秘境・小幌駅にて撮影した特急通過動画
「秘境駅」という言葉をご存じだろうか?
周囲に、人家やアスファルトの道路など、人間生活の匂いがまったく漂わない駅。そんなさびれた駅のことを、鉄道ファンは「秘境駅」と呼ぶ。
そのなかで、もっとも有名なのが、今回紹介する動画の舞台「小幌駅」である。
どれほど、人里離れた辺境の地にあるのか。
GoogleEarthで調べてみるとわかる。
緑の森の中に、ぽつんと浮かんでいるように見えるのが、この小幌駅である。
長いトンネルとトンネルの間、それぞれ5キロ以上離れた駅の中間地点として、まるで吊橋を結ぶ島にパーキングエリアが作られるように、この駅は建てられたのだ。
一日の乗客は、ほぼゼロ。生活のために、この駅を利用する人は一人もいない。
地図をズームアウトする。ようやく道路が見えるが、住宅地はまだ見えない。
他の道路や田園風景が見えるぐらいになると、小幌駅は山に埋没して、印がないと見つけることは不可能だ。
雲が映りこむぐらいの縮尺でないと、人々の生活する場所を映すことができない辺境にあるのだ。
そんな小幌駅に降りて、特急列車の通過を撮影したのが、今回ご紹介する「【ニコニコ動画】通過動画 - 室蘭本線小幌駅で列車の通過を体験する」である。
小幌駅には、上下合わせて一日8本の普通列車しか停車しない。
一度降りると、ふたたび列車が停車するのは数時間後。
携帯電話は通じず、電話BOXもない。外界と連絡する手段は、この小幌駅にはない。
あたりは静寂に包まれている。
街では決して得ることのない静けさだ。
駅の施設以外に、人工物は何もない。
地図で紹介したように、三方は険しい山に囲まれている。残りの一方からは海が見えるが、人間の息づかいはどこにも感じられない。
その静穏を乱すものは、一つしかない。
突如、強い風が吹く。
それは、列車がトンネルに入ったことを示す。
あまりの風の強さに撮影者も立っていられないようだ。
その風の音とともに、列車接近警報が鳴り響く。
そして、
トンネルに明かりが見えたことを確認すると同時に、
風を切り裂くかのように、特急列車が猛スピードで通過する。
やがて、煙がたちこめてくる。
「まるで火災が発生したかのようだ」という視聴者のコメントに思わずうなずいてしまう。
通過はほんの一瞬だが、その予兆である激しい風。その後にたちこめる煙。
静寂に包まれた秘境駅だからこそ知ることができる、鉄道がもたらす運動力の凄まじさ。
街の喧騒の中では決して知ることができないものを、この動画は教えてくれる。
この特急列車より速い物体はあるだろう。
しかし、この映像ほど「静と動の対比」が強調された動画は、他で見ることができないのではないか。
撮影・編集ともによく練られていて、良質な10分のドキュメント映像である。
通過動画 - 室蘭本線小幌駅で列車の通過を体験する
→http://www.nicovideo.jp/watch/sm1094203