登戸ブルース(15) ―銭湯の日

 

 タオル一枚250円とぼったくられたとしても、僕はまた、生田温泉に向かう。「決して、タオルのことは許したんじゃないからねっ」とツンデレ気味につぶやきながら、入ってみると「携帯ばんそうこう」なるものを渡された。
 
 どうやら、今日は「銭湯の日」みたいである。10月10日、1010、千と十(とお)で、確かに「銭湯の日」だ。
 
 この「携帯ばんそうこう」は、エイトバン6枚と、メンボー10枚が入った紙製の箱で、「神奈川県浴場組合」に属している、すべての銭湯で共通のものである。
 
10月10日は銭湯の日 ―神奈川県浴場組合
 
 こちらの特設ページで告知されていたように、今日は「ハーブ湯」であった。大浴槽には、白いナイロン袋が入っていて、そこからドクドクと何かが出ていて、それがお湯を変色させていた。
 
 こんな企画があるから、さぞ客が集まったのだろう、と思われるかもしれないが、いつもと客足は変わらない。中に入っていたのは、9時から10時で、3〜5人ぐらいであった。
 
 せっかくなので、ハーブ湯につかってみたものの、どうも落ち着かない。だいたい、この白い袋に入っているのが、何なのか知らせてくれていないのだ。
 
 温泉に入ると、僕はその効能や成分を見ながら、それっぽくうなずくことで、体に良い効能が出てくると信じる程度の男だが、こう、白いナイロン袋を放りこまれただけだと、とてもやりきれない気持ちになる。
 

 そんなわけで、銭湯の日とはいえ、あまり得した気分にならなかった僕である。携帯ばんそうこうセットは、まあ、いつか役立つときがあるかもしれないけど。
 
 帰ってからそれを先輩に見せると「あー、俺、前にそれもらったよ」と、つれない返事。どうやら、パッケージも変わっていないらしい。
 
 もしかすると、http://k-o-i.jp/news/1010.htmlというURLからして、ウェブサイトの特設ページだって、毎年共通であるのかもしれない。何というやる気のなさであろうか。
 
 果たして、こんな企画に意味はあったのだろうか。そんな疑問を抱かずをえない、中途半端な「銭湯の日」のイベントであった。