僕達の友情は儚い(6)「だけど、僕は星奈先輩の味方じゃないし」

 
※この作品は、ライトノベル僕は友達が少ない10』の続きを書いた二次創作小説です。

 
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    (6)
 
 夜空はこほんと咳払いをして画面のメッセージを読み上げる。
「最初は小鷹の発言だ。『ごめん理科、幸村と付き合うことになった』…………はぁ? いきなりすぎるだろ! その前のやりとりは……あれ?」
「夜空先輩、それアプリそのものじゃないんです。画面をキャプチャーしたものだから、該当部分以外は見られないっていうか、見せたくないっていうか……」
 小鷹が幸村との関係を理科に明かしたのは、クリスマス会から二日後のことだった。その前に理科は、クリスマス会で自分を犠牲にした小鷹をなぐさめるべく、かなり長文のメッセージを送っていた。
「……ただ、それまでに幸村くんのことはいっさい発言してなかったですよ。小鷹も、理科も」
「そうだな……友達同士だったら、他人には言えない秘密があるだろう。……で、理科の返事が『ハァ?』……私のリアクションと同じではないか!」
「夜空。あんたの感想はどうでもいいから、つづき」
「わ、わかった」
 夜空は星奈にせかされて、小鷹と理科のやり取りを読むことに専念する。
 
『だから、俺、幸村と付き合うことになった』
『ははは、ご冗談を』
『マジだって!』
『マジで?』
『ああ、いろいろごめんな』
『謝る相手は僕じゃないだろ!!』
 
「…………僕?」
「……それって理科の発言だよね?」
「すみません。そこはスルーでお願いします」
 理科はつい縮こまってしまう。小鷹相手にはよく使う『僕』口調も、先輩二人には使ったことがない。
「まあ、一人称が変わることはよくあることだからな。私も中学生のときは……」
「で、小鷹はそれになんて答えたの?」
「せかすな肉よ、こういうのはじっくりゆっくりとだな」
「あたしは待ちたくないの」
「ふん、じゃあいくぞ。次は小鷹からだな……」
 
『星奈もそうだけど、おまえのことも』
『とりあえず、状況を説明して』
『俺と幸村が恋人になった』
『という夢だったのサ』
『理科、マジメに聞いてくれ! 冗談じゃないんだ!』
『じゃあ、なんで僕に相談しなかったんだよ!!』
『なんでって?』
『僕たち友達だろ? そんな大事なこと、一人で決めるなよ!!』
『すまん』
『……で、星奈先輩のこと、どうするんですか?』
『土下座してあやまる』
『ハァ? ハァ? ハァ? ハァ?』
『許してくれるとは思っていない。でも、俺にできることは土下座しかないんだ!』
『死ね』
『だから死ぬ覚悟で土下座するって』
『そして、星奈先輩に刺されて死ね』
『こ、殺されるかな?』
『殺されたほうがいいと思う』
『でも、わかってくれ。俺が星奈のことを好きだったのも本当だったんだ』
『やっぱり今すぐ死ね』
『あー、どうしようもないんだよ、ちくしょー』
『……幸村くんとはいつから?』
『クリスマス会のあと』
『へ? なにがあったの?』
『幸村にバッサリきられた』
『なにそれ』
『俺がどんなにひどいことをしたのか思い知らされた』
『ひどいこと?』
『星奈のこととか、お前のこととか』
『なんで僕のことが関係あるんだよ』
『だって俺、お前のことも好きだったっていうか』
『死ねええええええええええええ!!!!!!』
 
「…………うわぁ」と星奈。
「…………ひどいな、これは」と夜空。
「夜空、さっきの『死ね』というのは、理科の発言なの?」
「そうだが、私の魂の叫びもこめてみた」
「……サイテーでしょ、小鷹」
 理科は二人の先輩にそう言わずにはいられなかった。
「で、夜空、それで終わりなの?」
「いや、それから理科が……」
 しかし、夜空は口をつぐむ。その後の理科の発言は夜空が眉をひそめるようなものばかりだった。
「……しばらく理科の『死ね』発言が続いてるな」
 夜空はその内容をまとめて星奈に説明する。
「夜空、それって既読ついてるの?」
「ああ。そのあとで小鷹の返事があるのだが……」
 
