アナザー軽音部よ、もう一度 − 蛸壷屋C78新刊も「けいおん」ネタだ! 

 
 
 あの、宅配屋りっちゃんに、また会える!
 
 
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↑蛸壷屋同人誌「万引きJK生 けいおん部」より
 
 
 このブログでたびたび紹介している同人サークル「蛸壷屋」の公式サイトにて、夏コミ【C78】(8月13日〜15日)で頒布する新刊が、三たび「けいおん」本であることが公表された。
 
 
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 蛸壷屋の「けいおん本」では、まったりとした原作とは異なり、青春を取り戻そうとする女性たちの焦燥に満ちたドラマが描かれていた。
 その「アナザー軽音部」と称すべき蛸壷屋同人誌には、他サークルの二次創作とは異なる魅力があり、少なくないファンを獲得していた。
蛸壷屋C76「けいおん!」新刊、卒業後の桜高軽音部員の物語 - esu-kei_text
 
 
 なぜ、女子高生たちによる日常を描いた「けいおん」という作品で、シリアスな二次創作を描かなければならないのか。そのことに反感を抱く原作ファンもいる。
 しかし、「けいおん」というアニメに、不自然さがあることは、どの視聴者も認めるはずだ。
 
 彼女たちは、それほど熱心に練習している様子が描写されていないのに関わらず、アニメで放映されるその演奏力は、女子高生とは思えない完成度の高いものである。
 
 

『けいおん!!』劇中歌「ぴゅあぴゅあはーと」 ー Youtube
 
 これは、劇中歌をCDとして販売する上で、避けられない演出であっただろう。
 「女子高生らしさ」を求めた不完全な演奏では、その曲の良さを最大限に伝えることができない。
 リアリティを追求すれば、新曲の宣伝効果はうすれ、その売上が現象することは必定である。
 
 このために、演奏面での「女子高生らしさ」を犠牲にしているのが「けいおん」という作品である。
 蛸壷屋の描く「アナザー軽音部」のようなドラマが生まれるのは当然の帰結であろう。
 
 

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蛸壷屋同人誌【C76
「万引きJK生】

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蛸壷屋同人誌【C77】
「レクイエム5ドリーム」
 さて、蛸壷屋による「アナザー軽音部」が世に出たのは、一年前の2009年8月15日のこと。
 
 その「万引きJK生」では、最後の5ページで、高校卒業の彼女たちの「後日談」が描かれていた。
 僕はそれに強い衝撃を受けて、数日後に、それを補完するプロットを書いたぐらいである。
あふたー・ざ・けいおん(粗筋) ー esu-kei_text
 
 この「万引きJK生」はネット上でも大きな話題となった。
(おかげで、僕のブログもかなりのアクセスを稼がせてもらった)
 
 
 そして、2009年12月29・30・31日に開催された「コミックマーケット77」にて、その続編となる「レクイエム5ドリーム」が頒布された。
 
 ここでは「万引きJK生」で数コマしか描かれていなかった秋月澪の後日談がクローズアップして語られている。
 秋月澪の不倫相手との恋愛は、示談金という形で幕を閉じた。会社を辞め、その貯金を頼りに引きこもり生活を続ける彼女の描写に共感する者は多かった。
 
 
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↑蛸壷屋同人誌「レクイエム5ドリーム」より
 
 
 そして、この夏、いよいよ第三弾「けいおん本」が頒布される。
 おそらく、今回は秋葉原で路上ライブを行っている中野梓が主役になるのではないかと僕は予想している。
 
 
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↑蛸壷屋同人誌「万引きJK生 けいおん部」より
 
 
 僕自身、中野梓の物語については、とあるエントリで、その構想を書いたことがある。
【あふたー・ざ・けいおん構想】 歩行者天国アキバの追憶 - esu-kei_text
 
 僕の構想は「中野梓」というキャラクタに忠実ではなく、秋葉原でパフォーマンスをするアイドルたちの一人の背景として「中野梓」の未来を重ねたものだった。
 今年7月18日、そんな秋葉原歩行者天国は再開される予定である。
 せっかくなので、僕は新たなホコ天の様子を見ながら、秋葉原についての物語を構想しようと思っている。
秋葉原の「ホコ天」7月にも再開へ…地元合意 ー YOMIURI ONLINE
 
 
 そんな僕にとって、蛸壷屋の新刊が、またもや「けいおん」であることは喜ぶべきことだ。
 前二作でも描ききれなかったという「アフター・ザ・アナザー軽音部」では、どんなドラマが描かれているか。
 それを読むのは、二ヶ月以上先になるが、今から心待ちにしている。
 
 
 蛸壷屋の魅力は二次創作ばかりではない。
 むしろ、オリジナル作品のほうが、蛸壷屋らしさを活かしていると僕は感じている。
(蛸壷屋のオリジナルは、どれも全年齢対象作品である)
 
 
 次のページは、様々な場所に転載されているが、蛸壷屋のオリジナル作品松陰神社の一場面である。
 
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 驚くべきことに、このページは、それから始まるイベントの「序章」みたいなもので、このあとの展開が凄まじいのだ。
 これが「終着点」ではないところが、この「松陰神社」という物語のスゴいところである。
 
 現時点での蛸壷屋作品のベスト作品が、「松陰神社」だと思う。
 「アナザー軽音部」のドラマに興味を持った人は、この「松陰神社」を手にしてほしい。
(「チャイドル」という言語表現が古くさいのが欠点だけど)
 
 
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◆既刊紹介&通信販売 ー 蛸壷屋
http://www.takotuboya.jp/postmail/postmail.html
 
 
 この他のオリジナル作品である魔法少女R」は、すでに販売を終了しているため、全編を無償でダウンロードして読むことができる。
 
 
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◆DOWNLOAD ー 蛸壷屋
http://www.takotuboya.jp/download.html
 
 「魔法少女R」は巻を追うごとに面白くなるが、初見では男性キャラの「外道さ」に拒否反応を抱く人もいるかもしれない。
 
 
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↑みずからの実験のために少女を拉致する「和田隆」(左)
 
 ただし、巻を進めるたびに、主人公「春山正子」の内面に踏みこんだ描写に圧倒されるようになるだろう。
 
 
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 卑屈な愛想笑いしかできなかったヒロインが、最終巻のバトルでどのような表情を見せるのか。
 蛸壷屋作品ならではの展開に引き込まれるはずだ。
 
 個人的に、蛸壷屋の作品は、どれも「死」の描写が重たいのが印象的である。
 日本が世界一の長寿国になったゆえか、身近な死を体験していない若者が少なくない。
 だから、マンガやライトノベルでは、「死」の表現があまりにも希薄である。
 僕のような小学生で母を亡くした身からすれば、それらの作品に共感することは、きわめて難しい。
 
 蛸壷屋作品には、それらの作品では感じることのできない、心をえぐるズッシリとした重みがある。
 その重みを感じたくて、僕は蛸壷屋の作品を愛読するのだろう。
 
 今度の第三弾「けいおん」本もまた、蛸壷屋らしさが全開の内容であると期待している。
 ぜひとも、アナザー軽音部を納得のいくまで描ききってほしいと思う。