シリウスは6番目に明るい星 ― 星空を見るために知っておくべき6つのこと
七夕を題材にした『笹の葉レクイエム』という中編を書いたが、その中で主人公のキョン子たちが夏の星空を見る場面が出てくる。
星空鑑賞というシチュエーションはマンガやアニメで好まれるが、それらのシーンはあまり実用的ではない。
というのは、現代人が頭で知っている星空と実際に目に見える星空との落差が大きいからだ。
たいていの人は「夏の大三角」すら説明なしには見つけられないのではないか。
そこで、星空鑑賞にするうえで知っておくべき6つのことを質問形式で書いてみた。
答えはたいてい『笹の葉レクイエム』という物語に書いているが、面倒くさい人はWikipediaで調べてみてもいいだろう。
(1)1年は何日か
4年に一度のうるう年を含む、1年を365.25日とした暦が、紀元前一世紀にローマ帝国が定めた「ユリウス暦」である。
これはエジプトの暦をユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)が採用したものだ。雨季と乾季がハッキリ分かれるエジプトにとって、季節を正確に知ることは死活問題だったのだ。
しかし、それでは不正確ということで、16世紀にローマ教皇グレゴリウス十三世が定めたのが「グレゴリオ暦」である。日本が採用しているのも、この暦である。
なお、ガリレオが宗教裁判にかけられたのは17世紀の話。つまり、ガリレオを弾圧したキリスト教は、一年は365.25日ではなく、小数点第四位までハッキリと定めていたのだ。
これはうるう年で答えてもかまわない。4年に一度のうるう年が、紀元前一世紀に定められた「ユリウス暦」。では、現在の「グレゴリオ暦」は、400年に何度うるう年にすると定めているか、知っているだろうか?
(2)シリウスより明るい5つの星をあげよ
地球上から見えるもっとも明るい星は太陽、2番目は月である。
では、3番目に明るい星は何か? 星を見たことがある人には常識的問題だが、案外「シリウス!」と答える人がいるのが困ったところ。
そして、4番目と5番目に明るい星は順不同で。
シリウスはその次、6番目に明るい星である。
(ただし、人工衛星などの人工物や、超新星や彗星などをのぞく)
ちなみに、さそり座のアンタレスは「火星に次ぐ星」という星の意味である。天体観測をするうえで、恒星と惑星の区別は観測者がつけるしかないのだ。
(3)惑星が「惑星」と呼ばれる理由を二つ述べよ
人が「天動説」を信じていた時代も、恒星と惑星は区別されていた。そうでなければ、星座に惑星を含まれていなければおかしいはずである。
この「惑星」という呼称は古代ギリシャ時代につけられた単語をもとにしているが、そう名付けられた理由は主に二つ。
余談だが『笹の葉レクイエム』では、その理由の一つしか述べていない。もう一つのヒントは前問の答えにあるので。
(4)天文学の古典「アルマゲスト」は何語か?
地動説が主張されるまで、天文学の古典とされていたのは古代ギリシャのプトレマイオスが書いた「アルマゲスト」という書物である。
そこでは、惑星をも含めた天動説モデルが主張されている。望遠鏡が発明されるまでは、それこそが宇宙の摂理とされていたのだ。
さて、この「アルマゲスト」という題名はギリシャ語ではない。では、何語なのか? それを知るだけでも、中世の天文学の歴史を知ることができるだろう。
(5)ガリレオが地動説を主張した三つの根拠を述べよ
現代では、宗教の迫害者として知られるガリレオは、一種の狂人であった。自分の主張をかたくなに信じ、それをもとにキリスト教の教条を変更するように求めた。彼はいささか熱心すぎるキリスト教徒でもあった。
実はガリレオの地動説モデルはまちがっていて、同時代のケプラーの主張が正しかったのだが、ガリレオはケプラーをかたくなに批判した。つまり、ガリレオは真実を否定したのである。その理由はケプラーの地動説モデルが、ガリレオのキリスト教正義から外れていたからだ。ガリレオもまた、宗教に束縛されて真理にたどりつけなかった哀れな天文学者の一人なのだ。
とはいえ、ガリレオが天文学に果たした功績は計り知れない。
ガリレオは望遠鏡で多くの発見をした。それらが彼が地動説を唱える根拠となった。
『笹の葉レクイエム』では、このうちの一つをたった一行だけで書いているだけなのだが、できれば三つは知っておいたほうがよい。