どもり男子とアイドルロボット(5)

 
【これまでのあらすじ】
 
 キャサリンの知り合いの自称サンダーボルト博士が教えた事実は大介を打ちのめすには十分だった。
 多くのMHAユーザーが自殺をしていて、流行にうとい大介に「双葉エリサ」の存在を伝えたきっかけの動画を作った「Kマネ」も、その一人だという。
 大介は「エリサに欲情してイヤらしいことをしようとした」悪質なユーザーが、事故死しただけだと思っていたが、事実は異なっていたのだ。
 エリサは人工無脳プログラムであるがゆえに、データ収集目的で実用化され、その学習成果をフィードバックするべく、日々アップデートを続ける。その結果が、MHAユーザーの自殺を招いているのではないか、というサンダーボルト博士の結論に、大介は言い返すこともできない。
 「人間が機械に恋するのは当たり前。でも、ロボットが人間に恋すると信じるのは愚か者」。そんなサンダーボルト博士の言葉を噛みしめながら、大介は回想する。かつて高校時代、自分に生きることに希望を与えてくれたのは双葉エリサだった。そんな彼女が死神呼ばわりされるのは我慢がならないと。
 
 
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     (5)
 
「ダイスケさーん」
 遊具にぶら下がって手をふるエリサを、息を切らしながら大介は見る。
 アパートから徒歩15分、丘の中腹にある公園に大介はエリサと来ていた。デートですか、と笑うエリサに、大介はリモコンで、ピクニックだよ、と答えた。
 サンダーボルト博士と自称するチビッ子と会ってから、大介はMHAに対する評判を積極的に知ろうとした。色々な議論が交わされていた。ビジネスの問題。モラルの問題。テクノロジーの問題。それぞれの意見をまとめるのは、大介一人にはとても困難だった。
 深く考えるのはやめようと何度も思った。しかし、懸賞当選者である大介にはMHAの使用期限がある。ロボットは我慢強いとキャサリンは言ったけれど、このまま何の結論も出せないまま、月日が流れるのを身に任せるのは耐えられなかった。
 だから、こんな丘の公園に来たのだが、着いた段階で運動が苦手な大介は疲れきっていた。
 それでも、部屋の中でエリサとふたりきりでいるよりはマシだと大介は思う。
 公園にいるのは子供連れがほとんど。そのなかで、エリサがひときわハシャいでいるのを、大介は汗をぬぐいながら見る。ロボットだから、人間よりも耐久力があるのは当然だが、子供たちにはエリサの動きに驚いているようだった。その羨望の眼差しを受けて、エリサはまんざらでもないような表情を浮かべている。ここには、彼女を危険に陥らせる者はどこにもいない。
 道中で買ったペットボトルのお茶を飲みながら、エリサが自分の部屋に届くまでにどんなテストを受けてきたのだろうと大介は考える。こんな牧歌的な場所で行われたのではないだろうが、彼女はそれに合格して自分のもとにやってきた。そう想像することは気分の悪いことではなかった。
「ダイスケさん、だいじょうぶですか?」
 ふと大介が目を上げると、いつの間にかエリサが近寄っていた。
【疲れたから、休ませて】
「あ、わかりました」
 それから、エリサは大介の隣に座る。
「では、どうぞ」
「どどどど、どうぞって……」
「膝枕ですよ、デートでは定番の」
「こ、こここ、これは、ぴぴぴ、ピクニック――」
「では、ピクニックの定番ということで」
「そそそ、そんなの知らない」
「いいじゃないですか。ゆっくり休んでくださいよ。最近、ダイスケさん、思いつめてましたから」
「わ、わわわわ、わかるの?」
「そりゃもう、私はダイスケさんのアイドルですから」
 MHAはオーナーの健康状態を判断して返答を変える機能がある。その精度は高くなく、だから、ロボットが看護師になるためには、まだまだ技術開発が必要だが、それっぽいことを話すことはできるのだ。
「だから、ゆっくりやすんでください。せっかく、こんな風通しのいいところに来たんですから」
「あ、ああ」
 大介はそれにさからえず、ベンチで横になった。目を開けるとエリサの顔が間近にあるので、目を閉じて。
「――きみがいなーけりゃー しらずにいきてーたー」
「そ、そそそ、それって」
 エリサの歌声に、思わず大介は立ち上がってしまう。
「ダイスケさん、歌はお嫌いなんですか?」
「い、いいい、いや」
「せっかくなので、一曲うたってあげます。子守歌がわりに」
【君はその歌を作った人、知ってるの?】
「ええ、Kマネさんって人です」
【その人がどうなったか、知ってる?】
「検索してみましょうか?」
「し、ししし、調べなくていいから!」
「……この歌、嫌いでしたか? 夕暮れと優しい歌ということで選んでみたのですが」
 大介は少し考えてから、リモコンにこう入力した。
【ううん。歌続けていいよ】
「じゃあ、膝枕してください」
「あ、ああああ」
 ふたたびエリサの膝の上に頭を乗せて大介は目を閉じる。その髪をなでながら、エリサは歌い始めた。
 
