ユニコーン新曲「WAO!」を聴く
- アーティスト: ユニコーン,阿部義晴
- 出版社/メーカー: キューンレコード
- 発売日: 2009/02/04
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すぐ消されると思うが、ユニコーンの新曲が、Youtubeやニコニコ動画にあがっている。それを見て、ニヤニヤしているのは僕だけではあるまい。
・ユニコーン 「WAO!」
作詞作曲:阿部義晴
ボーカル:阿部義晴
この「WAO!」、シンプルなロックかと思いきや、ブリッジ(大サビ)は、まさにユニコーン節。
阿部からすれば、この曲はユニコーンとして出したかっただろうし、この曲のためにユニコーンを再結成させたといっても言いすぎではないと思う。
ユニコーンを「タミオのバンド」としか思ってない人は、阿部メインであることに驚くだろうし、それでいて、ユニコーンらしさがあふれていることに満足するだろう。
ニコニコ動画では「タミオの無駄づかい」とコメントがついていたが、うれしそうに箱(?)を叩くタミオの姿が印象的である。ただ、EBIが髪を伸ばしたので、手島との区別がつきにくく、二人が地味になっているのが困ったところ。
(もちろん、アルバムでは、五者五様の魅力を出してくれるに違いないが)
そんな新曲のメインを張る阿部義晴は、2nd Albumからユニコーンに加入。
ユニコーンのプロデューサー笹路正徳の弟子だった彼が加わったことで、レコーディングのみならず、ライブパフォーマンスでのユニコーンの音楽性はぐっと広がった。
しかし、ファンの中には、途中加入の阿部のアンチが少なからずいるのである。
もともと、広島で結成されたユニコーン。ゆえにメンバーは全員広島人だった。
ところが、1st Alubm「Boom」の発表後、キーボードの向井美音里が、健康上の理由により脱退。
(その後、メンバーの堀内一史(EBI)と結婚している)
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1st Albumのジャケットをご覧になれば、下のほうに、奥田タミオと向井美音里が映っているのがわかるだろう。それがレコード会社の戦略であったのだ。
そんな紅一点のメンバーが、他のメンバーと結婚して表舞台から消え去ったのだ。
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ちなみに、2nd Albumのジャケットがこれ。EBIとタミオを前面に出して、すでにレコーディングに加わっていた阿部の姿はない。
(いっぽうで、PVでは当然のように阿部が出てくる)
こうして考えてみると、人を食ったような3rd Album「服部」のジャケットも納得できるのではないか。
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このアルバムから、彼らはそれぞれ作詞作曲し、ボーカルを取る、というバンドならではの多様性を追求するようになる。レコード会社のお偉いさんが指示する「タミオをピックアップしろ」という戦略を無視して、どんどん音楽の可能性を追求していくのである。
閑話休題。やがて、ユニコーンサウンドの要となった阿部のおかげで、「ライブでは実現できないだろう」曲も、どんどん披露できるようになったユニコーンだが、ファンというのは「脱退」や「途中加入」というものに敏感だ。
例えば、初期の名曲「メイビーブルー」
良い曲である。しかし、この曲の路線を突き進んでいたのならば、人々に支持されていたバンドとなっていただろうか。
この曲を歌い続けていれば、タミオは女の子から黄色い声援を浴び続けることができただろう。しかし、タミオはそれを良しとしなかった。さらに「面白いサウンドを作る」ために、阿部の加入はユニコーンにとって避けられないものだった。
そんな阿部の実力は、メンバーなら誰もが知っている。レコーディングで阿部が果たしてきた役割は非常に大きい。しかし、ファンはそんなことには気づかない。「途中加入」という言葉だけがどんどん一人歩きしていく。
そして、阿部本人にとっても、それが知らず知らずのうちにプレッシャーになっていたのではないか。スタッフやメンバーからすれば、ユニコーンに阿部は欠かせない存在だが、阿部のいないユニコーンが存在していたことも事実なのだ。そのために、阿部は気張っていたように感じる。
実は、今回の再結成の前に、リーダーの川西、奥田、そして阿部の三人で、とあるイベントでユニコーンの曲を披露したことがある。
それは阿部の40歳を記念したイベント、題して「阿部義晴音楽祭〜仲間とノリノリ40祭」のことであった。
・スターな男〜忍者ロック (2006年)
⇒http://jp.youtube.com/watch?v=j9qvlqKTzqI
ソロでも成功している奥田民生にとって、ユニコーンに戻ったところで「メイビーブルーをやってくれ」という声にウンザリするだけだろう。しかし、友人阿部の頼みという形であれば、再び、ユニコーンになることに抵抗なかったのではないか。
新曲「WAO!」を聴くと、阿部のボーカルがうまくなっていることに驚くが、ソロになったからも阿部は研鑽を続けてきたのだ。氣志團などのプロデューサー業でも成功している。
「ユニコーン再結成」が、どういう経路でなされたのか詳しいことは知らないが、阿部の役割は決して小さなものではなかっただろう。
そう、再結成のユニコーンにおいて、阿部は「途中加入のメンバー」ではなくなったわけだ。
バンドを解散してからも、彼らは音楽活動を続け、それぞれに成長して戻ってきたのである。以前と同じことを繰り返すだけではない。ソロ時代で積んだ経験を、ユニコーンというバンドに発散させる。そんな彼らの方向性が「WAO!」には示されている。
もちろん、ユニコーンはシングルアーティストではない。新しいアルバム「シャンブル」は当然のように15曲を収録。これは、ユニコーンとしては標準的な楽曲数である。
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このニューアルバムも、アルバムだからこそのバラエティ豊かな音楽性が詰まっていることは間違いない。
「再結成ブームに乗っただけ」というネガティブな意見を軽く吹き飛ばすこの新曲。骨太なユニコーンサウンドが戻ってきたことに、胸を躍らせているのは僕だけではあるまい。