『涼宮ハルヒの驚愕』感想「残念ながら」

 

 
Q:4年ぶりの新作とのことですが、前巻『分裂』を再読する必要はありますか?
A:残念ながら、『驚愕』には、あらすじもキャラ紹介もありません。できれば、『分裂』だけではなく、シリーズ全巻を読み返してください。それだけの忍耐力がない人には、読むほどのものではないと思います。
 
Q:SOS団に新入生のかわいい女の子が入ってきたそうですね!
A:残念ながら、彼女はあずにゃん中野梓)のように愛されるキャラではありません。朝比奈みくるは癒しても、読者を癒すキャラではないのです。彼女の正体が、おぼろげながらわかったとき、僕は読み進めることに耐えきれず、パソコンでフリーセルソリティアに小一時間ほど励みました。
 
Q:谷口の元カノが出てくるそうじゃないですか!!
A:残念ながら、そのシーンが『驚愕』最大のハイライトです。僕が心の底から楽しめたのは、そこだけです。
 
Q:あのマユゲ女が性懲りもなく出てくるみたいじゃないですか?
A:残念ながら、チョイ役です。僕は朝倉嫌いですが、もうちょっと華のある出演をしてほしかったと思います。
 
Q:『分裂』でメインヒロイン扱いだった佐々木の活躍に期待しています!
A:残念ながら、期待すればするほど、読後感の失望が計り知れないと思います。ていうか、佐々木は男で良かったと思うんですよね。もはや。
 
Q:『陰謀』から橘京子ちゃんが気になっているのですが、『驚愕』では萌えるシーンとかありますか?
A:残念ながら、キョンの京子に対する扱いは、朝比奈みくるよりもひどいです。シリーズ最低の扱いです。なので、二次創作でがんばってください。『驚愕』の二次創作をやるならば、橘京子以外に可能性を見いだせません。
 
Q:じゃあ、『驚愕』では誰が活躍するのですか?
A:残念ながら、古泉です。古泉ファンの人は、それなりに期待して「キャッキャウフフ」と盛り上がればいいのではないでしょうか。
 
Q:『驚愕』が出たことにより、アニメ三期の可能性も出たのでは?
A:残念ながら、ありえません。その理由を知りたい人が読んでみるといいのではないでしょうか。面白い小説が読みたい人が読むような本ではありません。
 
Q:では、『驚愕』は読む価値がないってことですか?
A:そんなことはありませんよ。これまでシリーズを読んできた人ならば、楽しめるシーンが、チラホラあるんじゃないでしょうか。おつかいイベント満載の『陰謀』よりは、出来がいいんじゃないですかね。『憂鬱』や『消失』とは、比べるだけヤボってものです。
 
Q:『驚愕』を読んで「グノーシス主義」を理解しました!
A:残念ながら、「グノーシス」という概念は、軽はずみに語ると火傷する難しい代物です。キリスト教聖書の正典『ヨハネ福音書』や外典『トマスの福音書』の中に、「グノーシス」とひとくくりにしたほうが理解しやすい思想背景があることは確かですが、それだけを抜き出して語ることは実態にそぐわないと思います。実は、こういう回りくどい言い方が「グノーシス」の本質だったりするんですけどね。表立って語ることができないものに「グノーシス」は現れるのです。
 
Q:で、ハルヒキョンはどうなるのですか?
A:湯川秀樹ノーベル賞を受賞した理由と同じような関係になります。あなたも僕もそれで納得できなかったとしても、そう書いているのだから、残念ながら、読者は受け入れるしかないのです。
 
Q:『驚愕』で語られる時間概念がわからないのは、SFを読んでいないせいですか?
A:面白いものに予備知識は必要ないはずです。『魔法少女まどか☆マギカ』の10話や、『消失』のような、SFならではの世界観をいかした面白さというのは、SFファンじゃなくても楽しめるものです。
 結局、『驚愕』は『消失』の劣化版みたいなもんですが、長門VSハルヒの『消失』に比べると、あまりにも役者の格が劣ります。佐々木の言うことは意味はわかるけどうなずけないものだし、なんだかハルヒは説教くさくなっています。そういや『俺の妹』の桐乃もかなり説教くさいのですが、それは中学生読者を抱えているラノベ作家には仕方ない傾向なんでしょうかねえ。
 
 
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