シリーズの将来性を感じる変態コメディ第2弾! ― 伏見つかさ『エロマンガ先生 2』(評価・B+)

 

 

人気絵師である妹に「えっち」な絵を描かせるべく、
知人女子に「ぱんつ見せて」と頼みこむ、男子高校生の青春物語!
 

 『俺妹』作者の新シリーズである『エロマンガ先生』。1巻はその題名に似合うバカな内容(誉め言葉)だったが物足りない点があった。
 そのひとつが、挿絵があまりエロくなかったことである。
 このシリーズも『俺妹』と同じく、かんざきひろが絵師を担当している。彼のイラストは魅力的だが、お色気成分が足りない。だから、我々はその願望を薄い本(つまり二次創作の同人誌)に求めざるをえなかったものだ。
 『エロマンガ先生』1巻でも、作者が渾身の「エロいシチュエーション」を用意していたのに関わらず、かんざきひろはスルーしてしまったのだ。
 これにくじける作者ではなかった。なにしろ、シリーズ通して1巻がもっともクソという、驚くべき進化を遂げた『俺妹』の作者である。
 そして、ついに、この2巻では、その執念が実ったのか、公式とは思えないエロい挿絵が掲載されたのである。わざわざ作中の人物に「ぱんつのえっちなシワ」とか「恥ずかしい表情」が大事という「こう描くと萌える!」アドバイスを載せた甲斐が実ったのである。おめでとう、そして、ありがとう、伏見つかさ先生。
 この愚かな作者の願望は、このまま2巻の展開にも通じる。以下、セリフをちょっとだけ引用。
 

「俺が助けるのは妹だけだ」
「ぱんつ見たかったんだもん」
「戦闘民族足立区民をなめるなよぉ!」
「さてはおまえ――ファッションビッチだろ!」
「……やばいと思ったが、よくぼうを抑えきれなかった」
 

 面白けりゃなんでもアリなラノベの勢いを感じるコメディー作だ。
 

 

 2巻の内容は、1巻に劣らないバカな内容(誉め言葉)である。どう考えても、一発ネタとしか思えない設定でシリーズを続けるところが、作者の驚くべきところだ。
 今回は【ラノベ天下一武闘会】というアホな企画が開催される。ラノベ作家である主人公(高校生♂)は、担当絵師である妹(ペンネーム・エロマンガ先生)の協力を得て、その企画で優勝し、出版枠を勝ち取ろうと意気込むが、彼らの前に立ちはだかるのは、山田エルフ先生(全裸でピアノを弾く変態)の売上をもしのぐラノベ界第一人者のムラマサ先生だった。
 面白いラノベを描くためには、魅力あるヒロインたちが不可欠であるという妹(エロマンガ先生)の助言にしたがい、主人公は知人女子に声をかける。「妹のためにぱんつ見せて!」。なぜなら、エロマンガ先生の持ち味は、えっちなイラストにあるが、新しいヒロイン像を構築するためには、その子の「ぱんつ」を見ることが欠かせないからなのだ。
 ちなみに、主人公は妹に、妹に似たヒロインのえっちなイラストを求めて張り倒されている。つまり「おまえをモデルにした、えっちな絵ちょうだい」と妹に言ってるのだ。だから、知人女子に「ぱんつ見せて!」と頼むなんて主人公には朝飯前なのだ。驚くべき世界である、ラノベ業界ってやつは。
 ここで、第1巻で存在理由がわからなかったビッチ中学生がいかされることになる。1巻を読んだときは「いらない子」と思っていたが、2巻のあまりの扱いの悪さに逆に好感を持った。以降も彼女はひどい扱いを受け続けるエロ担当キャラとして輝きつづけるであろう。
 

 ただ、この2巻、序盤は面白かったものの、終盤の展開は予定調和すぎてイマイチだった。展開に鮮やかさがない。ラストの編集者の態度の豹変ぶりは面白かったが、ムラマサ先生の存在感が乏しいと感じた。
 1巻でも名前だけ出ていたムラマサ先生だが、その異様な個性を序盤から見せるべきではなかったか。対決のときだけ現れるのはキャラをいかしているとは感じられない。
 いっぽうの山田エルフ先生は、チョロイン(チョロいヒロイン。ラノベでは欠かせぬ女性)っぷりをいかんなく発揮して盛り上げてくれた。個人的には、桐乃や黒猫よりも魅力あるヒロインだと思う。
 

 1巻で僕が指摘していた「もったいぶった」展開ではなかったのは評価できる。ただ、読んでいて終盤が失速したと感じたのはマイナス点だ。この2巻でも、かたくなに『俺妹が良かった!』とするファンを動かすことは難しいのではないか。『俺妹』11巻の完成度には及ばない、と見る。
 

 ただ、かんざきひろにえっちな挿絵を描かせるなど、今シリーズの将来性は見えてきた。作者の前作『俺妹』は2巻までは正直「うーん」な完成度だったが、3巻以降からは「ラノベで一番おもしろいんじゃないか」というシリーズに化けた。
 ラノベ業界を話題にしながらも、ラノベ作家志望者にはまったく役に立たない内容ではあるものの、今後もさらなるバカな展開を期待したい。評価はB+。