大阪に行くの巻(1)

 

 
 先週(2/23,34)に、後輩二人の結婚を祝する口実で開かれた大学サークルOB会に出るために、大阪に行ったので、その旅日記をば。
 

(1)「独身30代男性ロマンスカー二人旅」

 
 僕の住む神奈川県川崎市多摩区登戸から大阪に行くのは、いろんなルートがあるのだが、隣人の海さん(サークルの先輩。文無しだった俺を拾ってくれた)の「ロマンスカーに乗ろうぜ!」の提案に同意して、小田原駅からこだまで新幹線で行くことに。
 
 そのために、朝7:16発に乗ることになった。最寄り駅から小田原行きロマンスカーに乗るには、朝7時台しかないのだ(箱根観光客を対象としてるので)
 
 さて、小田急沿線住民と鉄ヲタしか知らないであろう「ロマンスカー」とは、小田急の全席指定特急のことである。僕はそれに乗るのは二度目だが(秩父に行ったときに乗った)、海さんは初体験であるらしい。まあ、独身30代男性二人旅にロマンスもクソもないのだが、こういう機会でなければ乗らないだろうということで。
 
「切符、先に買っとかないと売り切れますかねえ」「そんなことないだろう」
 
 そんなメールのやり取りをしながら、特に準備もせずに、7時5分に海さん宅集合。僕の部屋からは、徒歩20秒である。
 
 今回の幹事のNバタによれば「いいところ貸し切ってるんで、まともな格好で来てくださいねっ!」とのことなので、僕はクリーニングに出した背広を着ていくことにした。ちなみに、この背広も海さんからもらったものである(どんだけ乞食なんだよ、俺)。しかし、ネクタイがうまく結べなかったので、ノーネクタイで行くことにした。あと、ベルトがボロいのしかなかったので、ベルトなしである。冬になって、ガツガツ食べて太った僕には、ベルトなんて不必要だったし。
 
 しかし、海さんはいつものカジュアルな格好で登場。「正装とは(幹事Nバタは)言ってないじゃん」と開き直っていた。まあ、背広率は半々ぐらいだったんで、それほど浮いた格好ではなかった。だいたい、ノーネクタイ&ノーベルトの僕のほうが、ダメっぽかったし。
 
 あと、海さんは、よく服装に小ネタを仕込んできて、アドリブ力のない僕はそれにツッコまないままで終わることがよくあるのだが、今回も小道具をつけてきた。痴漢冤罪アイテムである「どこでも吊り輪」である。ベルトにかけて、痴漢呼ばわりされたときは、これを握って「痴漢してませんよっ!」と抗弁するためのアイテムらしい。愚かである。
 
 ちなみに、OB会では、ヤヤ受けであった。まあ、これは、妻子持ちの30代男性であるNバタ・ドーダイ君コンビに「海さんはいつもツンツンですけど、いつかデレるかもしれないと妄想すると、なんか萌えますよね」と、謎の評価をされている海さんだから許されること。僕がやったら「ツッコんであげないとかわいそう」という悲壮感がただようだろうが、海さんは平然な顔で仕込むから、外しても場の雰囲気は悪くならないのである。たいしたものだ。
 
 そんなこんなで、自宅から徒歩2分で向ヶ丘遊園駅に着く。さっそく、僕は旅に出る気合をアピールすべくSUICAに一万円チャージしたのだが、よく考えると、大阪の大動脈である市営地下鉄ではSUICAが使えないし、新幹線に乗るので別に切符を買ったから、まったく意味がなかった。こういう空回りぐらいもまた、俺である。
 
 そして、海さんにとっては人生初、僕にとっては二度目となるロマンスカーに搭乗したわけだが、さっそくノートパソコンを開く海さん。創作教室の作品の締め切りがせまっているらしい。人生初なんだから、車窓の景色を見ながらハシャいで欲しいのだが、海さんのデレを見ることは、隣人の僕をもってしても難しいのである。
 
 なお、ロマンスカーには、テーブルが窓際しかなかったので、海さんが窓側に座り、僕が通路側に座った。僕も、車窓の景色に浮かれたいわけではなく、楽したいからロマンスカーに乗ったわけだが、なんというか、年を取ったものだと思う。昔なら「新幹線なんて高いぜ、深夜バスで行くぜ」となっただろうけれど。
 
 そこで、僕は読書タイム。司馬遼太郎の短編集「王城の護衛者」(講談社文庫)に収録された「人斬り以蔵」を読破した。四次会のNバタ宅では「今さらシバリョーかよ」と揶揄されたが、今だからこそ司馬遼太郎である。読みやすく、面白く、説得力もある、まさに「大衆文学」の理想形であるシバリョー作品は、改めて読んで学ぶべきところがある。特に、この「王城の護衛者」に収録されている短編「英雄児」と、長編「峠」は、同じ河井継之助を主人公としながらも、その切り口は異なっていて、それを比較することは「物語とは何か?」を考える格好の素材になると思うのだ。いつかブログに書きたい。
 
 こうして、快適に小田原駅に到着。ひとまず、みどりの窓口で新幹線の「小田原→新大阪」間の切符を買ったあと、土産物店で「小田原かまぼこ」を海さんが購入。今回、泊まる予定のNバタ宅への土産であるらしい。こういう気配りができるところが、海さんである。僕はといえば「それなら、Nバタ宅で、酒のつまみに、かまぼこ食えるぜ、やったね!」と内心喜んだものだったが、結局、Nバタ宅で「小田原かまぼこ」を食べることはなかった。いったいどこに行ったんだ、俺のかまぼこ。
 
     (つづく)