ハルヒシリーズを語る(その1)

 
 知り合いの中2の子が「涼宮ハルヒの憂鬱」にどっぷりとハマってしまい、主人公ハルヒに憧れるどころか、何とかしてハルヒみたいになろうと頑張っているらしい。
 
 女子中学生なら誰もが持つ男性への関心と情熱が、すっかりアニメに向けてしまったみたいで、「困ったものだ」と知り合いは話していた。個人的には男と付き合うぐらいならオタク化したほうが良いんじゃないかと思うのだが、そんなアドバイスをすると、半殺しの目に合うのは間違いないのでやめておいた。
 

 さて、「ハルヒ」はアニメが一般的に知られているが、小説による原作を先に読んだほうが間違いがない。そう考えて「涼宮ハルヒ」シリーズを読んでみようと思ったのだが、日々はトイレのレバーをひねるがごとく過ぎ去ってしまった。
 
 そんなとき、2ろぐの「やる男が小説家になるようです」(http://urasoku.blog106.fc2.com/blog-entry-244.html)を読んだ。なかなか面白く、ライトノベルというジャンルにも偏見を抱かないようになった。そこで、この正月を利用して、ハルヒシリーズを読破しようともくろんだのである。
 
 ついでに購入したのは田中ロミオ人類は衰退しました (ガガガ文庫)美少女ゲームシナリオライターで名をはせた人で、熱狂的なファンを持つ。それだけの力がある文章を読むことは、刺激的な経験となるであろう。
 
 こうして、僕は田中ロミオの「人類は衰退しました」と、ハルヒシリーズ全9冊を年末年始に読んでみた。
 
人類は衰退しました (ガガガ文庫)
 
 まず、最初に「人類は衰退しました」について。
 ゲーム界から小説界になぐりこみをかけた野心作かと思いきや、そんな意欲はどこにもなく、人脈で執筆機会を得て「絵本になったらいいなぁ」程度の気分で書いたものらしいと「あとがき」に書いている。
 普段は「あとがき」なんてヤギの餌にもならないが、こういう作品のときはすごく助かった。
 そうでないと、僕のラノベ挑戦は、この本で終わっていたかもしれない。
 文章力や着眼点は面白く感じるところもあったが、この作品の器では、かなり物足りない。
(もしかすると、続編以降で、たくみな構成力を堪能させられるかもしれないが)
 
 この「人類は衰退しました」で田中ロミオというライターを知った人は不幸である。
 氏の作品をこれ以外に知らない僕でも思う。
 たとえるならば、「クリスマスキャロル」でチャールズ・ディケンズを知ってしまったぐらい不幸である。
 もし、別の形で氏の作品にふれるときは、この本を読んだことは忘れようと思う。
 まあ、ごく端的にいえば、読むだけ時間の無駄だった作品である。
 
涼宮ハルヒの憂鬱 ※表示されている表紙とは異なる場合がございます。あらかじめご了承ください。 (角川文庫 角川スニーカー文庫) [ 谷川流 ]
 
 と、ラノベ不信感が高まった状態で読んだ「涼宮ハルヒの憂鬱 ※表示されている表紙とは異なる場合がございます。あらかじめご了承ください。 (角川文庫 角川スニーカー文庫) [ 谷川流 ]」。
 最初は「俺一人称」の衒学的文体に辟易した。
 ここまで雑学をたくわえた高校一年生などいるはずがないとか、文章に彩りを魅せるならもっと別のやり方があるはずだ、と拒否反応を起こしてみたりしたが、ハルヒという女の子、SOS団という設定、まともな性格がむしろ少ないというシチュエーションは楽しめた。
 
 結論からいうと、ハルヒシリーズは、第5作「涼宮ハルヒの動揺 ※表示されている表紙とは異なる場合がございます。あらかじめご了承ください。 (角川文庫 角川スニーカー文庫) [ 谷川流 ]」まで読んでおけば良い。
 第7作「涼宮ハルヒの陰謀 (角川文庫 角川スニーカー文庫) [ 谷川流 ]」からの展開には心底ガッカリして、今のところ最新作である「涼宮ハルヒの分裂 ※表示されている表紙とは異なる場合がございます。あらかじめご了承ください。 (角川文庫 角川スニーカー文庫) [ 谷川流 ]」にいたっては、読むことさえ苦痛だった。
 作者も楽しんで書いてなさそうである。
 何を書けばいいのか、わかってなさそうだ。
 
 シリーズ読破後に見たアニメはヒットしただけあり良い出来である。
 漫画は特に読む必要はないだろう。
 ただ、小説を読んでアニメを見るというスタンスでのぞんだほうが、ハルヒシリーズの本質を知るうえで軸がぶれないと思う。