映画「まどマギ 叛逆の物語」感想みたいなもの 〜SS「ほむらの交換日記」〜

 

 
 今日、映画「まどマギ」を見て、思いついた感想がこんな感じ。
 未見の人には意味不明のSSだろうけど、映画を見た人には、なんとなくわかるんじゃないかと。
 当然、ネタバレ要素満載です。
 あと、各キャラの一人称とかは適当です。公式設定とは違うところが多々あると思われます。
 
 

      *

 

さやか「なに読んでるの、まどか」

まどか「うーん、ま、いいか。これ見て」

さやか「わっ、なにこれ。ビッシリ書きこんでいるけど」

まどか「ほむらちゃんとの交換日記なんだけどね」

さやか「まどか、あの転校生と、そんなに仲良くなったの?」

まどか「ま、まあね」

さやか「で、そんなにビッシリなに書いてるわけ?」

まどか「わたしたちが魔法少女になって、世界救う話」

さやか「マジで? あの子って、そんなに子供っぽかったっけ?」

まどか「でもね、そんなに単純なお話じゃないの。戦うべき相手が悪者っていうよりも、わたしたちが戦う意義を探してる展開で」

さやか「むずかしそうだね〜。ただの妄想なのに」

まどか「で、ほむらちゃんは、べべちゃんが、かつて悪者だったという結論に達するわけ」

さやか「べべちゃんって、あの、マミさんの好きな人形?」

まどか「うん……でね、マミさんの目を覚ませるべく、ほむらちゃんは戦いを挑むわけよ。魔法少女同士で」

さやか「うへー、妄想ここに極まれり、だね。あの転校生、妄想の中で、マミさんに勝ちたかったのかな?」

まどか「ううん、ほむらちゃんは負けるの。高度な心理戦の結果、マミさんが一歩上手だったのよ」

さやか「それって、あの転校生の妄想だよね?」

まどか「うん、マミさんがね、ほむらちゃんの裏をかいて、追いつめるのよ」

さやか「あー、マミさんって、そういう裏をかくってコトできないタイプだからねー。頼りになるけど、足元すくわれやすいというか、けっこう油断してるっていうか」

まどか「でね、そんなマミさんに負けそうになったときに、ほむらちゃんを助けるのが、さやかちゃんなんだよ」

さやか「マジで? あたしが? あの転校生を?」

まどか「うん、そして、その戦いの愚かさをさやかちゃんが語るの」

さやか「あたしが? 愚かさを?」

まどか「この世界の謎を解き明かしても、誰も喜ぶ者はいないんじゃないかって。ほむらちゃんは、それに耳をそむけようとすると、さやかちゃんが言うんだよ。『また、自分の時間に逃げこむんだね。あんたの悪いクセだよ』って」

さやか「うへー、カッコよすぎるじゃん、あたし」

まどか「でも、ほむらちゃんの妄想なんだよね、これ」

さやか「もしかして、あの転校生、あたしのこと、高く買ってんのかな? だとしたら、ちょっと態度悪かったこと反省しなくちゃ」

まどか「うーん、なんていうかね。さやかちゃん、将棋って知ってる?」

さやか「知ってるよ。あたしの得意技は、王手飛車取り!」

まどか「…………まあ、で、ほむらちゃんは、常に三十手先まで読みながら、次の手を打ったりしてるのよ。さやかちゃん相手でも」

さやか「すごい。あの転校生って、実はプロ棋士だったりするの?」

まどか「だから、たとえなんだってば。で、そうやって、ほむらちゃんが相手の三十手先まで読んだところで、肝心のさやかちゃんは得意げに『王手!』と二歩打って負けちゃうんだよね」

さやか「なにそれ」

まどか「……わからないならいいよ。とにかく、ほむらちゃんは、自分の妄想なんだから幸せであればいいのに、そこから現実がうまくいかないことのヒントをさがしだそうと必死なんだよね」

さやか「ちょっと待って。その妄想の中に、まどかは出てこないの?」

まどか「出てくるよ。でも、あんまり頼りにならない」

さやか「もしかして、まどかって、信用されてないの?」

まどか「だったら、あたしに、こんなの見せるわけないじゃん」

さやか「そ、そうだよね」

まどか「まわりくどいんだよ、ほむらちゃんのやり方は。でも、そういう形でしか、ほむらちゃんは自分の思いを伝えられないのかもしれない」

さやか「うへー、あたしにはよくわからないわ、そういうの」

まどか「だから、さやかちゃんに見せたんだけどね。どうせ、わかりっこないから」

さやか「え? なんていったの?」

まどか「な、なんでもないよ。とにかく、そういうことだから」

さやか「あんまり、あの転校生のことで、思いわずらうんじゃないよ」

まどか「さやかちゃんも、ね? じゃあ、あたし、行くから」

さやか「……ああ」

さやか(いま、教室に戻っても、仁美と恭介がイチャついてるんだろうなあ。あー、自殺してえ)

 

          *

 

杏子「ぱくぱくもぐもぐ」

杏子「このじゃがりこの新味、うめぇ!」

 

          *

 

