北朝鮮の行政力は末期症状か? - 臨津江ダムをめぐるニュース
世の中の不幸とは、えてして悪意から起こるものではない。
殺意に満ちた犯罪よりも、過失による事故のほうがずっと多い。
・北朝鮮、ダム放流認める=「犠牲者言及なく遺憾」−韓国 - 時事通信
5日夜から6日未明に、北朝鮮にある臨津江のダムで予告なく放流がなされた。
それにより、臨津江の水位が上昇。下流の韓国側では水死者が出る惨事となった。
・韓国大統領への非難中断=対話路線を反映か−北朝鮮
おりしも、8月23日以降、北朝鮮は韓国への非難を転換させ、対話路線に入ろうとしていたときである。
・韓国・臨津江の増水事故、北朝鮮がダムの放流認める - ロイター
北朝鮮政府は「今後は下流での事故を防ぐために事前に放流を通知する」としているらしいが、韓国民の怒りはとても収まらないようだ。
韓国民は、これを北朝鮮の「挑発行為」と感じているらしい。
・ダム放流で食い違う南北の主張 韓国で北への反発強まる - 産経新聞
専門家らの間では、ダム自体に原因があったとする見方が多い。
ダムは今年2月に完工したばかりで、亀裂や稼働中の事故などで補修・整備を必要としたため、緊急放流したのではないかと推測されている。
僕はこの事件を、北朝鮮の人材管理の至らなさと見る。
この時期に、対話路線をしながらダムを無断放流するという、握手をしながらテーブルの下でナイフを光らせる行為を、北朝鮮政府が意図しているとは思えない。
そのような余裕は今の北朝鮮にはないだろう。
原因は、北朝鮮側の技術不足と責任者の認識不足に尽きるのではないか。
おそらく、ダムの責任者は、北朝鮮の中央政府に気づかれないように緊急放流したかったのだろう。
それは、今年2月に完成したばかりのダムが欠陥品であることを示すからだ。
それが明らかになれば、多くの者が処罰されることになる。
その緊急放流により、下流の韓国側で犠牲者が出るという外交問題にまで、その責任者は考えが至らなかったのだ。
もし、この推測があたっているのならば、そのような人物をダムの責任者にすえる、北朝鮮の行政力は、末期症状をむかえていると思う。
北朝鮮という国家が、これまでの姿勢からして、謝罪をすることはないだろう。
こうして、南北の溝は以前よりも深まることになるだろう。
・北、攻撃するなら日本 - 時事通信
北朝鮮では、金正日総書記が重病により、指導力を弱めるとともに、若手将校が権力をにぎっているようだ。
彼らは朝鮮戦争の実態を直視せず、みずからの貧困の原因を他国(例えば日本)に転嫁している。
そんな彼らの虚飾のナショナリズムの横行が、予期せぬ軍事行動を起こさないとはかぎらない。
韓国側にも増水を警報するシステムが作動しなかったなどの問題があるが、この事件に対する北朝鮮の対応の拙さから、政治情勢の不安定さを見る。
その不平不満を他国に向ける可能性は否定できない。不条理きわまりない話だが、日本は北朝鮮に対する警戒をゆるめてはならないと思う。
自民党による戦後体制は、朝鮮半島の有事にそなえてきた。
日本と韓国には米国軍が駐屯している。韓国は大田協定のために、米国軍(正確には国連軍)の許可なしに軍事行動を起こすことはできない。
こうして、日本の平和は保たれている。それは最善の選択ではなかったとはいえ、コスト面を考えるならば、悪くない選択であったと思う。
東アジアは世界有数の危険地帯である。分断された半島と軍事大国である中国に対して、丸腰でのぞむことは不可能だ。
戦争嫌いな人でも、日本の平和が第9条ではなく、日米安保によって維持されたことぐらいは認めなければならないと思う。
そのうえで、今後も「不戦」を貫くための明確なヴィジョンを打ち出すべきだ。