【感想まとめ】2014年2月に読んだ本の感想まとめ
日曜の新聞に掲載されている書評を書き写してみると、だいたい700〜800文字程度である。
文字数が少ないにこしたことはない。最後まで読む人が増えるし、誤字脱字のチェックの労力も減る。
書評ブログを目指すならば、一記事1,000文字以内という制限字数を設けるべきであろう。
その試みを、僕がブログで実践しないのは、うまくまとめるよりも、納得のいくものが書きたいからだ。
だから、このブログで公開しているのは、書評ではなく、読書備忘録にすぎない。
参考に、各感想記事の全角文字数を併記しておく。
1.村上春樹『海辺のカフカ』(評価・A)
読みながら貼った付箋の数はダントツのトップ。
背景となる作品は、フランツ・カフカだけでなく、ギリシャ悲劇・『源氏物語』・『雨月物語』など幅広い。
個人的には「大島さん」の言葉がもっとも気に入った。シューベルトや完全さについて語るシーンとか。
「佐伯さん」をめぐる超展開には、正直ついていかなかったが、読書の楽しみを味わえた実り多き小説であった。
⇒http://d.hatena.ne.jp/esu-kei/20140207/p1 《全角約3,000字》
2.伊坂幸太郎『モダンタイムス』(評価・B−)
僕が酷評した同作者『魔王』の続編で、漫画雑誌に連載された異色作。
理不尽な上司「加藤課長」の存在感が光る一方で、「岡本猛」が味方についた必然性が最後までわからない。
仕事の名のもとに暴力装置となる人間を描く、というテーマだが、物語の展開の面白さを重視したためか、迫真性に欠ける。
近未来を描いたSFとしては物足りない内容。
⇒http://d.hatena.ne.jp/esu-kei/20140208/p1 《全角約2,000字》
3.三上延『ビブリア古書堂の事件手帖2』(評価・B)
古本を題材にした古書ミステリーの第二弾。
一作目を読んで僕が指摘した「舞台の鎌倉という街の描写が少ない」「伏線が明かされる鮮やかさが目立ちすぎる」という欠点が、この二作目で解消されている。
しかし、すらすら読めたものの、感想を書くとなると、これほど難しい本はなかった。その理由を、以降の続編で読み解きたい。
⇒http://d.hatena.ne.jp/esu-kei/20140209/p1 《全角約650字》
4.長谷川櫂『古池に蛙は飛びこんだか』(評価・A−)
松尾芭蕉の「古池や蛙飛びこむ水のおと」という俳句は、古池を見てつくったものではない。
その成立過程から、芭蕉の真髄である、客観(観察)と主観(感想)が溶け合った俳句の魅力を語った本。
僕のような一般人には敷居が高い専門的な内容だったが、読みごたえのある本である。
⇒http://d.hatena.ne.jp/esu-kei/20140220/p1 《全角約4,700字》
5.野崎まど『know』(評価・C)
情報格差が制度化された近未来を描いたSF。
感情移入しにくい主人公による一人称小説で、しかも、主人公は物語の主体者ではない。
情報先進都市となった古都・京都を舞台にした情報バトルは新鮮だったが、ラストバトルは意味不明な代物。
映画一本ほどの分量だが、楽しめたのは世界設定ぐらいだった。
⇒http://d.hatena.ne.jp/esu-kei/20140221/p1 《全角約2,900字》
6.石川博品『ヴァンパイア・サマータイム』(評価・B)
人間と吸血鬼が共存する現代社会が舞台。
日光を浴びると灰になる吸血鬼が人口の半数を占めている社会とはどういうものか。作者は丁寧にその世界を構築している。
ところが、本筋は高校生のういういしい初恋模様を描いている。人間と吸血鬼にする必要性はあったかは大いに疑問。
ただし、吸血鬼にまったく興味がない僕も、美少女吸血鬼と恋をしてみたいと思わせる力があった。
⇒http://d.hatena.ne.jp/esu-kei/20140222/p1 《全角約2,100字》
