Wikipediaの英語版と日本語版の違い ―虚か実か―

 

 
 デーモン小暮(現・デーモン閣下)で有名な「聖飢魔II」の代表曲のひとつ『EL. DORADO』
 この曲の公式クレジットは「作詞: デーモン小暮、作曲: デーモン小暮・紫馬肥」となっている。
 
 しかし、ファンならば、誰もがこの曲のメロディラインを作ったのは、当時「聖飢魔II」に加入していなかった「ルーク篁」であることを知っている。
(「紫馬肥」というフザけた名前は、デーモンとルークがデビュー前に組んでいたバンド名)
 だから、実態を反映させるなら「作詞: デーモン小暮、作曲: デーモン小暮ルーク篁」と掲載するべきなのだ。
 
 ところが、レコード会社の宣伝広告媒体ではないはずのWikipediaでも、テンプレートでは、レコード通りの表記が徹底されている。
 
EL. DORADO - Wikipedia
 
 こういうところは、日本語版だけの慣習である。
 悪弊であると言ってもいい。
 
 英語版では、それは異なる。
 作詞・作曲者のクレジットは、著作権登録されたものではなく、その実態を示すものに改められているのだ。
 
 例えば、リンゴ・スターが、ビートルズ解散後に、初めてシングルヒットを飛ばした曲『明日への願い/It Don't Come Easy』。
 

 
 レコードでは、作詞・作曲は「Richard Starykey(リンゴの本名)」単独表記になっている。
 しかし、この曲でビートルズの元メンバー、ジョージ・ハリスンがライティングに加わっていることは有名だ。
 だから、英語版Wikipediaでは作詞・作曲者(writer)は「リンゴ&ジョージ」となっている。
 それでも、日本語版Wikipediaでのテンプレートは、リンゴ単独表記なのである。
 
It Don't Come Easy - Wikipedia
明日への願い - Wikipedia
 
 このような例は、他にあげればキリがない。
 
 映画「イージー・ライダー」の主題歌のひとつ「イージー・ライダーのバラッド」。
 

 
 レコードでは、この曲のライターはByrdsのロジャー・マッギン単独表記になっているが、実際はボブ・ディランが曲作りに大きく関わったといわれている。
(レコード会社との契約上、ディランは映画に曲提供ができなかったらしい)
 ゆえに、英語版Wikipediaでは、作詞・作曲者は「ロジャー&ボブ」となっているのである。
 
Ballad of Easy Rider - Wikipedia
 
 レコードにおける作詞・作曲者の公式クレジットは、著作権が絡み、印税問題が発生するために、当事者が問題を解決するまで改まることはない。
 しかし、Wikipediaにおける表記が、それに従う必要はないはずだ。
 
 ネット世論の重要さが日増しに唱えられているなか、このような、実より虚を取る日本語版Wikipediaの慣習は改めるべきであろう。