『君がいなけりゃ 知らずに生きていた
 夕焼けに染まった川のきらめきを
 君がいなけりゃ 知らずに生きていた
 沈みゆく夕陽が照らすぬくもりを
 
 この橋を渡れば 帰る場所がある
 でも、もう少し ここにいようか
 
 君がくれた鍵を 強くにぎったまま
 このままむかえよう 夜の始まりを』 
 
 MHAオーナーの中には自作曲を歌わせる者が少なくなかった。その多くはダンサンブルなアップテンポの曲だった。双葉エリサのテーマ曲である『未来の物語』のような。
 しかし、Kマネさんが作った『君がいなけりゃ』という曲はワルツで童謡のような小曲だった。曲単体で発表していたら誰にも見向きされなかっただろう。
 エリサに歌わせる歌詞のほとんどは、女性一人称で書かれたものだった。大介もこの曲を初めて聞いたときは、ロボットとしてコンピューターから飛び出したエリサが世界の美しさに感動した歌だと思ったものだ。
 でも、風が冷たさを増し始めた夕暮れ近くの公園で、エリサの曲を聴いていると、これはKマネさん自身の心境を歌ったものだと感じた。
 そして、大介は知る。Kマネさんもエリサを連れて外の景色を見せてまわったのだと。エリサがいなければ、かつての大介のように部屋に閉じこもりがちな男性にすぎなかったと。
 エリサの口から出されたメロディーに、大介はKマネさんのエリサを見つけた。それだけではない。発売されてから、多くのMHAオーナーがエリサに歌わせてきた思いが大介に届いた。
「んふ、ダイスケさんったら」
 歌い終えたエリサはそんな笑みをこぼした。その理由が自分が涙を流しているからだと大介は気づいた。
 きっとエリサは自分の歌に大介が感動したと判断したのだろう。
 でも、大介の涙の意味はそれだけではなかった。大介は叫びたかった。
 ――Kマネさん、あんた、なんで死んじゃったんだよ。
 ネットの情報を見ても、大介はその理由にたどり着けなかった。Kマネさんは自称サンダーボルト博士が言う「命をかけたチキンレース」で自殺をしたわけではなかったという。MHAをメーカーに返品し、それから首を吊った。きっと、エリサにきちんと別れを告げたあと、一人になってから、Kマネさんはみずからの命を絶ったのだろう。
 そのKマネさんの絶望の深さは大介にはわからない。でも、エリサのオーナーになった今ならば、気休めぐらいは言えたのではないかと思う。死ぬことはないじゃないか。MHAオーナー同士でつながる交流だってあるじゃないか。
 しかし、Kマネさんはもうこの世にいない。大介はそのことが悔しかった。悔しすぎて、ただ大介は涙を流し続けた。双葉エリサというロボットの膝の上で。
 
