All your base are belong to usの何が面白いのか?

反捕鯨団体シーシェパードのウェブサイトがハッキングされる
痛いニュース(ノ∀`)

上の記事で僕の知らないフレーズがあった。All your base are belong to us。日本のゲームが出典の、英語誤用の有名例らしい。Wikipediaによると、YouTubeのメンテナンス画面で使われたこともあるぐらい、ポピュラーなジョークだそうだ。
All your base are belong to us - Wikipedia

「belong」というと「属する」という意味だと多くの人はとらえているだろう。試しにエキサイト辞典で検索してみると、以下のような結果が出る。

「属する」という意味だけ考えると「All your base are belong to us」は「全てのお前の基地は我々に属した」と訳して良さそうなもので、すなわち、英語圏で流行した理由がさっぱりわからない。


ただ、僕は「belong」という単語が、よく恋人関係で使われていることを知っている。「わたしはあなたのもの!」という場合「You belong to me」となる。「彼女はオレのものさ」という場合「She belongs to me」。おそらく、軍事用語の「base」と、世俗的な単語「belong」との落差が、予想以上の面白さを招いたのかもしれない。
(僕は英語が喋れないので、これらは推測にすぎないが)

個人的に「belong」という言葉は、恋愛感情を明確に表現しているのではないかと考える。特に、女性は、何かに属さないと生きていけないものである。家族だったり宗教だったり井戸端会議だったり色々あるが、恋愛の延長線に新たな家族の構築があるのならば(男の意志に関わらず)「I belong to you」というのは最大限の愛情表現ではないか。

I love you の love なんて、メイクラブのラブに過ぎない。ここは「I belong to you」という言葉を流行させて、「あの子はオレの彼女だぜ」と誇らしげな知人に「じゃあ、I belong to you. と言わせてみろ」と言ってやりたい。そうすると、男女間に流れる永遠の問題、友情と恋人の認識の違いについての悲劇が、ちょっとは救われたものになると思う。

恋愛について、僕がまず考えるのが、フランスの女性運動家ボーヴォワールのことである。彼女は、フランスの哲学者サルトルの事実上の妻として知られる。「事実上」というのは、二人は結婚を年契約にしたからである。もし、双方が契約延長に同意しなければ、夫婦関係は終了となる。互いに束縛されない対等な関係にするために、このような結婚形式を用いたのだ。

ところが、その実態は、かなり不公平なものであったらしい。契約を締結すると、サルトルは他の女に走る。ボーヴォワールは愛想をつかす。しかし、契約終了日が近づくと、サルトルボーヴォワールに取り入るのである。「やっぱり、君じゃないとダメなんだ」と甘い言葉をはいたりしていると、ボーヴォワールも「そうよね」と思い直してしまうのである。こうして、契約延長にサインすると、ふたたびサルトルは浮気に走る。その繰り返しである。さすが、実存主義を確立したサルトル、女性心理のこともよく理解していたと思われる。結果として、ボーヴォワールには気の毒な結果に終わったのが、この「契約結婚」であったのだ。

「Love」なんてものは、いろいろ変わるものである。男はやはり若い女の子に目を奪われてしまうものだし、女だって同じ相手とずっとベッドを共にすると不安にもなるだろう。しかし、いくら互いが別の人とメイクラブしても「belong」という関係は変わらないものである。それは女性にとっては、みずからの価値基準であり、地軸である。個人的に結婚というものは「belong」であって、loveとかlikeとかは関係ものだと思う。
All your base are belong to us という僕には面白さがイマイチわからない冗談に思いをはせながら、そんなことを考えてみた。
なお「I belong to you」という言葉は、英語ではもっと俗っぽく使われていて「わたしはあなたに属する」と、しかめっつらな意味ではなくなっている。ここの文章を英語圏の人が読んだら、これまた冗談に過ぎない話かもしれないことをお断りしておく。

【参考】

  1. ジャン=ポール・サルトル - Wikipedia
  2. シモーヌ・ド・ボーヴォワール - Wikipedia
  3. サルトルの時代 - 星の輝く夜に