マミ「ふうん、あの子、そこまで思いつめてるのね」

さやか「マミさんにはわかるんですか?」

マミ「あの子、以前、わたしに言ったのよ。キュゥべえがわたしたちをダマしてるんだって」

さやか「キュゥべえって、まどかんちの猫だよね」

まどか「うん」

マミ「でも、あの子の前では、しゃべるらしいのよ、あの猫」

さやか「すげえ、あの転校生、そこまで妄想してるのか」

まどか「どうして、そんなふうになったのか、マミさん、わかります?」

マミ「ええ、嫉妬よ」

さやか「嫉妬?」

マミ「だって、キュゥべえは、家に帰ると、まどかとずっと一緒じゃない」

さやか「ということは、あの転校生はレズってわけ? まどかにマジ恋してるの?」

マミ「その自覚はないだろうけど、それに近いんじゃないかしら」

まどか「でも、ほむらちゃんは、マミさんの人形もしゃべるっていうし」

マミ「え? いや、そ、それは……」

さやか(マミさん、いつも、その人形相手に話してるからなぁ)

マミ「とにかく、世界を救う魔法少女という妄想をしてることから導かれる結論は、ただひとつ! あの子は、厨二病にかかってるのよ!」

さやか(それをあんたが言うか)

マミ「なに、美樹さん」

さやか「いえ、なんでもない、です」

まどか「だけど、杏子ちゃんも出てくるんですよね、その妄想の物語では」

さやか「杏子も? どうして」

まどか「じつは、ほむらちゃんって、杏子ちゃんとも親しいみたいで」

さやか「マジで? 孤児のアイツに同情してるの、あたしだけかと思ったのに」

まどか「で、その世界の謎を一緒に解き明かそうとするのは、ここにいる三人、つまり、マミさん・さやかちゃん・わたしじゃなくて、杏子ちゃんなんだよね」

マミ「うーん、いろいろ厄介だわね、それは」

まどか「マミさん、なんとかできませんか」

マミ「暁美さんの厨二病はとても深刻な域にさしかかってる。これはもう、あの儀式をするしかないようね!」

さやか(いや、その発想が厨二病だろ)

マミ「美樹さん、なにか言いたそうだけど」

さやか「いえ、なんでも、ないです」

まどか「マミさん、ちょっと待っていただけませんか?」

マミ「鹿目さん、なにか策があるっていうの」

まどか「一度、二人でじっくり話し合おうと思うんです。そうすれば……」

マミ「それは危険なことよ、オススメできないわ」

まどか「でも、わたし、ほむらちゃんと友達になるって約束したし」

さやか「あたしは何も言えねーや。あたしが生きてるのは、あの転校生のおかげだし」

マミ「そうね。暁美さんが見つけなければ、あなたはあのまま……」

まどか「ちょっとマミさん。そういうことは」

マミ「ごめんごめん。まあ、私は忠告するけど、止めはしない。だって、鹿目さんを信じているんだもの」

まどか「マミさん!」

さやか(ちぇっ。結局、あたしはのけ者かよ。まあいいや、どうせ杏子がヒマそうにしてるだろうから、たまには一緒に遊んでやらないとな)

 

      *

 

杏子「ぱくぱくもぐもぐ」

杏子「ポテチの季節限定味、うめぇ!」

 

      *

 

ほむら「まどかは、やっぱり、わたしの知ってるまどかのままなんだよね」

まどか「だって、わたしが耐えられないことを、ほむらちゃんにさせるはずないじゃない」

ほむら「まどかー!」

まどか(よしよし……いまのうちに、髪を三つ編みに戻そうっと)

まどか(だいたい、ほむらちゃんが、こんなになったのは、髪を変えたせいなんだよね)

まどか(転校してきたときは、三つ編みメガネという、わたしのどストライクの格好だったのに、いつの間にか、大人ぶっちゃって)

まどか(そのせいで、厨二病をこじらせちゃったんだよね)

ほむら「でも、わたしは行かなくちゃいけないの」

まどか「えっ!」

ほむら「あなたを救うために、わたしは行かなくちゃいけないのよ」

まどか「だって、あたしはここにいるんだよ。だのに……」

ほむら「そう、あなたこそが、たった一つのわたしの……」

まどか(ほむらちゃん、せっかくわたしが編んだ三つ編みをほどいて、どこに行くの)

まどか(……でも、わたし、ほむらちゃんを放っておけない)

まどか(やっぱり、マミさんの言う儀式をするしか……)

 

     *

 

杏子「で、あたしは何をやればいいのさ」

マミ「ひとつ芝居を打とうと思うの」

杏子「芝居? なんだそりゃ」

さやか「まあ、バカなあんたには、わからなくていいけど」

杏子「バカはおまえだろ、さやか」

マミ「まあまあ、二人とも。とにかく、暁美さんは、戦ってきたのよ。自分が生み出した厨二病という魔物と。私たちは、その戦いをたたえ、その悪夢が終わったことを祝福すればいいのよ」