     ◇
 
 それから数日後の昼休み、大介は学食で天そばを食べていた。このメニューは五日連続である。それほど気に入っているのかといえば、そうでもない。ただ、飽きていないだけだ。大介は飽きなければ昼食のメニューを変えない性格なのだ。
 二年になると学食を利用する者は少なくなる。学食は混んでいるし騒がしい。大学キャンパスを一歩出れば、おいしい定食屋はいっぱいある。だが、学食は安い。それはMHAのオーナーとなった大介にとっては、もっとも優先すべきことだった。
 そんなわけで、大介がズルズルと天そばを食べていたときに、いきなり隣からドンという音がいた。大介は驚いて、少しむせてしまう。
 ふと隣を見ると、頬のこけた女子の姿があった。
「あなたに話があるのよ。ちょっといい?」
 その顔に大介は見覚えがなかった。だから、大介はすぐに目をそらして、天そばに向き合う。かつて、大介は多くの恥をかいた。自分にあいさつをしてくれたと思ったら、その後ろの友達に対してだったりすることが何度もあった。なまじ、どもってしまうものだから、赤の他人に笑われたり、舌打ちされたりするのだ。
「だから、あなたに話があるのよ、どもり君」
「……う」
 さすがにこう言われては無視するわけにはいかない。もしかすると、この大学にも他のどもり君がいるのかもしれないが、無視をするのは何かしら危険な香りがする声色だった。
「き、ききき、君は?」
 そばをのみこんだあとで、大介はたずねる。
「わたしはミズキ。そう呼んで」
「あ、あああ、あの……」
 少し前、なじみのない女子学生に声をかけられたことを思い出す。あのとき、大介はミズキという名前はキャサリンのことだと勘違いしていたのだ。
 では、どうして、このミズキという子が、自分と付き合っているというウワサが流れたのだろう。
「単刀直入に言うわ。あなた、双葉エリサのオーナーよね?」
「な、ななななな、なんで、それを」
「だって、あなた、双葉エリサとデートしたりするんでしょ?」
「で、ででで、デートじゃなくてピクニック……」
「わたしはね、そんなロボットとデートして満足しているあなたの性根を叩きつぶしにきたのよ!」
 ドン! 大介のそばがこぼれるぐらい、ミズキは力強くテーブルをたたいた。
 なお、大介が座るテーブルは六人がけであり、大介以外はすべて他人である。ミズキ以外の五人は何かを食べている最中だったから、驚きと非難に満ちた目でミズキを見る。
「ちょ、ちょちょちょちょっと! ご飯食べるまでだまってて」
 大介はそう叫んで、急いでそばをすすりだす。最近の大介はキャサリンやサンダーボルト博士といった変な女子を相手にしてきたが、このミズキという子には彼女たちとは違う危なさがあった。
「じゃ、じゃあ、そそそ、そとに」
 汁をほとんど飲まずに大介は立ち上がる。貧乏性の大介には不本意な食べ方だったが、それどころではなかった。
「ふん、わたしはどこでもいいんだけどね」
 そう言いながら立ち上がったミズキの姿を見て、やっと大介は気づいた。
「き、ききき、君は……」
「やっとわかったの? わたしの魅力が」
「こここ、コスプレイヤーなの?」
 ミズキと名乗る女の子は、大介のよく知るコスチュームを着ていた。起動初日以降、大介のエリサが着たことのないMHA01の公式コスチュームを。
 