『あにきをころすなら、わたくしがたてになります』
 
「……それ、幸村だよね?」
「でも、発言者は小鷹なんだよな」
「ねえ、夜空先輩……その発信時間を見てくださいよ」
 理科の言葉に夜空は一瞬で顔をしかめる。
「『03:31』って、これ午後じゃなくて午前だよな、理科?」
「ええ、つまり午前3時に小鷹のケータイを使って幸村くんが返事をしたということですよ」
「そ、そうか……さすがの私も、これが意味することはわからなくもないわけで……その、二人は……」
「ズッコンバッコンとやった後じゃないですかね、たぶん」
 理科はぶっきらぼうに答えてみせる。
「で、夜空……それに対する理科の返事はないの?」
「ひとこと『ばか』と。理科よ、これは誰に向けて言ったのだ? 小鷹なのか、幸村なのか?」
「どっちだっていいじゃないですか、もう」
「……これも既読か。マジパないなLINE。殺人事件が起こるのも納得の破壊力だ」
「いちおう、そのあとにメッセージを送ってるんですけどね」
「本当だ。最後にこうある」
 
『友達としての忠告。幸村くん抜きでこのことを星奈先輩に報告すること。それしなかったら【絶交】だからね』
 
「……これも既読で、返事無し、か」
「僕さ、『絶交』って言葉、かなり思いきって使ったつもりなんだよね。友達としての最後の意地っていうか……」
 理科は無意識のうちに夜空や星奈相手にも『僕』口調で話していた。
「でも、あのヘタレは何もせずに、修羅場は今日に持ちこされたわけか」
「まあ、どのみち修羅場だったんだろうけど……あんなの、わざわざ人前で見せるようなものじゃないよ。そう思いませんか、夜空先輩?」
「……ついでに、こんな退部届を出されるとはな、カノジョ経由で」
 夜空は目の前の二枚の退部届を指ではじきとばす。
「夜空先輩、それ、どうするんですか?」
「どうしようもないだろ。どうせあいつらは来ないんだから。私が受理しようが受理しまいが同じことだ」
「隣人部部長に戻らずに生徒会に入ってたほうがよかったとか思ってませんか? 夜空先輩、副会長さんに気に入られていたんでよね?」
「あれはあくまでもバカ子に勉強を教えたついでだ。生徒会はその意志がある者に任せるべきだ。……葵は努力家だし、それを支える幸村もいるし…………きっと小鷹も」
「…………信じてたのに」
 理科と夜空との会話の間に、星奈のつぶやきがまじってくる。
「ん? どうした肉」
「だって! 小鷹は隣人部が大事だから、あたしが好きだけど付き合わないってそう言ったのよ! それなのに幸村と恋人になって退部するとか、意味わかんないし! ……ありえないよね? そうじゃない? ねえ、これで終わりじゃないよね? 小鷹のこと、あきらめろとか言わないよね? でないと、あたし……」
「あのう、その『隣人部が大事』って小鷹の発言なんですが……」
 理科はLINEでのやり取りを見せたせいか、二人の先輩にも遠慮しなくなっていた。
「……実は星奈先輩に秘密にしていたことがあるんです」
「秘密? 何よそれ! あんたたち、グルになってあたしをダマしてたとか!」
「落ち着け肉。言ってることが支離滅裂だぞ」
 星奈が感情的になっているせいか、夜空の口調は冷静さを取り戻している。
「でも夜空、理科がその秘密をしゃべってくれてたら、こんなことにならなかったはずよ!」
「肉よ、それを判断するのは理科の話を聞いてからだ。理科、しゃべってくれるか?」
「は、はい」
 理科は夜空にうながされてつい姿勢を正してしまう。
「それは、屋上で小鷹と決闘まがいのことをしたあとの話なんですけど……」
「それって、小鷹があたしに告白の返事をしたときのことだよね」
