【ニコ動生放送】あかつき(ミク搭載)、イカロス君を載せたH2Aロケット、打ち上げ成功!

 
※5/24 ニコニコ生放送の定員についての虚偽の記載を修正
  
 
 2010年5月21日6時58分、つまり本日早朝に、火星探査機「あかつき」(ミク搭載)、太陽帆(ソーラーセイル)実証機「イカロス」を乗せた、H2Aロケット17号機が打上げられた。
 
 ニコニコ生放送では、この模様を一時間以上にわたって配信。
 入場者数は、打上げ10分前に定員一万人をオーバーするほどの反響を見せた。
 

↑打上げ時のニコニコ生放送の様子
 早朝というのに、累計入場者数は1万3千人を突破していた
 
 
 TVでは、当初予定されていた5月18日から打上げ延期したためか、NHK一局のみが生放送。
 しかも、10分足らずの短い内容にとどまった。
 
 JAXA(宇宙航空研究開発機構)では、公式サイトでライブ中継を動画配信。
 その映像は、公式サイトのほか、以下のサイトで動画配信された。
 

 
 
 今回の打上げロケット「H2A」は、これまで16回中15回の打上げに成功している。
 そのために「成功間違いなし」と思われていた打上げではあった。
 しかし、日本のロケット打上げ成功率は、世界的に見れば、決して高いものではない。
 

 
 特に、EUのロケット「アリアン5」、中国のロケット「長征3号」は、95%以上の成功率を誇っている。
 打上げ回数の限られた、日本のロケット「H2A」は、2003年のたった一度の失敗のために、あと数年かけて、打上げをすべて成功させなければ、95%に達することはできないのだ。
 
 宇宙ビジネスの世界では「成功率」がすべてである。
 そして、ロケット技術は軍事技術に転用しやすいことから、各国が大幅な予算をさいているのに比べて、日本はそうではない。
 日本のJAXAは、ロケット技術の開発費も、打上げ回数も限られている状況で、これら他国と競争しなければならないのだ。
 
 
 今回の打上げでは、金星探査機「あかつき」の愛称が、あらかじめ公表されていた。
 これは、前例のないことで、それまでの、火星探査機「のぞみ」や小惑星探査機「はやぶさ」は、打上げ成功後に、その愛称が公表されたのだ。
 しかし、それでは、人々に「あかつき」の認知度を徹底させることができない。
 JAXAは「失敗」という可能性を否定するかのように、打上げ前の愛称公表に踏み切ったのだ。
 
 おりしも、今年2010年4月の事業仕分け第二弾にて、広報施設「JAXAi」は「廃止」判決が下されている。
 事業仕分け対象となった「JAXA」の開発費は現状維持であったものの、世間の宇宙開発への風当たりは強い。
 
 今回の打上げは絶対に成功させなければならなかった。
 多くの人々に「成功して当たり前」と思われていた今回の打上げには、このようなドラマがあったのだ。
 
 

↑金星探査機「あかつき」(イメージ画像)
 
 
 さて、本日打上げられた「H2A17号機」には、金星探査機「あかつき」のほか、5つの小型副衛星などが搭載されている。
 

 
 その中で、世界中の注目を浴びているのが、ソーラーセイル実証機「イカロス」である。
 

↑太陽帆で進む宇宙ヨット「イカロス」
 
 この「ソーラーセイル」とは、太陽などの恒星から放たれる光やイオンを推進力にする「帆」のこと。
 わかりやすくいえば、太陽からの風を受けて進む帆船である。
 つまり、燃料やブースターなしに推進することができるのが、この「イカロス」なのだ。
 
 米国は2001年と2005年に「コスモス」というソーラーセイル型宇宙船の打上げを試みたものの、いずれも失敗に終わっている。
 そのため、今回の「イカロス」が運用に成功すれば、人類初のこととなるのだ。
 
 SFファンにとって「太陽帆船」は、まさに夢の技術であった。
 これが実用化されれば、宇宙船はこれまでより安価かつローリスクで運営できる。
 現実的に宇宙船の惑星間移動の可能性が見えてくる。
 そんな素晴らしい技術を、日本が初めて実現しようとしているのだ。
 
 しかし、個人的には、そんな夢の技術の結晶である「イカロス」よりも、金星探査機「はやぶさ」への思い入れの方が強い。
 それは、失敗に終わった火星探査機「のぞみ」、今も満身創痍で地球の帰還を目指す小惑星探査機「はやぶさ」という、「あかつき」の先輩のことを知っているからだろう。
 