     ◇
 
「こここ、この季節に寒くない?」
「寒いとか言ってる場合じゃないのよ、わたしは」
 11月の秋晴れの下、大学キャンパスのベンチに大介とミズキは腰かける。ミズキの格好はあまりにも目立ちすぎた。本家のエリサが普段着にしないほどの非日常性にあふれた服なのだ。
「それで、あなたの感想がききたいんだけど」
「か、かかかか、感想?」
「双葉エリサよりもわたしのほうが魅力的じゃない?」
 なにを言ってるんだこの子は、と大介は思う。
 大介が見たミズキの印象は、不健康というものだった。
 頬はこけているし、せっかくのミニスカートだって、その足の細さが目についてしまう。
「この体型を維持するのはかなり無理してるんだけどね。だいたい、双葉エリサはロボットだからって、パラメーターがおかしいのよ」
 エリサの体型を不自然だと大介が感じたことはない。おそらく、それは男性の理想とする体重に合わせて造形されたものだからだ。
 でも、このミズキという子はちがう。
「き、ききき、君はやせすぎだよ」
「はぁ? なんでそんなこと言うの? これがあなたの好きな双葉エリサと同じ体重なのよ」
「で、ででででも、エリサはそういうものだけど、ききき、君はそうじゃなくて」
「人間だからロボットにはかなわないって言いたいわけ?」
「ち、ちちちち、ちがう」
 ミズキの姿は大介には痛々しく見えた。いや、大介だけではないはずだ。双葉エリサのふりをしたミズキを、皆は遠巻きに眺めながら目を合わせようとしない。
 大介は先日の女子学生の言葉を思い出す。自分がバカにされているのは承知の上だったが、同じぐらいこのミズキという子も見下していた口調だったと大介は感じていた。
「ど、どどどどうして、君はそんなマネを?」
「ふん、ロボットしか相手のいないあなたに話してもわからないだろうけどね。……好きになってくれる女の子がいるのに、ロボットを選ぶヤツがいるとか信じられる?」
「ま、まさか……」
 大介は興奮してミズキに顔を近づける。
「ぼ、ぼぼぼ、僕のほかに、エリサの持ち主が、こここ、この街に?」
「ちがうわよ。でも、そう言われたのよ。どう思う? 好きな男の子に『おまえもロボットみたいになれ』と言われた女子の気持ち、あなたにはわかる?」
「ひ、ひひひひ、ひどい」
 大介はエリサのファンだが、エリサと同じような人間の女の子を求めているのではない。偽善かもしれないけど、人にはそれぞれの美しさがあるはずで、きっとこのミズキという子にだって。
「そ、そそそ、そんなこというオトコなんて、とっとと……」
「どもりのくせに、彼のことをバカにする気なの?」
「だ、だだだ、だって、女の子に、そそそ、そんなことを言うヤツなんて」
「これ以上、彼の悪口を言うと、あなた――殺すわよ」
「う、うう……」
 その眼差しを見ると、大介には何も言えなくなる。
 大介はキャサリンの言葉を思い出す。彼女は「あらゆる愛を否定したくない」と言った。
 でも、人間の女の子に向かってロボットのほうが魅力的だという男子をあきらめない愛に、何の意味があるのだろう。
 その言葉だけを頼りに、まわりに冷たい目を向けられても、エリサの格好をしているミズキという女の子。
「わたしはあなたの好きな双葉エリサという存在が憎い。なんであんなものが生まれたのかと思ってる。もし、あなたが双葉エリサと一緒に歩いているのを見たら、ハンマーで叩き割りたいぐらい」
 爪を噛みながら、ミズキはそんな恐るべきことを平気で口にする。大介にとって、それは殺人予告にも等しいものがあった。
 でも、大介はなぜかミズキを憎めなかった。それは、ミズキと同じぐらい大介も必死に思いつめていたからだ。
「き、ききき、君は、それでエリサになりきってるつもり?」
「双葉エリサになりたいんじゃない。わたしは双葉エリサに勝ちたいのよ。この格好は、あくまでも同じ土俵に立つための――」
「で、ででで、でも、君はエリサにはなれない」
「はぁ? そりゃ双葉エリサは経験豊富なビッチでしょうよ。でもね、そんな置換可能なロボットと人間であるわたしと比べたら――」
「エリサはアイドルなんだ!」
 大介はどもらずにミズキに叫ぶ。
「え、エリサは歌って踊って、多くの人を救う天使なんだ!」
「……そ、そう」
 その勢いにミズキは押されて、弱々しくつぶやく。
「でも、双葉エリサは天使なんかじゃない。死神なんでしょ? わたし知ってるのよ。あなたのような双葉エリサの持ち主が多く死んだって――」
「僕はそうじゃない!」
「……ならば、証明してよ。双葉エリサが死神じゃなくて天使だということを」
「わ、わかった」
 大介はハッキリと答える。
「じゃあ、わたしを説得する自信がついたとき、双葉エリサと会いにきて」
 そう言いながら、ミズキは立ち上がる。
 このとき、大介には何の考えもなかった。エリサのことをバカにされて逆上しただけだった。でも、一人で考えるよりも道が開けたと思った。
 このミズキという子を納得させられたとき、きっと自分もエリサというロボットを受け入れることができるはずだと。
 
