『庵野監督、古巣提訴』のニュースに友情の難しさを考える

 
 ヤフーにもニュースになっていた、庵野ガイナックスを提訴したニュース。
 
http://news.yahoo.co.jp/pickup/6222854
 
 現ガイナックス社長の山賀と、ガイナックスから独立した山賀は大阪芸術大学の同期生。
 漫画家の島本和彦も同期で、島本の自伝的マンガ『アオイホノオ』で、庵野と山賀の関係が描かれている。
 

アオイホノオ 1 (ヤングサンデーコミックス)

アオイホノオ 1 (ヤングサンデーコミックス)

 
 『アオイホノオ』はドラマ化もされた。庵野と山賀のシーンはニコニコ動画で見ることができる。
 
マニアックなアニメの見方2 - ニコニコ動画
 
 大学で庵野秀明というスゴい奴に出会った山賀博之は、あまりアニメにくわしくないくせに、庵野についていけば「一生食いっぱぐれない」とアニメ界で立身することを決意する。
 絵心のない山賀は、マクロスを作った石黒昇アートランドに無理やり押しかけて、演出や脚本のやり方を学んでいく。
 そして、山賀は岡田斗司夫と企画した『王立宇宙軍』で監督と脚本をつとめた。
 

 
 公開時とタイトルが違うのはご愛嬌だが、このPVがもっともわかりやすい。
(最後に出てくるのが山賀である)
 
 その後、山賀は『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』の脚本を書いたりするのだが、有名なのがガイナックスの代表作『トップをねらえ!』の脚本だろう。
 『トップをねらえ!』の脚本名義は岡田斗司夫だが、実際に岡田が書いたのは数行のメモ書きのようなもので、それを山賀が「一話6時間」というペースで脚本を書いた。
 そして、それを暇つぶしに読んだ庵野が、第二話の脚本で不覚にも感動して、監督を引き受けたという経緯がある。下の動画を見ればわかる。
 

YouTube
 
 その後、山賀はガイナックス二代目社長澤村が脱税容疑で逮捕されたあと、三代目社長になった。
 最近の山賀は自身の初監督作品『王立宇宙軍』の続編を作ると喧伝しながらも、さっぱり状況が進んでいない。
 今回の提訴は、庵野なりの「山賀よ、王立宇宙軍の続編はとっととあきらめろ」という通告だろう。
 
 さて、彼らをネタにしたマンガを描いている島本和彦は、庵野や山賀と親しくはなかった。
 そのことは、20代前半の対談記事を読んでもわかる。
 
2007-03-11
 
 島本が親しかったのは、むしろサンライズからボンズを立ち上げた南雅彦である。
 この南雅彦に島本は友情を盾に、ずいぶんと利用されたようだ。
 
 ガンダムシリーズの転機となった『Gガンダム』に島本はキャラクター制作協力というよくわからない肩書でクレジットされている。
 『アイアンリーガー』では、島本絵コンテを元にした没オープニングというものがある。
 

疾風!アイアンリーガー OP 島本和彦絵コンテVer - YouTube
 
 南雅彦のインタビュー記事で『アイアンリーガー』では、島本にずいぶんと必殺技を考えてもらったと語っている。
 
疾風!アイアンリーガー
 
 さらには、『エウレカセブン』――日本では受けなかったが、海外での評判はめっぽう高いボンズオリジナルアニメの原案作成にも協力したらしいのだ。
 そこらへんは、島本のブログでこんなふうに書かれてある。
 

南雅彦はご存じ アオイホノオに出てくるあいつ(笑)で
 
アイアンリーガーGガンダムのプロデューサー
 
つまり私にその仕事を持ってきた男
エウレカセブンを私と一緒に考えた男。
 

 
 しかし『エウレカセブン』のクレジットに島本の名前はないのである。
 
 島本が『アオイホノオ』で、庵野・山賀・赤井のガイナックス三人組を生き生きと描いているのは、あまり親しくなかったせいかもしれないと思う。
 
 今回の庵野ガイナックス提訴のニュースに、僕は友情についてあれこれ考えた。