Twitterは怖いツールじゃない ー相次ぐ「口蹄疫」感染のデマから自衛するために
昨今の口蹄疫問題から。
助命嘆願の署名さえ集まっていた種牛49頭のうち、2頭に発熱症状が出た。
この件について、過剰気味なtwitter世論に疑問を呈した方がコチラ。
☞http://d.hatena.ne.jp/what_a_dude/20100528/1275039006
26日から発熱症状が出たのに、東国原知事はその日のブログで「49頭に症状は出ていない」と書いていたではないか、と、この人は批判している。
僕は「怒りを覚える」ほどのことじゃないだろう、と思う。
5月25日に僕はブログでこう書いた。
☞種牛49頭殺処分をめぐる、宮崎県知事と農水省官僚のtwitterから - esu-kei_text
その中の一文を抜粋。
ただ、ブログでは後日に修正可能だから信用ならないと思われるから、僕のTwitterの発言を。
(投稿日時をクリックすると、該当の発言ページにジャンプできます)
種牛助命の署名運動については、そのような世論が出るのもやむなし、と思ったし、それに現地対策本部がどう対応するかに興味があった。
実務レベルでは、農水省サイトを見ればわかるが、対策は着々と進行している。
しかし、山田農水副大臣や、赤松農水大臣、そして、対策本部長である鳩山首相に、この対策に執心しているという態度が見られない。そのことを批判しているのだ。
僕のスタンスは、素人が「実務レベルに口を出すことは難しい」ということである。
世の中の陰謀論の多くは、「実務」を知らない人の想像から起こるものだ。
歴史を考えれば、安重根の二重狙撃説がそうだし、その安重根が信じていた孝明天皇の毒殺説もそうだ。どちらも語るに足らないデマである。
しかし、そのようなデマが歴史に影響を与えたのも事実だ。安重根は最後まで、伊藤博文が孝明天皇毒殺に加担したと信じていたし、それがために、彼を暗殺した。
そして、意外と「裏をとる」ことは難しい。「孝明天皇毒殺説」についても、歴史学者の資料の読み込みの甘さが、戦後になっても余計な論争をもたらした。
☞孝明天皇 - Wikipedia
今の時代、そんなデマを信じた安重根を時代錯誤だと批判するのは簡単なことだが、この口蹄疫をめぐる問題では、感情的になりやすい僕ですらあきれる内容が、どんどん流れている。
確かに、赤松農水大臣の問題意識の無さは批判するべきだろう。
だが、それをすぐに「口蹄疫の実務問題」と直結して考えるのはいかがなものかな、と思う。
僕は、先ほど紹介したブログの人と違って、Twitterはわりと便利なツールだと思っている。発言をさかのぼってみていけば、その人間性が見えてくるというものだ。
感情的になりやすい人、何かにもがいている人、劣等感をむき出しにしている人、いろんな人がいる。
一日にできることは限られているし、それらをすべて相手にすることはない。
Twitterではリスト管理ができるから、僕のように「フォロー返し」しないと、フォロー数が減少する人でも、コメントを取捨選択することはできる。
東国原知事のように、10万ユーザにフォローされている人は、返信を読むだけで大変だろう。
しかし、政治家というものはそういう商売だ。
そして、少なくとも、東国原知事は説明責任を果たしている。
現場責任者としての処理に追われながらも、Twitterやブログできちんと意見を述べている。
だからこそ、その姿勢を批判することもできる。
これは良いことではないか。
たいていの人は「口蹄疫問題」を政権打倒に利用しようとしているだけかもしれない。
かつて、僕もそうだった。5月2日のブログでは、そのような主張をしている。
☞民主政権は「食の安全」を保障できなくなった - 口蹄疫感染問題から - esu-kei_text
それから、ちょっとマシなレベルになったのが、5月19日のエントリである。
☞農水省官僚のtwitterから、口蹄疫感染対策の事実関係を紹介する - esu-kei_text
どちらも大ざっぱな内容である。ある種の「方向性」を示しただけの内容だといえる。
ただし、僕自身はこれを書くことで「実務には詳しくないけど、デマをうのみにしない」スタンスを持つことができた。
僕は2chに比べるとTwitterはノイズが少ないと思っている。
デマを流す人は「拡散してください」とか「リツイートしてください」と、ロクに裏の取れていない情報を流すような感情的な人だ。
彼らは悪いことをしているつもりはない。
正義欲を振りかざしてがんばっている。
僕はそういうのに巻き込まれるのはゴメンだと思ってる。
あなたもそうではないですか?
我々はその自衛をすればいいだけである。Twitterでは発言者の履歴を追うことができる。
彼らの発言を信用するかどうかなんて、見知らぬ訪問販売員を断るよりも、ずっと簡単なことだ。
Twitterに「恐れ」を抱いている人が少なくない。
「Yahoo!」のアンケートでも、ネットユーザーに偏った回答であるのに関わらず、「Twitterを選挙運動で解禁すべきではない」という意見が半数を越えた。
実に驚くべきことに。
☞僕は、ツイッターとEメールが選挙運動で解禁されることを望む - esu-kei_text
Twitterにしろ、RSSリーダーにしろ、いくら情報収集を効率化したところで「不安」が癒されることはない。
情報強者と自称する人は、かなりの「不安」にかられてるんじゃないかと考えたりする。
そういう人は、「Firefox」でも、アドオンを大量に導入して、どうしようもなくなってるんじゃないかと思う。
僕が「Firefox」で使ってるアドオンなんて一ケタである。
「このフリーソフトが!」とか「このアドオンが!」という記事は常に人気だが、自分の手になじめば、それでいいじゃないかと思う。
ここらへんは「速読術」に似ているかもしれない。
いくら「速読」したところで、人間の理解量には限界がある。
部屋でたとえれば、僕が六畳一間だとしたら、四畳半の人がいれば、八畳の人もいるだろう。別荘なんてものを持っている人もいるだろう。
で、いくら、速読で情報を流し込んだとしても、それを整理する能力がなければ、あっという間に足の踏み場がなくなってしまう。そうすると、ストレスがたまる。
口蹄疫に関しては、実務経験がないかぎり、細部にわたって正確な情報を手に入れるのは難しい。
僕のような素人には、大まかな方向性で判断することしかできない。
だが「拡散してください」という意見に踊らされて、ネット世論の共通意識である「がんばれ! 宮崎」という声がうすれてしまうのは問題だ。
農水省や宮崎県には、10年前の口蹄疫感染のときに対処した経験者がいる。
今、我々にできることは、政府の対応を声高に批判することよりも、「がんばれ! 宮崎」と叫ぶことだけではないか。
【関連エントリ】
・僕なりにまとめた口蹄疫感染問題 - esu-kei_text