「ええ、あのとき、理科は小鷹にきいたんです。『星奈先輩のことを好きですか』って。それに小鷹は『好き』って答えたんですよ。だったらやることはひとつしかない、と星奈先輩にメールで知らせたあと、小鷹を部室に連れて行ったんですけど」
「……そのことでは、あたしは理科に感謝してる。もし、理科が動かなかったら、小鷹はずっと逃げ続けていたかもしれないから……だから、あたし、理科が友達という名目で小鷹とイチャイチャするようになっても許してやろうって思ったの」
 理科はそんな星奈の心づかいを十分に知っていた。だから、スキー研修の下見で泊まったとき、温泉で小鷹と一緒になったことを、理科は星奈に律儀に報告したのだ。
 今となっては、そんな気づかいに意味はなかったけれど。
「で、そのあと理科は小鷹にたずねたんですよ。『じゃあ、幸村くんや夜空先輩のことはどう思ってるのか』って」
「ほう、それは初耳だな」と夜空。
「理科、小鷹は幸村のことをなんて言ったの?」と星奈。
「星奈先輩、それがですね、……小鷹のやつ、『幸村のことも好きかもしれない』って」
「はぁ? なによそれ!」
 星奈はいきり立つ。当然の反応だと理科は思う。
「小鷹はそんな中途半端な気持ちで、あたしに告白の返事をしたの?」
「ええ、だから『隣人部を何とかしたい』とか言ってましたけど、その裏には『誰か一人を選びたくない』というゲスな下心もあったんじゃないかと」
「ウソよ! 小鷹は夜空を何とかしたかったから、あたしと恋人になるのを保留しただけなのよ! そうじゃない?」
「……そういうふうに言いましたけどね、星奈先輩の前では」
 理科自身、小鷹の中途半端な恋心には大いにあきれたものだ。しかし、それゆえに誰か一人にたなびくことはないと思った。現状を維持すれば、小鷹は友達の自分を一番大事にするのではないかという打算的な気持ちもあった。
 そんな小鷹が幸村を選ぶとは理科には予想外だった。星奈の強さを上回るものが幸村にあると理科は気づいていなかった。
 先の修羅場での立ち回りを見て、理科は改めて幸村のことを過小評価していたと知った。
「そうそう、小鷹は私のことはどう言ったのだ?」
 夜空がたまりかねた様子で口をはさむ。
「よ、夜空先輩? それは……」
 夜空から視線を外し、理科はこう答える。
「……言えません。友達の秘密ってことで」
「ひ、秘密? こんな状況になっているのにか? あんな修羅場が終わった今となっても言えないことなのか?」
「はい……まあ、なんていうか、察してください」
「そ、そこまでひどい評価を受けてたのか、私は……」
 ガックリと肩をうなだれる夜空。それでも、理科は言いたくなかった。さすがにあの表現は他人である理科が口にするべきものではない。
「でも、隣人部をなんとかしたいという小鷹の言葉はウソじゃなかったはずよ!」と星奈が立ち上がって叫ぶ。
「ほら、小鷹って、夜空とあの会長の仲をとりもったりしたんでしょ? そういう小鷹のお節介なところ? あたしは嫌いじゃないし! わりと好きだったし!」
 なぜか顔を赤らめて星奈は言う。まさかこの人、今さらながら小鷹への愛を主張しているのかと理科は首をかしげる
 すべては終わったことなのに。
「ギャルゲーでもあるじゃない? 本命の子と仲良くなっただけではフラグを立てられずにバッドエンドになるってシナリオ展開が。あたし、そういう夜空がらみのサブイベントがあるのかと」
「なるほど……貴様はギャルゲーを参考にしてしまったがために失恋したということか」
 夜空はそんな星奈に容赦しない。
「そ、そんなんじゃない、けど」
「それはゲーム会社に抗議の手紙を出さなくてはならないな。文面は私が考えてやろうか?」
「……いや、ゲームはゲームだし」
「冗談だ。貴様の野獣モードの犠牲になったゲームのキャラどもに、ささやかな供養をしてやろうとしたまでだ」
「…………うぅ」
