マイケル・ジャクソンが出演したゲームPart2「スペースチャンネル5」
また、マイケル・ジャクソンのことを書く。
僕は生前の彼に偏見を抱き続けていた。自分が積極的に知るアーティストではないと思っていた。
しかし、訃報をきっかけに知ったマイケル・ジャクソンの作品は、僕を強く引きつけた。
一週間、僕は彼の曲を熱心に聴き続けた。
ファンの人にとって、今さらだと思えるようなことを、また、僕は書く。
先日、「マイケル・ジャクソンが企画・出演したTVゲーム『Moonwalker』」を紹介したが、ほかにも、マイケルが出演しているゲームがある。制作会社は、前回と同じ、マイケルが生涯愛した「セガ」。
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「スペースチャンネル5」は、上下左右キーと2つのボタンをタイミングよく押すことで、敵を倒し人類を救う、という、筋書きだけならば荒唐無稽な音楽ゲーム。
ヒロイン「うらら」のキュートさと、コミカルな雰囲気の良さが楽しく、「音ゲー」の代表作として知られている。
その作品の終盤に、何の脈絡もなく、彼はあらわれるのだ。
捕われし「スペースマイケル」なる人物として。
これまでと同じように、うららたちはダンスを成功させることで、モロ星人に操られたスペースマイケルを救出する。
しかし、このステージ、マイケルの「ポォッ! ポォッ!」という謎のシャウトが飛び交い、難易度が異様に高くなっているのだ。
そして、踊らされているはずのスペースマイケルの、身体のキレが抜群に良い。
踊らされているのは、悪役のモロ星人のほうではないのか、といぶかってしまうぐらいに。
このステージ、マイケル・ジャクソンの楽曲が使われているわけではないが、その振り付けは、マイケルのショート・フィルムを意識したものになっていて、ファンの人に楽しめる内容になっている。
こうして、無事、救出すると、マイケルから「Thank you Urara」と声をかけてくれる。
「ポォッ!」だけならば、かつて出演したゲーム「Moonwalker」のデータを流用しただけではないか、と思うユーザがいるだろうが、ちゃんとこの作品用に声が用意されているのである。
それ以降もスペースマイケルはチョイ役で登場する。
画面右側に映っているのがスペースマイケル。
マイケルをバックダンサーにするほど、うららちゃんはすごいのである。
そして、エンディングには、声優のクレジットの中に、マイケル・ジャクソンの名前が!
どうやら、この出演は、マイケル本人の強い要望で実現したらしい。
セガの偉い人(内海州史)がマイケルに会ったとき、開発中のゲームをプレイしてもらい、感想を求めた。すると、マイケルは「スペースチャンネル5」のゲーム性をいたく気に入り、自分の出演を直訴したというのだ。
完成間近のゲームに、自分を登場してほしい、と無茶なことを言うマイケルもマイケルだが、それを受け入れてゲームに出演させたセガもセガである。
ただし、マイケルは自身が終盤だけにしか登場しないことに、ひどく不満だったようで、続編の「パート2」では、積極的に出演する決意を固めたようである。
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パート2での「スペースマイケル」は、なんと「局長」として出演する。うらら達の上司という重要なポジションを与えられたのだ。
ヒロインのうららに、危機を告げるスペースマイケル局長の図。
この頃には「尋常性白斑」のせいで、すっかり肌の色素が抜け落ちていたのだな、とCGを見ながら感慨にふけってしまう。
なお、このスペースマイケル局長、常にポーズを取りながらしゃべるので、かなりウザい。
でも、マイケルだから仕方ないのである。スーパースターは、どんなときでもカッコよくふるまわなければならないのだ。
スペースマイケル局長は、当然のことながら、英語しかしゃべらない。
だから、うらら達と会話するときは「日本語」→「英語」→「日本語」という、かなり不自然なキャッチボールが交わされる。
しかし、せっかくのマイケルの名演に、別の人をあてるなんて、制作スタッフは想像すらしなかっただろう。
こういうところが、なんだかセガっぽいと思う。
今回もスペースマイケル局長は悪役に操られてしまう。
もちろん、そのダンスのキレは「むしろ、自分のほうから踊っていないか」という疑問を抱かざるをえない出来になっているのだが。
