2014年1月に読んだ本まとめ

 1月に読んだ本をまとめてみた。
 タイトルの下のリンクは、該当作品の感想ブログ記事のURLである。
 
 なお、評価については、星で換算すると、S=★★★★★、C=★★☆☆☆、となる。
(+と−は、それぞれ±0.5。だから、"B-"=2.5である)
 
 

1.『エロマンガ先生伏見つかさ (評価・B)

http://d.hatena.ne.jp/esu-kei/20140105/p1
 
 『俺妹』作者の新作。
 評価Bとしたが、今ではB−かCで良かったのではないかと考える。
 読んだ価値は、黒猫と桐乃のハイブリットである「山田エルフ先生」というキャラクターの可能性ぐらいか。
 続編を意識して書き惜しみをしたために消化不良の内容である。
 
 

2.『spica』泉和良 (評価・S)

http://d.hatena.ne.jp/esu-kei/20140110/p1
 
 ここ五年間で読んだ小説のなかで、もっとも目が開けた快作。
 「彼女」のことをもっとも魅力的に書けるのは俺だ、という作者のうぬぼれが、物語に生命力をもたらしている。
 そう、「世界で一番○○について書ける」といううぬぼれがなければ、小説なんて書くべきではないのだ。
 また、数独ナンプレ)についての記述も良かった。本作のおかげで、僕はフリーセルをやめて、ナンプレばかりするようになった。フリーセルナンプレの違いは何か。それは、本作を読めば明らかになる。
 アンディーメンテとかジスカルドとか、そういう過去は抜きにして、本書は名作。泉和良作品は今後も読んでいきたい。
 

3.『アキハバラ@DEEP石田衣良 (評価・B)

http://d.hatena.ne.jp/esu-kei/20140112/p1
 
 これも、今考えると、B−評価でいい。
 2002年から連載されたという、サブカル発信地としてのアキハバラを予期した先見性は評価できるが、小説しての面白さが致命的に欠けている作品。
 とにかく、この作品全体の「うぇーい!」という雰囲気が気持ち悪かった。
 

4.『鴨とアヒルのコインロッカー』伊坂幸太郎 (評価・A+)

http://d.hatena.ne.jp/esu-kei/20140117/p1
 
 伊坂作品は今後も読んでいくことになるだろうが、彼の小説の中で、もっとも完成度が高い作品ではないか。
 アジア人留学生に「日本で生きるためには」と説教する川崎の姿に、それまでの日本文学とは異なる価値観を感じる人もいるだろう。それは、時代のせいか、読者との距離感の近さのせいか。はたして、伊坂幸太郎は文化の先導者か、文化の追従者か。
 この作者の共感性の高さは、ともすれば失敗を招くことになる。それが明らかになったのが『魔王』であろう。
 

5.『魔王』伊坂幸太郎 (評価・C)

http://d.hatena.ne.jp/esu-kei/20140118/p1
 
 警鐘小説としては非常に物足りない野心作。政治家を描くならば、彼らを愚鈍とさせるメディアを中心とした「システム」を話題にしなければならないのに、作者の政治不信は、そこまでの踏み込みには至らなかったようだ。
 五年前に読んで失望した作品だが、このたび冷静に読むことができた。
 

6.『探偵ガリレオ東野圭吾 (評価・B)

http://d.hatena.ne.jp/esu-kei/20140119/p1
 
 エンジニア出身の作者の知識がいかされたミステリーなのだろうが、いかんせん、文章だけではそれを想像力するだけの頭が僕にはない。
 「探偵ガリレオ」の異名を持つ湯川助教授は刑事ではない。だから、このミステリーは、湯川助教授が怪奇現象を解明するシーンと、犯人を捕まえるシーンが別々となる。このバランスが、それぞれの物語でマチマチで、読んでて肩透かしを受けたところもあった。
 あと、ミステリー中編集では、使い捨てのキャラたちが大量に出てくるので、その名前を覚えるのが面倒くさかった。
 

