『マカロン大好きな女の子がどうにかこうにか千年生き続けるお話。』(評価・C)

 

 

約1000年間生きて、好物のマカロンを自作しなかった少女の物語と、
男女間の友情を成立させた奇跡の男子高校生の物語。
 

 ネット発の小説である。連載されている最中に知れば、僕にも楽しめる内容であったかもしれない。
 

「ところで、あのマカロン少女って、まだやってんの?」
「ああ、宇宙人が来襲して、地球が滅亡寸前になった」
「マジで?」
「でも、その宇宙人の弱点がマカロンだった」
「そんなバカな」
「これでも、まだ五百年。半分すぎただけだからな。あと、二波乱ぐらいありそう」
「で、マカロン少女は、そろそろ自作したのか?」
「自作ってなにを?」
「マカロンだよ! 五百年生きてるんだから、そろそろマカロン量産化に成功してるんじゃないかと」
「バカだな、自作したらマカロンに食べ飽きるじゃないか」
「いやでも、マカロン大好きなんだろ?」
「大好きだから自作しないんだよ。何言ってんだ?」
「でも、おれだったら、絶対に酒を自作すると思うね。千年生きるとなったら」
「だから、自作した酒よりも、他人からもらった酒のほうがうまいってことだよ」
「……ダメダメ思考じゃないか」
「そうか?」
 

 

 本としてまとめて読むと、はたしてこの「千年間」とは何なのかという根本的な問いに苦しむことになる。うんざりするほど薄っぺらい宗教を信じる人がいる世界のことを想像することに何の意味があるのかとか。
 

 なお、本書は短編集で表題作を含めて4作品が収録されている。
 後半の2つは愚にもつかない代物だが、2つ目の「彼女はコンクリートとお話ができる」は興味深い内容だ。
 

 主人公は高校生だが、不治の病を宣告される。しかし、親には知らされない。
 はたして、そんな人間社会が存在するのか。旧約聖書の物語に人間性を見出してきた僕にも、これは難しい問題だ。もしかしたら、未来になれば、親ではなく未成年者である本人に「不治の病」を告げる社会になるのかもしれないが、そのとき、人間は人間でなくなっているのではないか。
 そんな「親は知らないが俺だけは知ってる」秘密の不治の病におかされた男子高校生が、女子高生と秘密基地を作る話である。
 その女子高生はコンクリートと話ができるらしいが、具体的なことは書かれていない。コンクリートに跳ね返ってくる自分の声(らしきもの)を聞いているだけかもしれない。
 問題は、この女子高生が風俗嬢でホストの彼氏と同棲していることである。
 そのことを知っても、男子高校生はたじろがない。女子高生が他者に色仕掛け攻撃をするときも、冷静に見守っている。たいしたヤツである。
 この二人には奇妙な友情が成立している。たしかに、ホストの彼氏と同棲していて風俗嬢をしている女子高生を許せる、親にも秘密の「不治の病」を抱えた男子高校生ならば、1対1での男女間の友情は可能であるかもしれない。
(高校生での男女間の友情はグループ内なら可能だが、1対1ではまず無理であるというのが僕の持論だ)
 

 こんなことを書くと「そんなにマジメに読むなよ〜」とか「泣いた私をバカにするのか」と怒られそうだが、書籍化するとはそういうことではないのか。
 僕だって、若い感性にふれたいのだ。それは、僕の幼い頃の苦い記憶を呼び覚ますことになり、他人を許せなくなった自分の思考をやわらげる効果が期待できる。
 ところが、本書の「世界」というのは、僕の生きる「世界」よりも、ずっと狭く閉ざされている。なるほど、幸せとは無知のことなんだな、と錯覚しそうになる。
 文章はすこぶる読みやすい。この読みやすさはたしかに評価すべきであろう。評価はC。
 



 

 余談だが、「マカロン」といわれて真っ先に思い出すのが、週刊少年ジャンプに連載された『ボボボーボ・ボーボボ』というマンガである。
 以下、その部分を引用する。
 

澤井啓夫ボボボーボ・ボーボボ』3巻 奥義31)
 





 

 「マ」→「カ」→「ロ」ときて、少女(ビュティ)が「二」といえば、「マカロニ」が成立したのに、「ン」と答えたことで台無しになったという場面である。
 これを読んだとき、僕は「マカロン」というお菓子を知らなかった。作者も編集者も知らなかったのではなかったか。「マカロン」というものが存在しなかったから、このギャグは成立したのだ。
 このマンガが連載されていた2001年、まだマカロンは一般的なお菓子ではなかったのだ。ここらへんの経緯はWikipediaにも載っていないので、知っている人は追記してほしいと思う。
 

 この頃の『ボーボボ』が僕は大好きだった。伝説の「亀ラップ」もこの3巻に収録されている。
 「亀ラップとは何ぞや?」という人は、下の動画をどうぞ。マンガ連載時は15ページ中10ページを使って歌われた、ジャンプ史上に残る「名曲」である。
 

D
 

 『ボーボボ』の曲では、ほかに「未練歌(みれんソング)」が好きだ。
 







 

 首領(ドン)パッチの必死すぎる形相がたまらなく好きである。
 この本気なのか冗談なのかわからないギャグが、初期の『ボーボボ』の魅力であった。
 

ボボボーボ・ボーボボ 3 (ジャンプコミックス)

ボボボーボ・ボーボボ 3 (ジャンプコミックス)