 星奈は夜空がゲームの残骸を顎で指したのを見て、さすがに反省して肩を縮こませる。
「……結局、小鷹は人生初めての『モテ期』に浮かれてたんじゃないですかね?」
「ほう、ニブいふりして、楽しんでいたということか、あのヘタレは」
 理科は夜空の言葉にうなずいて、
「だってそうでしょ。星奈先輩はサイコーだけど、幸村くんも捨てがたいぜ、と小鷹は甘く考えてただけなんですよ。マジメに考えるだけムダなんですよ。――ギャルゲー的にいえば、星奈先輩ENDは確定だから、せっかくだからハーレムENDを目指すぜ、ってそれぐらいのことしか思ってなかったんですよ。……恐らく、そんな腐った性根を幸村くんに叩きつぶされたんじゃないですか? そういう意味では幸村くんの作戦勝ちですよ。理科を含め、みんなそこまで小鷹のことをひどいヤツだとは信じてなかったというか、信じたくなかったっていうか……」
「……理科さあ、そこまで考えたんだったら、あたしに言ってくれてもいいじゃない?」
 星奈の訴えるような目に、理科はひるんでしまう。
「でも、それがわかったのは今このときだし、星奈先輩が理科の言うことを信じてくれなかったと思うし……」
「あんたが教えてくれれば、いろいろやりようはあったわよ! もし、小鷹があたしのことをその程度にしか思ってなかったと知れば、もっと別のやり方が!」
「そうですよね……星奈先輩のことを考えたら、僕は言うべきだったんでしょうね……だけど、僕は星奈先輩の味方じゃないし……僕は僕なりの……」
「そうだ、理科は小鷹の友達という道を選んだのだ」
 夜空が仲裁者よろしく二人の会話に入る。
「だから肉よ、理科はあの腐れヘタレ野郎の味方になったということで、貴様の味方ではなかったことだ。それに、後悔したところで……」
「あっそ。じゃあ理科、きくけどさ、あんた何をやりたかったの? 何が望みだったの? あんた、小鷹とイチャイチャしてたとき楽しそうだったよね? 幸せそうだったよね? もし、あたしの知らないヤツだったらブッ殺したいぐらい、あんたたち仲良くふるまってたよね? あんた、あわよくば、友達から恋人にクラスチェンジしたいとか思ってたんじゃない? そうでしょ、理科!」
「あ、それはあきらめてました」
 理科は間髪入れずに星奈に答えてみせる。
「……あっさり答えたな、理科」
「だって、そのとき、つまり小鷹が告白の返事をしたときのことですけど、星奈先輩と夜空先輩と幸村くんのことを僕はたずねたんですよ? もし、僕に気があるのなら、一言ぐらいは理科っていう女の子の評価をしてくれてもいいじゃないか。……つまり、僕は小鷹の『対象外』だったんだよ。だから、小鷹は僕に気軽に話しかけることができたし、頼ってくれたりしたわけで……」
「そうだな、……理科、悪かった」
 突然頭を下げる夜空に、理科はとまどった。
「え? 夜空先輩が、どうして?」
「私はお前をうらやむばかりだったからだ。実をいうと、私はかなりお前たちの観察をしていた。昼休みにお前と小鷹が一緒に理科室で弁当を食べていたことを私は知っている」
「あ、あのときのことですか……やっぱり」
「それだけではないぞ。バス停でも、小鷹がバスを待つ間、二人で楽しそうに話してたよな。徒歩通学のお前が、わざわざ小鷹が乗るバスが来るまで待って。……私はそれをこっそり見てはため息をついたものだ」
「舌打ちのまちがいじゃないの? 夜空」
「肉よ、私はその友情を憎めなかったのだ。そりゃ嫉妬することはあったけどな。……だから、その友情が終わるなんて……」
「それはちがいますよ、夜空先輩」
 理科はそう言いながら眼鏡を外す。心の中で『キャストオフ!』とつぶやきながら。
「そのときもね、理科はずっとムラムラしてたんです。襲ってくれないかなー、と乙女っぽくドキドキしてたんですよ」
