大阪に行くの巻(2)

 

(2)「新幹線で、一人は小説を書き、一人はギャルゲを作った」

 
 小田原駅から乗ることができる新幹線は、たいてい各駅停車の自由席「こだま」である。僕にとっては、人生初「こだま」である。といっても、やってきたのは、数年前に乗ったときは「のぞみ」だったような、流線型の新幹線。全然「こだま」っぽくない。
 
 さっそく、三人乗りの座席を確保し、僕が窓際に、海さんが通路側に座る。間には荷物を置いた。ロマンスカーと違って、新幹線には各席にテーブルがあるのだ。(いや、実はロマンスカーにもあったのかもしれないけど)
 
 そして、僕もノーパソを開く。中古屋で三万円で買ったThinkPadである。あの、赤いボタンが最高なのである。
 
 そこで、僕はこのブログで「盆休みぐらいに公開!」と言っておきながら、いまだに完成していないギャルゲ制作にいそしんだのだ(ギャルゲといっても、実は、ヒロインを攻略するようなものじゃないんだけど)。
 
 新幹線でギャルゲ作るなよ、と怒られるかもしれないが、少なくとも、僕の汚れた部屋よりは快適なのだ。飽きたら車窓の景色を楽しめるし。
 
 ひそかに、このOB会にさきがけてギャルゲを完成し、公開して、そのネタで盛り上げようという目論見があったのだが、残念ながら無理であった。だいたい、作者の僕が満足できない出来(演出とかで)のものを見せて「面白いだろ?」と感想を求めるなんてバカげた真似はしたくないし。ていうか、普通、身内がギャルゲを作った、というと引くだろうし。後輩の結婚を祝う席で、ギャルゲの感想を求めるとか、愚かとしかいいようがないし。
 
 なお、海さんのブログによれば、集中して小説が書けていたらしい。幸いである。おそらく、関ヶ原付近で降っていた雪にも、気づかなかったことであろう。
 
 なお、僕の最近の作業用BGMはエンヤである。今さらエンヤである。エンヤ聴きながら新幹線でギャルゲ制作である。
 
 そんな僕の集中力が切れたのは、空腹のせいだ。実は、出発前に、近所のファミマでハンバーガー二つを買って食べた。この日の六時半の海さんからのモーニングコールに出なかったのは、寝ていたからではなくて、朝食を買いに行っていたのだ。毎朝六時起きの僕をなめてはいけない。
 
 そんな、マックよりもはるかにおいしいハンバーガー(高カロリー)を食べてきたのだが、残念ながら昼まで持たなかったようだ。せっかくなので、車内販売で買おうと思ったが、こだまには車内販売なんて来ないのである。
 
 なお、ロマンスカーには車内販売もきた。ひそかに買いたかったのだが、コミュ障の僕には無理だった。せっかくロマンスカーに乗ったのだから、何か買っておけば良かったと思う。どうせ、高くてマズいんだろうけれど、今でも後悔している。
 
 そんなわけで、小田原駅で買ったNバタに捧げる土産のかまぼこに視線をこらしながら、新大阪駅までガマンすることにした。一人旅だったら、間違いなく食べていたことであろう。ていうか、海さんのものなのに、自分のものと思っているところがダメダメである。
 
 それにしても、各駅停車の新幹線は、速いんだけど快適とは言えない。静岡を脱出するだけでも長い。そして、トドメの岐阜羽島米原はネタになるが(青春18きっぷでお世話になったし)、岐阜羽島はネタにもならない。
 
 よし、帰りはのぞみに乗って新横浜駅経由で帰ろうと、僕は決意する。乗換が少ないことを至上目的とする海さんは、帰りも「新幹線で小田原駅小田急」ルートにするだろうから、別々に帰るということだ。まあ、往復券を買わなかったのも、そういうことを見こしてのものだったんだけど。(海さんは買いたがってたと思う)
 
 (つづく)