Youtubeで聴く60年代のローリング・ストーンズ

Englands Newest Hit Makers [12 inch Analog]
 Youtubeローリング・ストーンズの魅力を知ることは難しい。頻繁に権利者削除されているし、彼らは「テクニック」ではなく「ノリ」で勝負するバンドだからである。
 できれば、最初に下のベスト盤を聴いて欲しい。

フォーティー・リックス

フォーティー・リックス

 実は、日本人が知るストーンズの曲はそれほど多くない。60年代に限定すれば、次の二曲ぐらいではないか。


Youtube ―The Rolling Stones -(I can't get no)Satisfaction



Youtube ―The Rolling Stones -She's a Rainbow


 多くの人にとって、未知な存在であるローリング・ストーンズ。その代表曲を、少しばかり紹介していこう。

The Last Time


Youtube ―The Rolling Stones -The Last Time

 初期のミッシェル・ガン・エレファントを想起させるこのポップナンバーは、全米で初めてTOP10入りした1965年の出世作
(本国イギリスでは成功していたストーンズだが、米国の売上はかんばしくない状況が続いていた)

 ビートルズと違って、ソングライティング能力がないままデビューしたストーンズは、なかなかオリジナルの良作を出せずにいた。そんな彼らが、みずからの独自性を見せた快心作である。
 では、このキャプチャー映像から、ストーンズのメンバーを紹介しよう。

The Rolling Stones

この5人がオリジナルメンバーである。左から順番に

ドラムが右端という、見た目を重視したTV向けのポジションである。


The Rolling Stones

キース(右)とミック。当時のキースは、濃いジョージ・ハリソンといった印象である。間奏では、あまりうまくないソロを聴かせてくれる(当時のギタリストは大体このレベル)


The Rolling Stones

左は、うまさも独自性もないベースのビル・ワイマン
中央には、リードギターブライアン・ジョーンズ。当時はストーンズのリーダーだった。1969年に変死。


The Rolling Stones

そして、ジャズ・ドラマーのチャーリー・ワッツ。機械のように淡々と叩き続ける彼の姿は、上手下手を超越した何かがあるような気がしないでもない。


この曲で目立つのは、ミックのパフォーマンスだろう。それに比べると、キースの存在感はうすい。中身はともかく、外見はかなりおとなしかったのが、当時のキース・リチャーズである。



現在のキース・リチャーズ。もはや、好青年だった面影はない

初期のカバー作品


ビートルズの「Twist & Shout」のように、カバー作品なのに自分のものにしてしまったストーンズの曲は多い。街でよく流れる曲を二つ取り上げる。


YouTube
オリジナルはバディ・ホリー。印象的なイントロ部分をキースは「俺たちの曲作りの原点」と語る。ハープを吹いているのはブライアン。

YouTube
日本では人気のある曲だが、ストーンズのオリジナルではない。

(I can't get no)Satisfaction



Youtube ―The Rolling Stones -(I can't get no)Satisfaction


 ファズのきいたギター・リフがうなるこの曲は、ストーンズ初の全米1位を記録した。
 しかし、キースは「ファズは邪道だ」と考え、ライブではファズをきかせない。
 このTVショウの出来は悪いが、ほかに60年代サティスファクションの良い演奏を見つけることができなかった。
 「I can't get no satisfaction」は直訳すると「私は不満を得ることができない」と意味不明なものになる。「I can't get no!」は二重否定ではなく強調である。もちろん、俗語表現であり、決して、テストで使ってはいけない。

Get Off My Cloud



Youtube ―The Rolling Stones -Get Off My Cloud


 「Satisfaction」に続き全米1位を記録した曲は、ストーンズらしさを確立した作品といえるだろう。ラップのように言葉を乗せるミックのセンスが光る。
 相棒キース・リチャーズは、なぜかメガネをかけている。ソングライティングでは、ストーンズに欠かせぬ一人となったのだが、ステージパフォーマンスでは、まだ地味である。

Paint it Black! (黒く塗れ!)



Youtube ―The Rolling Stones -Paint it black

 宇多田ヒカルもカバーしたストーンズの代表曲。
 単純な曲構成だが、ブライアン・ジョーンズの演奏するシタールが良い。当時のストーンズは、ミック&キースではなく、ミック&ブライアンのバンドであった。

Under My Thumb



Youtube ―The Rolling Stones -Under My Thumb

 シングル曲ではないが、現在もステージでよく歌われる。
 ここではブライアンは唇をとがらせてマリンバ(木琴の一種)をたたいている。
 ブルース音楽の造詣が深く、初期ストーンズではリーダーだったブライアン・ジョーンズだが、作曲能力を身につけることができなかった。
 ソングライターとして、キースがクローズアップされるのにともない、演奏家であったブライアンの地位は低下する。それら精神的プレッシャーが重なり、欝がひどくなったブライアンは、まともに演奏できなくなる状態に陥った。1969年、ミックはブライアンをストーンズから解雇する。ブライアンが変死したのは、その一ヵ月後であった。

初期ライブ Under My Thumb〜Paint it Black!