杏子「それって、マミにしたほうがいいんじゃね?」

さやか「ちょ、ちょっと、杏子。たしかに、マミさんも厨二病だけど」

マミ「私はいいのよ。共存の道を選んだから」

さやか「自分の内なる厨二病と、ですか?」

マミ「でも、暁美さんには、それができなかった。だから、今日はその卒業式をするのよ」

まどか「マミさん、ホントにあたし……」

マミ「ええ、クライマックスは、鹿目さんのキスシーンよ」

まどか「でも、あたし、ファーストキスまだだし」

さやか「だいじょうぶだって、女の子同士はノーカンだよ」

まどか「だけど、ほむらちゃんは、そう思わないだろうし」

さやか「いいじゃん、女の子同士だったら結婚できないし」

杏子「マジか!」

さやか「へ? なにいってんの」

杏子「いや、かぎりなく、結婚に近い形はできると思うし」

さやか「あんた、なに考えてるのよ」

杏子「べ、べつに、幼なじみにフラれて失恋してるさやかをみんなではげましてるうちに、どんどん情が移って、もうあたしが幸せにしてやるしかないとか、そういうつもりはないんだからな!」

さやか「…………」

マミ「ほら、もうすぐ、芝居、はじめるわよ。よろしくね、キュゥべえ

キュゥべえ「にゃー」

 

     *

 

マミ「おつかれさま、暁美さん、よくがんばったわね」

さやか「おつかれ、転校生」

杏子「おつかれー」

まどか「がんばったんだね、ほむらちゃん。でも、もう苦しまなくていいから……」

ほむら「フッ」

まどか「ほむらちゃん!」

ほむら「あんたの思うとおりにはいかないわ、キュゥべえ!」

キュゥべえ「にゃ?」

ほむら「ちなみに、この作者、高校時代に理系だったけど、物理の成績はドベに近かったので、エントロピーについて、読者を説得できるだけの知識を持ち合わせてない。ゆえに、そこらへんは省略するわ!」

キュゥべえ「にゃ?」

まどか「ほむらちゃん!」

ほむら「あなたの望むようにはいかない。わたしは、まどかと一緒にいるためなら、悪魔にでもなるわ!」

キュゥべえ「にゃー」

さやか「マミさん、これ?」

マミ「まさか、ここまでの厨二病患者だったとは……」

さやか「マミさんを上回るほどの使い手だったということなんですか?」

マミ「ええ、残念ながら、私たちの芝居が、さらなる覚醒をもたらしたみたい」

さやか「どうなるんですか、これから」

マミ「思えば、暁美さんには、私を上回るセンスがあったのよ。もともと『円環の理』という概念を生み出したのは、あの子。私はその設定をもとに、決め台詞を作ったにすぎないのだから」

さやか「ということは、まだまだ大変なことになりそうなんですね」

さやか(ま、いいか。失恋の痛みから気をまぎらわせることができたら。それに、マミさんは良いひとだし、転校生だって、悪いヤツじゃないしなあ)

杏子「おい、マミ。ちゃんと参加したから、ケーキくれよ。約束したじゃん」

 

     *

 

さやか「転校生の交換日記はどう? あいかわらず?」

まどか「うん、……今度は、あたしが転校生という設定をしてくるようになった」

さやか「うーん、そうきたか。それより、あのビッチなカッコはなんなんだろうね」

まどか「あたしは、転校してきたときの三つ編みメガネのほむらちゃんでいてほしかったのに、何をまちがえてしまったんだろう」

さやか「なんか、自分が悪魔とか言いだしたみたいだし」

まどか「重いんだよね、ほむらちゃん」

さやか「よっぽど、まどかのこと、好きなんだよね」

まどか「でも、キスはこばんでくれたし」

さやか「そうだよね。ファーストキスはまだお預けなんだよね」

まどか「これで良かったのかなぁ」

さやか「まあ、すべてはあの転校生次第って話だしなあ」

杏子「お、こんなとこで、昼飯食べてたのか」

さやか「あんたねえ、たまには食い物以外の話をしろって」

杏子「いいじゃん、いいじゃん。それ、ちょうだいよ」

さやか「ちょっと、勝手にとるんじゃないって」

まどか「ははは」

 

                 【終わり】
 
【マジメな感想】
 
 一番おもしろかったのは、マミVSほむらと、そのあとの、さやか正論。
 どうせなら、杏子VSほむらとかもすればよかったのに。
 とにかく、裏の裏のそのまた裏をかこうとする、ほむらがうっとうしかった。策士策に溺れろって感じ。
 この映画を見て、ほむら人気は地の底に沈んだにちがいない。
 いっぽう評価をあげたであろうさやかも、所詮は女神まどか補正。
 本編ではまちがえた選択肢ばかりだったさやかが愛らしかったサヤカスキーとしては、この映画の選択肢をまちがえないさやかは仮説としてはアリだけど……という感じではないだろうか。
 結局、イヌカレー劇場と百合百合話がほとんどを占めていて、最初の世界の正体を見抜いてからは、サプライズもなく、面白い映画と評価できるものではないなあ、と。
 まあ、もともと完結してる物語に、無理やり続編を作っただけだから、仕方ないっちゃ仕方ない。