うららの活躍で救出されたスペースマイケル局長は、それからも、仲間として活躍するようになる。
こんなバンドを結成したり。
最後の決戦にも、ともに向かったり。
このマイケル局長、ことあるごとに、年季の入った「ポォッ!」を連発し、うららちゃんとともに戦う喜びを爆発させている。
もしかすると、パート2への出演のきっかけは、うららちゃんのキュートさにあったのかもしれない。
ゲームをプレイしながら、「うららちゃん萌え〜」とニヤニヤしているMJを想像するのは楽しいことである。
エンディングのスタッフクレジットでも、声優の最後に堂々とMJは紹介されている。
このように「スペースチャンネル5」は、かのマイケル・ジャクソンが出演している、という話題性を含めることに成功した。
正直いって、マイケル・ジャクソンという世界的名声(とゴシップによる悪評)を持つ人物をゲームに出演させるのは、とても難しかったと思う。
「スペースチャンネル5」は軽いノリが魅力のコメディー作品である。そのなかに、良い意味でも悪い意味でも世界トップクラスの存在感を放つマイケル・ジャクソンを出すということは、ともすれば、世界観が崩壊してしまう危険性があるのだ。
しかし、制作スタッフは、マイケルの偉大さをわかっていた。
エンターテイメントとしての音楽の可能性を、マイケル・ジャクソンは歌とダンスによって、大きく広げたのだ。
マイケルがいなければ、音楽PVの歴史が変わっていた、という仮定を考えてもどうしようもないが、マイケルがそれに与えた影響ははかりしれない。
音楽と映像が融合したときの興奮と心地よさを、マイケルは教えてくれた。
「スペースチャンネル5」の楽しさは、マイケルのショート・フィルムの楽しさに通ずるものがある。
だからこそ、マイケルは「自分を出演させてほしい」と訴えたと思うし、それにセガにこたえたのだと思う。
2000年以降のマイケルは、バーレーンの王族のもとで生活するようになり、イスラム文化に傾斜していったようだが、もしかすると、日本のヲタク文化を心の支えにした可能性もあったのかもしれないと想像する。
幼少からステージに立ち、あらゆる富と名声を手に入れた彼にとって、二次元の世界はなかなか魅惑的だったと思うのだ。
「ハルヒとらき☆すたのダンスはとても興味深い」というマイケルの言葉が聞ける可能性もあったかもしれないのだ。
失われた少年時代を取り戻すべく、アニメの世界に没頭するマイケルを誰が否定できようか?
しかし、日本人はマイケルを受け入れなかった。多くの人が、マイケルの肌の色素がなくなった理由を「白人になりたくて手術したため」と誤解し続けていた。
日本人には「白人コンプ」という感情がある一方で、黒人には親近感を抱いている。あるジャズミュージシャンは「米国では黒人と差別されるが、日本に来ると王様扱いされる」と語っていた。
黒人のマイケルをカッコいいと思っていた人は、白くなるマイケルを「裏切り行為」と思ったのだろう。病魔におかされていることを知ることなく。
死後、その偉大さを改めて知ったマイケルとともに、僕はそんな彼をゲームに出演させた「セガ」の偉大さも知った。
セガマニアといえば、クラスに一人はいるが、たいてい仲間外れにされたものだ。
僕には、なぜ、彼がセガに固執するのか、さっぱりわからなかった。
だが、「スペースチャンネル5」のプレイ動画などを見ると、「セガ」のファンになった人たちの理由がわかる。
なにしろ、あのマイケル・ジャクソンをゲーム中にバックダンサーとして踊らせるぐらいなのだ。
そんなすごい会社はセガしかないじゃないか。
この「スペースチャンネル5」のノリの良さは、プレイ動画でも十分に味わえるので、興味ある方は、一度はご覧になることをオススメする。
そうすれば、この作品に出演させてほしいとセガに申し入れたマイケル・ジャクソンの思いがわかるはずだ。
【関連動画】
⇒【DC】スペースチャンネル5 銀河最大の悪を暴け!の巻(最終面) - ニコニコ動画
3分頃から、スペースマイケルが登場する。
⇒スペースチャンネル5パート2 (2周目) リポート03 - ニコニコ動画
パート2では、この動画の7分以降から出ずっぱりである。
自重しない「ポォッ!」や、マイケルの熱演っぷりが楽しめる。
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