7.『ビブリア古書堂の事件手帖三上延 (評価・A)

http://d.hatena.ne.jp/esu-kei/20140124/p1
 
 「探偵ガリレオ」に比べて、こちらはキャラの使い捨てがない。名前のある人物は、第四章で集結する。中編集の体裁と見せかけて、一編の長編となっている手腕は見事。
 ただ、その鮮やかさや淀みなさが、「作られた世界」という負の印象を強めすぎて、感情移入することはできなかった。おいしいが、歯ごたえのない作品。
 それでも、続編を意識せずに、この一巻で世界を描ききったところは評価できる。『エロマンガ先生』とは雲泥の差である。人気作となるのもうなずける作品。
 

8.『R.P.G.』宮部みゆき (評価・B−)

http://d.hatena.ne.jp/esu-kei/20140125/p1
 
 「ブレイブ・ストーリー」みたいなファンタジー小説と予想して買ったが、中身は現代ミステリーだった。
 書き下ろし長編という企画ありきの小説。話の展開は短編、サイズは長編ということで、やたらと詳細な描写が続く。また、種明かしに至るまでは、とある登場人物に同情的な刑事たちの様子に、読者としてストレスがたまった。
 綿密な設定、といいたいところだが、主要刑事2人は他作品の使い回しであり、宮部みゆき作品を初めて読む僕には面食らうことが多かった。
 この作品で、宮部みゆきという作家に初めてふれたのは、おそらく失敗だった。また、別作品を読みたい。
 

9.『エンダーのゲーム』O.S.カード (評価・A+)

http://d.hatena.ne.jp/esu-kei/20140126/p1
 
 文章がひどすぎる。訳が悪いのか、原文が悪いのか。
 映画化された話題作ということもあって読んでみたが、冒頭からショッキングな描写が続き驚いた。日本のイジメは陰湿だが、米国のイジメは攻撃的だ。日本の子供たちがイジメを苦に自殺するのは、その過度の問題ではなく、宗教教育の問題ではなかろうか。
 人類最高の司令官にするべく、大人たちは少年エンダーに無理難題を押しつける。エンダー少年はそれに反発しながら、勝つことだけが自分の存在証明と信じる。しかし、戦いが終わったとき、エンダーは大人たちがイカサマをしなければならなかった理由に気づき、振り上げた腕を下ろすことしかできない。そんな人間的成長がうまく描かれたSFだと考える。
 

10.『チーム・バチスタの栄光』 海堂尊 (評価・A)

http://d.hatena.ne.jp/esu-kei/20140129/p1
 
 ブログで書く前に、ツイッターで軽く感想を書くようにしているが、この作品だけ唯一、ツイッターとの評価を変えた。ツイッターのときは「A−」としたが、ブログでは「A」とした。
 読んだあと「A−」とした理由は、心理学用語の多用。優れた論理的構造を、物語性の面白さで隠しているのだから、専門用語は最低限におさえるべきではないかと、初めは考えた。
 しかし、それ以上に「医療施設に対する漠然とした不安」を解消することができるという、本書の力の大きさを考え、評価はAに変えた。
 

11.『ビギナーズ・クラシックス 孫子・三十六計』 湯浅邦弘 (評価・D)

http://d.hatena.ne.jp/esu-kei/20140130/p1
 
 角川ソフィア文庫で出されたバカ向けの入門書。そんなものを買った自分への自戒をこめて、評価は現時点では最低のD。
 執筆時間が少なかったせいか、それまでの著作をなぞっただけの、恐ろしく浅い描写におさまっている。大学の一般教養レベルだが、こんな漠然とした俯瞰では「よし、この先生のゼミに行こう!」と学生も思わないのではないか。
 せめて、一箇所でも思い入れがある箇所があれば良かったと考える。なぜ、著者が中国古代兵学を学問者として追求しているかについて、情熱的に語るべきではなかったか。
 
 
 振り返って愕然とする。わずか11作である。読書に励んだつもりだったが、実際はそれほどでもなかったようだ。
 今後は、もっと読書感想文を簡潔にまとめる方法を模索していかなければならないだろう。しかし、自力だけでは難しいかもしれない。新聞の読書欄の文章を丸写しするぐらいの努力はしないと、身につかないのではないかと考えている。
 構造をしっかりとさせつつ、読んだ人に「なるほど!」と発見を与えるような感想を書きたい。