米州機構の復帰を拒否したカストロ政権の正義とは?

 
CNN.co.jp:キューバ、米州機構への復帰を拒否 総会で追放決議無効も
 
 なぜ、フィデル・カストロは、OAS(米州機構)への無条件復帰を拒否し、キューバ政府もそれに従ったのか?
 
 OASとキューバといえば、1961年にJ・F・ケネディ米国大統領が打ち出した「進歩のための同盟」が、まず連想される。この「ラテンアメリカの民主国家に経済援助を行う」という米国の政策は、キューバの孤立化、すなわち、ラテンアメリカでの新たな社会主義国家の台頭を防ぐものであった。
 
(1961年に行われたOASの経済社会理事会にて、産業大臣であったチェ・ゲバラは、経済閣僚として参加し、「進歩のための同盟」を真っ向から批判している。それらは「ゲバラ 世界を語る (中公文庫)」で文庫化されているので、興味がある人は読んでみると良い)
 
 しかし、そんな過去の因縁はさておき、第三者の視点から見れば、OASにキューバが復帰しない理由はないと思われる。
 
 すでに、ラ米・カリブ首脳会議という、米国をのぞいた共同体が創設されているとはいえ、中南米における米国の影響力は、今もなお絶大である。
 
 この復帰拒否は、キューバの除名を解除するために尽力した中南米諸国の労苦を裏切っているとは言えないだろうか?
 
 もちろん、フィデル・カストロが、この復帰を拒否する意向を示すことは間違いないと、識者には見られていた。カストロ政権は米国を敵視することにより、国内の経済失策から国民の目を背けさせ続けてきた。フィデル・カストロの語る「キューバ革命」において「キューバは米国の犠牲者であり続けていた」のである。
 
 明和産業への代金支払い不能問題など、国際信用を損なう行為をキューバは続けてきたが、国際世論がキューバを支持しているのは「米国の対キューバ政策への批判」のためである。
 
 オバマ大統領は、これまで暗躍してきた反カストロ在米キューバ組織(CANF)の支持を受けずに、フロリダ州で勝利したという実績がある。オバマには、キューバへの強硬外交路線を転換させることができる権威がある。
 
 キューバ国民にとって、フィデル・カストロは「独裁者」である以前に「どんな困難なときにも国民の前に立ち続けたキューバの父」である。米国がカストロを批判すればするほど、キューバ国民は結束してきた。
 
 そんなフィデル・カストロの道徳的権威はなお絶大であるが、それがゆえに、何度もキューバの経済の開放は妨げられた。もし、カストロ政権に「米国の不当な仕打ちの犠牲者」という弁解がなりたたないとしたら、その経済政策は、もっと非難されていただろう。
 
 1959年にキューバ革命が成立して、もう50年にもなる。未だにキューバでは、フィデル・カストロの意向が国策を左右するという異常な国家である。それが許されたのは、フィデル・カストロの「正義」が通用したからである。
 
 フィデル・カストロは、良くも悪くも「正義」の政治家である。反カストロ組織の影響を受けないオバマ政権が目指すべきは、その正義を段階的に崩していくことだろう。
 
 フィデル・カストロは、正義のために経済を犠牲し続けてきた。だからこそ、彼が生きているうちに、国連総会で17年連続で採択されている「キューバへの経済封鎖解除と三法廃止を求める決議」を、米国に受け入れてもらいたい。オバマ政権ならば、それができるはずだ。
 
 そのとき、フィデル・カストロがどんなコメントを出すか。そして、キューバがどのように変革していくのか。
 
 「キューバ革命」に興味を持った者の一人として、これからも、オバマ政権の対キューバ政策を注視していきたい。