を知ったときは、かなりのショックを受けた。
 
 しかし、その事実を知ってもなお、「You are my sunshineは沈鬱に歌わなければならない」と決めつける人たちには反対である。
 サビだけならば、この曲は素敵な恋の歌であり続けることができるのだ。
(カッコつけて、フルバージョンを歌ったら悲惨なことになるけれど)
 
 そして、世の中にある「You are my sunshine」という別のメロディーを持った曲は、失恋の恨み節にすぎなかったオリジナルに対抗すべく、自分なりの「君は僕の太陽」を歌いたくて作られた曲ではないかと考えるようになった。
 
 例えば、平井堅もカバーした、スティービー・ワンダー「You are my sunshine of my life」
 

Stevie Wonder - You Are The Sunshine Of My Life (1972)
http://www.youtube.com/watch?v=5YefKgWdmFk
 
 他の彼の名バラードに比べると、穏やかな曲調だが、まさしく日差しのような確かな温もりがある、僕の大好きな曲だ。
 世界の終わりのときに聴いていたい曲ベスト10に入るほどの佳曲だと思う。
 
 なお、この曲とともに、アルバム「トーキング・ブック」(1972)からシングルカットされたのが、「Superstition/迷信」
 

Stevie Wonder - Superstition (1972)
http://www.youtube.com/watch?v=wDZFf0pm0SE
 
 迷信を信じたがる黒人文化を批判するメッセージ色が強い曲だが、それよりも、スティービーが何を弾いているのか疑問を感じる人が多いだろう。
 これが、クラビネットという楽器である。くわしくは、Wikipediaを参照にしてほしいが、このクラビネットを基調としたサウンドは、スティービーにしかないパワフルさがあると思う。
 
 
 と、洋楽ばかりを紹介していると、「洋楽厨、乙!」とバカにされるので、日本人ミュージシャンも紹介してみよう。
 
 宮沢和史率いるTHE BOOM「You're my sunshine」
 

THE BOOM - YOU'RE MY SUNSHINE (Live 1997)
http://www.youtube.com/watch?v=C64-zRyR3D8
 
 この「You're my sunshine」は、島唄がヒットしていた1993年に出されたアルバム「FACELESS MAN」に収録された曲。
 
 「島唄」を聴いて、誰もが宮沢和史のことを沖縄人だと思い込んでいたようだが、そのとき、彼の音楽性は沖縄よりもさらに南下し、ブラジル音楽にまで達してしまった。
 当時、「島唄」でファンになった人は、こんな曲を聴いて仰天したことだろう。
 今でも、たいていの人が「THE BOOM」というバンドや、宮沢和史というミュージシャンのことをよくわからないと思っているはずだ。
 
 さて、この曲で英語のシャウトを聴かせているように、宮沢和史は海外生活が長い。
 おそらく、そこで、現地人に「You are my sunshineは明るい曲じゃないんだよ」と教えられて、腹を立ててこの曲を作ったんじゃないかと想像している。
 そのせいで、世界でもっともダンサンブルな「You are my sunshine」に仕上がったのではないかと僕は思うのだ。
 
 
 そんな沖縄だったり、ブラジルだったりする宮沢和史だが「日本のうた」とも言うべき佳曲も作っている。
 
 

THE BOOM - からたち野道 (1990)
http://www.youtube.com/watch?v=sltXS4kWNtE
 
 井上陽水の「少年時代」に匹敵する名曲だと思うが、ファン以外にはあまり知られていない佳曲である。
 
 まあ、ファンの間で人気の高い「星のラブレター」「島唄」「風になりたい」や、この「からたち野道」が、アルバム発売後にシングルカットされたという事実からして、宮沢和史という人は、本気で「売れる」ことを目指していないんだろうな、と思う。
 シングルよりもアルバム収録曲の方が良いなんてことは、THE BOOMというバンドでは日常茶飯事なのだ。
 
 
 と、話は大きくそれたが、そのほかにも、安室奈美恵EXLIEといったミュージシャンが「You are my sunshine」という曲を歌っているように、明るいメロディーのサビを持ちながら、実は失恋歌であるオリジナルに対抗すべく、日本や世界で様々な「You are my sunshine」が生まれているのだと、僕は受け止めている。
 それらを聞き比べてみるのも楽しいかもしれない。
 
 そして、僕はそれらを聴いて、君は僕の太陽なんだ、と言えるぐらいの確かな愛情を持ちたいものだ、と、いつもぼやいているわけなんだけど。