「なっ……! そんな下心があったのか、あのときのお前は」
「ムッツリスケベの夜空先輩には言われたくませんよーだ。そのムラムラを処理するために、一日三回はオナニーしてましたよ、小鷹と会ってた日は」
「そ、そんな単語を部室で言うなっ! 文学的に自慰行為と言えっ!」
「夜空先輩、自慰行為って単語のほうが、もっとヤラしいと思うんですけど」
「……で、結局、あんたはタナボタねらいだったんじゃない? 理科」
 わりこんできた星奈に、理科は首を振りながら、
「ちがうんですよ星奈先輩。僕はね、恋愛という物差しを出したら負けだと思ってたんです。小鷹の立場になって考えてみてください。――なるほど、友達として見るならば、理科はお手頃でいいかもしれない。でも、恋人としてはどうか? 星奈先輩と理科を天秤にかければどちらに傾くか? ……となると、僕に勝ち目はないわけですよ。哀れな理科ちゃんは、恋愛ばかりか友情をも失いかねない。だから、僕はXデーが来るのを長引かせることしかできなかったわけで」
「Xデー?」と星奈。
「つまり、小鷹が星奈先輩と付き合う日のことですよ。僕は絶対にそうなると思ってたんだけどなあ」
「肉と戦うことはハナからあきらめてたのか、理科は」
「そりゃまあ、当然でしょ? 夜空先輩」
「うーん、理科よ」と夜空はこめかみを押さえながら、
「自虐モードになってた私が言うのもなんだか、お前ちょっと自己評価低いんじゃないか? 小鷹はお前の外見を高く買ってたじゃないか。もし、お前が自信を持って行動していたらもっと別の結末が……」
「でも、小鷹のやつ、こう言ったことがあるんですよ? 星奈先輩は『高級霜降り肉』で、僕のことは『赤身ばっかりの肉』だって」
「あ、それ、あたしが言ったやつじゃない? あのスキー研修の下見のあとで」と星奈。
「ほほう、自分でも肉にたとえるとは、さすが肉だな。しかも、自分で高級肉というか」
「で、夜空先輩。小鷹は僕をなぐさめるつもりで『高級霜降り肉はたしかにうまいけど、赤身ばっかりの肉も俺は好きだよ』って言ってきたんです」
「はぁ? それって、柏崎星奈は最高においしいけど、志熊理科も悪くない、という意味なのか?」
「夜空先輩、それ以外にどういう意味があるとでも?」
「そうか……本当に、デリカシーがないな、あいつは」
「……で、あたしと小鷹が付き合ったら、理科はどうするつもりだったの?」
 二人の沈黙の合間をぬって、星奈が口を出す。
「どうするかって言われても……ただ、僕は二人の周囲は一気に加速するだろうなって予想したぐらいで……」
「加速するって、なにが?」
「だって、星奈先輩と小鷹は親公認のカップルだし、星奈先輩はエロゲーを抵抗なくプレイする猛者だし、そんなうらやましいプロポーションしてるし、小鷹もオッパイスキーって言ってたし、……付き合って一日目でハイ挿入っていうか」
「な、なななな、なにバカなことを言ってるのよ、理科」
「照れるな肉。というか、そういう話はやめたほうがいいんじゃないか、理科?」
 夜空の言葉に理科も我に返る。
「そうですよね。星奈先輩と小鷹が付き合ったらどうなるかなんて……今さら」
「あたしはすっごくききたいんだけど! ねえ、理科の中ではあたしはどういう未来を築いていたの?」
 興味津々な星奈に夜空は舌打ちをした。
「……馬鹿肉め。そんなことをきいてもつらくなるだけだぞ」
「だって、気になるじゃない? 理科、あたしは小鷹に簡単には身体を許さないつもりだったけど、そこらへん、あんたの想像ではどうなってるの?」
「は、はい……」
 理科はそう答えながらちらりと夜空を見る。夜空は目で、勝手にしろ知るか、と答えた。
 
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