     ◇
 
「え、えええ、エリサのライブをしようと、おおおお、思うんだ」
 どもりながら、大介はキャサリンに電話をしていた。
 大介は喋りに自信がないから、電話番号以外の連絡方法を教えてくれと頼んだが、キャサリンは断った。ヘタレ君って文章で会話するとウザそうなタイプだからイヤだ、という理由で。
「ほう、なんで、そんなことを」
「だだだだ、だって、えええ、エリサになりたがってる、おおお、女の子がいたんだよ」
「へえ、ロボットになりたい女の子かあ。世も末だね」
「で、ででで、でも、彼女はエリサが、すすす、スゴいことを知らないから」
「あー、そうだよね。エリサちゃんのパフォーマンス、あたしも見てみたかったんだよ。TVでは見たことあるけど」
「ぼぼぼ、僕のエリサじゃないけど……」
「でも、同じようにできるんだよね」
「う、うん。だだだ、だから、ちゃんとしたところで、うううう、歌わせたいから」
 大介がキャサリンに電話で相談したのは、彼女が金髪のヤンキー娘だったからだ。この街にもライブハウスがあるという話を大介は耳にしたことがある。
「うん、ヘタレ君にしては良い考えじゃん。となると、ハコを用意しなくちゃいけないわけか……」
「は、ははは、ハコって?」
「会場のことだよ。……あっ、あそこだったらいけるかも」
「あ、あああ、あそこって?」
「公民館」
「へ?」
 金髪に染めたキャサリンからかけ離れた単語に大介はとまどう。
「もしかしたら、平日だったら空いてるかもしれないし」
「こここ、公民館でライブ?」
「分館なんだけどね。子供の演劇会ができる程度のホール室があってさ。うん、ライブだってできるよ。ただ、音響と照明が問題になるかもしれないけど」
「そ、そそそ、それはだいじょうぶ」
 MHAの目的は、男の一人暮らしの部屋をライブ会場にできるということだから、付属で音響&照明セットがついているのだ。
 最初、大介は自分の部屋にミズキを招待して、エリサのライブを見せようと考えたものだ。しかし、ミズキにはエリサ破壊発言がある。もし、感情が高ぶったら、どんなことをするかわからない。だから、キャサリンにも来てほしかった。できれば、もっとほかにも観客が。
「わかった。なんとかしてみる」
「あ、ああああ、ありがとう、キャサリン
「あたしのエリサちゃんの初ライブだからね。もちろん協力させてもらうよ」
「ででで、でも、そこって、かか、借りるのに、お金かかるんじゃない?」
「まあ、チケット代がわりでいいよ……そうだ! ヘタレ君って友達いないよね?」
「……ととと、友達ぐらいはいるよ」
 大介はそう強がってみせる。
「もしかして、エリサちゃんのライブに連れてくる気?」
「まままま、まだ、声かけてないけど」
「いい? あたしに協力してもらいたければ、ひとつ条件があるんだけど」
「じょじょじょじょ、条件?」
「あんたが連れてきていいのは、そのロボットになりたい女の子だけ。それ以外はお断り」
「え? ななな、なんで?」
「だって、男子禁制でライブやりたいから」
「ぼ、ぼぼぼぼ、僕は?」
「ヘタレ君は男子にカウントされないよ。だって、あんたはエリサちゃんのプロデューサーみたいなもんでしょ?」
「ぷ、ぷぷぷ、プロデューサー?」
「あんたにできることは、あたしたちを満足させる、とびっきりのライブにすることだから。いい?」
「う、うううう、うん」
「よっし、それじゃ、エリサちゃんのために、あたしがんばってあげるから!」
 上機嫌な口調でキャサリンは電話を切った。
 
 
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