Youtube ―Rolling Stones -Under My Thumb〜Paint it Black!(Live 1967)

 それでは、前述した2曲をライブ音源でお届けしよう。
 TVショウでは時間的制約もあり、あまりうまくない演奏や、レコードを流してごまかしたりすることの多いストーンズだが、決して初期ライブが魅力的でないわけではない。
 初期ライブのテンポはレコードに比べてずいぶん早い。もし、初期のストーンズのパフォーマンスが知りたければ、下記CDを購入することをおすすめする。

GOT LIVE IF YOU WANT I

GOT LIVE IF YOU WANT I

Sympathy for the Devil



Youtube ―The Rolling Stones -Sympathy for the Devil(PV)

 イエス・キリストの刑死から、ケネディ兄弟の暗殺まで、様々な歴史事件を取り上げながら「さあ、俺の名前を言ってみろ」と問いつづける6分におよぶこの曲は、ストーンズの最高傑作の一つである。
 その歌詞を表現するために、ミックは積極的に外部ミュージシャンを取り入れた。すばらしいピアノはアンソニー・ホプキンス。メンバーのほとんどはパーカッションに回された。ベースとギターはキース・リチャーズである。
 この曲の製作過程がゴタール監督の「One Plus One」で使われている。60年代の録音風景を知ることができる貴重な映像である。


この曲はミック一人で作られた。ブライアンとキースにコード進行を教えるため、弾き語りをしているミックが映されている。すでに、曲はほとんど完成している。あとは、それをどう表現するかだった。



「One Plus One」のダイジェスト作品。数多くのバージョンが「Sympathy for the Devil」には存在する。一つの曲がどのように構築されていくのかを知ることができるだろう。
 なお、この映画ではゴタールの意味不明、不快難解なドラマが含まれている。まことに60年代らしい作品である。



 ボーカル収録風景。メンバーとガールフレンドたちにより「フー! フー!」は録音されたのだ。


 その他のバージョンが聴きたい方は、ぜひ、下のDVDを見てもらいたい。


 なお、この曲はライブではギターを前面に出したアレンジとなっている(1989年まで)
 レコードでは完全にミックの曲だが、ライブではキースらしさが出ているのだ。こういうところが、ストーンズらしい。ライブバージョンのほうが好きだが、Youtubeでは見つけることができなかった。

Jumpin' Jack Flash



Youtube ―The Rolling Stones -Jumpin' Jack Flash

 ストーンズの代表作を三つあげろといわれれば、こう答えるだろう。

  • (I can't get no)Satisfaction
  • Jumpin' Jack Flash
  • Brown Sugar

 この曲の歌詞は「トム・ソーヤ」のホラ話に似ている。すべてを「It's a gas! gas! gas!」で片付ける無責任さがいい。
 ストーンズの曲にしては珍しくベースラインがいい。ビル・ワイマンは自分が作曲者であることを主張していると聞く。この曲を作るほどのセンスがビル・ワイマンにあるとは思えないが、曲のアイディアはビル・ワイマン発かもしれない。


 この曲のライブでもっともすばらしいのは「Love You Live」である。

Love You Live (Reis)

Love You Live (Reis)

 ラスト3曲の「Brown Sugar」「Jumpin' Jack Flash」「Sympathy for the Devil」の叩き浴びせるようなパフォーマンスは、ストーンズにしか出せない境地にある。


 残念ながら、Youtubeでは最近ライブ映像がほとんどで、パフォーマンスとしては全盛期であった1970年代の映像があまりにも少ない。
 技術的には決してトップクラスではないストーンズを「下手だ」と一蹴するのは簡単だが、それでは、40年をすぎてもなお、現役のバンドであり続ける理由はわからないだろう。
 うまさだけがロックンロールではないことを、ぜひ、ストーンズを通じて知って欲しい。


 なお、個人的に一番好きなアルバムは「Let it Bleed」である。ここで紹介した楽曲は一つも収録されていないが、もし、何の先入観もなく、ローリング・ストーンズというバンドを知りたければ、ひたすらこのアルバムを聞き込むことをお勧めする。
 ビートルズは1970年に解散したが、ストーンズは解散しなかった。その理由がこのアルバムにはある。

Let It Bleed

Let It Bleed