7.虎虎『中二病でも恋がしたい!』(評価・C)
アニメ化されたライトノベル。アニメ二期のつまらなさが不可解ゆえに読んでみた。
アニメとはおおいに異なる内容だが、全12話という1クールの体裁をとっている。作者は真面目な人なのだろう。
文体や完成度に目を見張るところはなく、アニメ化されたのは「幸運」というほかない。ただ、京アニ関係者からすれば「中二病キャラのアニメを作りたい!」という願望に合致しただけである。
流行をキャッチする能力を、才能と呼ぶべきか、運と呼ぶべきかはわからない。ただ、このような成功例は、憧れたところで真似をするものではないと僕は考えている。
⇒http://d.hatena.ne.jp/esu-kei/20140223/p1 《全角約2,300字》
8.中島京子『小さいおうち』(評価・A+)
山田洋次監督の映画を見たあとで読んだ。
今作は戦中に《女中》をしていた老女の回想記という体裁をとっている。その市井の視点から描かれた昭和十年代の《東京モダン》は従来の小説には見られないダイナミズムがあった。
作者は《女中》を読者によみがえらせるために、過去の文学作品をヒントにしたようだ。かつての名作を読むことは懐古主義ではなく、新しい物語を生み出す可能性があることを教えてくれる格好の本であった。
⇒http://d.hatena.ne.jp/esu-kei/20140305/p1 《全角約5,000字》
9.レイ・ブラッドベリ『火星年代記』(評価・A)
ショートショート作家として有名な星新一が、小説を書こうと思い立ったのは、この本を読んだことがきっかけであるという。
このエピソードに勝る紹介は、ちょっと思いつかない。
SFは《サイエンス・フィクション》の略語だといわれるが、今作を読むうえで科学知識はほとんど必要ない。だからSF(スペース・ファンタジー)の傑作と紹介したほうが良いと考える。
《未知との遭遇》と《世界の終わり》という、ファンタジーには欠かせない二つの要素を、それぞれの短編で描いた今作は、読者の想像力を大いに刺激するだろう。
日本のサブカルチャーが今作から受けた影響は測りしれないと思われる。
⇒http://d.hatena.ne.jp/esu-kei/20140306/p1 《全角約3,700字》
10.虎虎『中二病でも濃いがしたい! 2』(評価・D)
アニメ二期で、第9話まで影がうすかった七宮なんとかさんが、原作小説ではどう書かれているのか。
それを知りたいあまり、「同一作者の作品は、五冊の間隔をあけて読む」という自分ルールを無視して読んだ。
結果は「失望まじりの納得」である。
⇒http://d.hatena.ne.jp/esu-kei/20140307/p1 《全角約3,200字》
11.J・P・トゥーサン『浴室』 (評価・B)
二月と三月は仕事が忙しく、なかなか休みがとれない。
だから、ページ数の少ない本を読んで冊数を稼ごうと考えたのだが、その浅ましさをあざ笑うかのような意味不明な物語。
何度読むのをあきらめようとしたかわからない。
しかし、ふと歯車がかみ合ったときに読むと、すらすら頭に入ってくる。
浴室を出たり入ったりするだけの男の物語を読んで、僕は不思議な癒し効果を感じることができたのだ。
なんでこんな作品を書いたのか、と作者に手紙を送りたくなるが、その理由を聞いても、この奇妙な存在感の謎は解けないだろう。たまには、異なる読書体験をしてみたい人に。
⇒http://d.hatena.ne.jp/esu-kei/20140308/p1 《全角約2,000字》
1月と同じ11作品である。この調子でいけば、年間120冊程度になりそうだ。
読書を趣味と公言するには物足りない数字だが、何も読まないよりはマシであろう。
あくまでも、自分が楽しむことを優先して、今後も感想を書いていきたい。
【関連記事】
・2014年1月に読んだ本まとめ
http://d.hatena.ne.jp/esu-kei/20140131/p1