探査機「のぞみ」 - ニコニコ大百科
探査機「はやぶさ」 - ニコニコ大百科
 
 日本人の期待を一身に浴びた、国産火星探査機「のぞみ」は、五年の航行ののち、停波措置がとられた。
 すべての機能が停止した「のぞみ」は、今では、太陽のまわりを周回する「人工惑星」の一つになってしまっている。
 
 小惑星探査機「はやぶさ」は、直径500メートルの小惑星イトカワ」に、二度の着陸および離陸に成功した(人類初)
 その試料を採取して、今年2010年6月13日、地球にその成果である「再突入カプセル」を投下ののち、大気圏で焼失する予定である。
 もし、小惑星の岩石を一粒でも持って帰ることができたなら、これまで(地球と)月以外の天体から試料を採取できなかった人類にとって、史上初の快挙となる。
 
 「はやぶさ」は数多くのトラブルを克服してきた。
 特筆すべきは、一ヶ月以上の通信途絶、バッテリー残量ゼロ、という絶望的な状況からの回復である。
 それらの技術は、もちろん、本日、宇宙に飛び立った、ソーラーセイル実証機「イカロス」に引き継がれている。
 
 ロケット成功率は決して高くない日本だが、これら探査機の精度は、他国を圧倒する技術を持つ。
 その後継である金星探査機「あかつき」が、果たして、その困難な任務をまっとうすることができるか。
 僕は数年がかりでそのドラマを見守りたいと思う。
 
 
 それでは、本日のニコニコ生放送の様子をキャプチャー画像でお届けしよう。
 

↑6時30分からの放送開始直後には、すでに6000人の視聴者が集まっていた
 

JAXAのアイドル「原さん」が肩につけているのは「あかつき」君。
(あくまでも、JAXAは「あかつき」が男の子であることを主張する)
 なお、右のタブはtwitterとの連動で、他者のツイートを見ることができる。
 僕が自分のtwitterを書きこんだのもここから。
 

↑6時45分には、累計入場者数は、ついに定員の一万人を突破。
 「ニコニコ生放送」では、接続数が1万ユーザをこえると、該当番組を見ることができなくなる。
(それでも、最終的に、累計入場者数は19,893人に達した)
 

↑発射五分前。カウントダウンが始まり、閲覧者のコメントにも熱がこもる。
 もちろん、カウントは日本語である。
 

↑そして、打上げ!!
 

↑喜びにわく視聴者たち。
 しかし、それは、カウントアップの始まりを意味していた。
 そう、この打上げは、数年がかりの長い旅路のスタートにすぎないのだ。
 

↑打上げ後の様子が見られるのも、ライブ中継ならでは。
 順調に進む「H2A」ロケットの様子が映し出される。
 

↑そして、「あかつき」分離に成功!
 その映像の美しさに感動して、思わず、決定的瞬間をキャプチャーし忘れた僕。
 

↑仕方ないので、JAXA公式サイトから無断転載。
 打上げよりも、この映像をリアルタイムで見られたことが、一番興奮した。
 

↑つづいて、「イカロス」の分離にも成功!
 米国のNASAが二回も失敗したミッションを、いともたやすくなしとげたJAXAの偉大さに感服。
 
 
 今後、「あかつき」と「イカロス」の様子は、Twitterで即時的に知ることができる。
 興味がある人は、ぜひともフォローしてみてほしい。
 
イカロス君のツイッター
JAXAあかつきチームのツイッター
 
 限られた予算で、人類初の快挙を次々となしとげるJAXAは、知れば知るほど、そのスゴさに気づく。
 
 そして、7年前に打上げられた、小惑星探査機「はやぶさ」は、本当に信じがたいほどの絶望的な状況を乗りこえて、満身創痍になりながらも、故郷の地球に近づいている。
 その「再突入カプセル」投下予定の6月13日には、ふたたび大きなニュースになるだろう。
 
 ぜひとも、そのときまでに「はやぶさ」のストーリーを知っておいてほしい。
 フィクション作品で得ることのできない、壮大なロマンと感動が、そこにある。
 
【関連エントリ】
 
初音ミク、金星へ――「あかつき」、「はやぶさ」、宇宙のロマン - ニコニコ技術部員たち(7)
 小惑星探査機「はやぶさ」、金星探査機「あかつき」の関連動画や、「ミク宇宙進出計画」について紹介しています
 
 
【関連リンク】
フォトリポート:初音ミクついに宇宙へ! 「あかつき」打ち上げ成功 - ITmedia NEWS
 ニコニコ技術部員「超電磁P」による現地打上げリポート。いい写真ですね。僕も一度は自分の目で見たいです。