井の頭公園の桜と、はなまるうどん


 今日は休みなので、井の頭公園に桜を見に行った。家族連れが青シートに座って弁当を食べたり、写真を撮ったりして騒いでいる。池にはボートがあふれ、あわや水難事故を起こしそうな勢いである。
 桜を愛する心が日本人の美意識の豊かな証拠という人は多いが、ただ「春の訪れ」を祝っているだけではないか。「花見」とは「祭り」の一つにすぎない。だいたい、ソメイヨシノで美意識や風流を語るというのがおこがましい。本気で「花見」をしたいなら、山に行くべきである。シダレザクラを見ずに、桜を語ることなかれだ。そんなことを思いながら、にぎわう井の頭公園をぶらぶら歩く。
 本屋などをめぐったあと、「はなまるうどん」に入る。東京に友達がいない僕にとって、早い・安い・うまいの「はなまるうどん」率はかなり高い。
 僕が注文するのは、だいたい次のように固定している。
「かけ小+冷しょうゆ小+げそ天+α」
 こうすると外れがない。
 まず、かけ小にげそ天をのせて食べる。天かす以外はかけない。中や大だと食べている途中でのびるので、小を頼むのが基本である。もし、それでも足りなかったら、また、小を頼めばいいだけの話だ。
 しかし、さぬきうどんといえば「しょうゆうどん」である。うどんに大根おろしとネギをのせて、しょう油をかけただけのシンプルなうどんである。僕の場合は天かすを少々加える。このしょうゆうどんこそ、さぬきうどんの醍醐味であり、関東のうどん文化では達し得なかった叡智がひめられているのだが、残念ながら、チェーン店では、しょうゆうどんの出来はマチマチである。冷たくビシッとすることにこだわるあまり、コシ以外のものがない麺になることが少なくない。だが、小ぐらいだと最後まで飽きずに食べきることができる。もちろん、温かいしょうゆは、しょうゆうどんとは認めない。
 そんなふうなことを偉そうに考えながら、一人でずるずるとうどんを食べる。ほかの人からすれば「心の貧しい人だな」なんて思われるかもしれないが、僕はこういう休日の過ごし方が好きである。