医療費・教育費ゼロのキューバの実態

 
 日本のいたるところの人々が悲鳴をあげている。家計が追いつかない、と。
 そんな人たちが夢見るのは「医療費・教育費ゼロ」という社会らしい。
 
 それでは、それを長年実践しているキューバを例にとり、その実態を見てみよう。
 
 まず、当たり前だが、医療費がゼロとなると、病院を選ぶ自由はなくなる。保険証には、行くべき病院の名前が記されるようになる。いくら、医者の評判が悪くても、タダなんだから、その病院に行かなければならない
 
 そんな病院でもっとも優先されるべきは、サービス精神ではなく、一人でも多くの命を救うことである。老人の孤独を癒す余裕は病院になくなる
 
 救急車のたらい回しをメディアが報道することはなくなるだろう。国民を等しく医療する病院に責任を課すことが許されなくなるからである。
 
 
 もちろん、お金を出せば、良い病院には行けるキューバでは外国人用の病院がある。そこでは最新の設備が整えられていて、料金に応じたサービスを受けることができる。
 
 もし、医療費がタダとなれば、タダでないところのブランドが上がる。大多数の者が無料の病院を利用し、少数の裕福な者が有料の病院に行くという格差社会ができあがるわけだ。
 
 キューバ社会主義国であり、表現の自由はないが、WHOが太鼓判を押す医療先進国家である。医者の数は世界一、乳幼児死亡率は世界トップクラス(日本なみ)、平均寿命は米国と同水準である(日本以下)
 
 それを可能にしているのが、教育費が無料であることだ。貧乏でも学力さえあれば、医師になることができるのである。
 
 そして、その医師の少なくない数が、海外に派遣される。キューバは医者を積極的に海外派遣している。キューバといえば、カリブ海に浮かぶ、孤高の社会主義国家と思われるかもしれないが、南アメリカやアフリカへの人材交流には積極的である。
(だから、米国の対キューバ経済制裁が、毎年のように圧倒的多数で国連で非難されているのである)
 
 そんな背景があるから、無料とはいえ、世界の高水準の医療を、キューバ国民は受けることができる。ただし、ないものねだりは許されない。あの医者は信用できないと思ったところで、お金を払わなければ別の病院に行くことはできない。
 
 医療費無料とは、そういう社会のことだ。
 
 
 今年はキューバ革命50周年記念ということで、ゲバラの娘が日本に来た。ゲバラの娘は、そんなキューバの医療先進国ぶりをアピールし、キューバが平等主義を貫いていると宣伝した。すると、日本人からこんな反応が戻ってきた。
キューバがうらやましい。日本では、教育費や医療費は無料ではなく、家計が苦しい」
 
 ゲバラの娘はホトホトあきれたという。キューバでは、自家用車を持っている人はごくわずかである。携帯電話も個人使用が条件づきで認められたばかり。デジタルカメラなんて、日本でいえば、車一台と同じぐらいの価値がある。平等原理主義という理念のために、キューバは国民が等しく貧しい国なのである。
 
 着飾った日本人たちが「キューバがうらやましい」というのを聞いて、ゲバラの娘はどう感じたのだろう。
 
 
 今年の夏に行われたコミックマーケット二日目は、中高生が多く参加した。彼らのファッションを見るかぎり「日本が貧しい」とは、とても思えない。それは、決して感性だけの問題ではないと思う。まだまだ、日本人には見栄を張り、他人に見下されない格好ができる余裕があるのだ。
 
 それができない状況になってこそ、医療費無料の問題は本格化すべきだと思うのが、キューバについて、いろいろ調べた僕の見解である。
 
【リンク】
キューバの医療制度関係 - REV's blog
 
 キューバの医療制度についての記事をまとめて下さっています。
 興味がある方はどうぞ。
 
 
【リンクその2】
ワラノート - FC2 BLOG パスワード認証 (他サイト)
パー速という掲示板で連載している作品です。
キューバ革命に興味がある人はどうぞ。
(未完結ですが。あと、書いてるのは僕ですよ)