オバマ大統領は、キューバ政策を転換させることができるか
米州首脳会議、中南米諸国が米大統領の方針評価
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-37571620090419
ゲバラのことを語るとき、「アメリカ合衆国」のことを「アメリカ」と書いていたのでは、話がわからなくなる。今回の「米州首脳会議」こそ、「アメリカ首脳会議」である。中南米を抜きにして、「アメリカ」を語ることはできない。
さて、今回のニュースは、オバマ大統領にすっかり友好的な中南米諸国が、キューバの経済制裁の解除と、米州首脳会議への参加を呼びかけたという話である。
僕がゲバラを語るのは、別に「共産主義に理解を」とか「ゲバラを尊敬しよう」とか、そういうものではなく、例えば、こういうニュースを積極的に知ることで、国際社会を、より理解しやすくなるのでは、という意味である。
例えば、キューバ革命以降の歴史を知っていると「(米国に)われわれの大陸に孤立主義を取る余地はない」というブラジルのリラ大統領の言っていることがわかるのである。
米国は50年にわたり、キューバに経済制裁を続けている。これは、国際社会で批判され続けている。
「キューバと米国の経済制裁」
http://www.jmm.co.jp/dynamic/report/report5_1013.html
日本やオーストラリアといった、米国に追従しがちな国家も、決議に賛成に回るようになり、米国はキューバ政策では完全に世界から孤立しているのだ。
そんな中南米諸国の要望に対し、オバマ大統領はこう答えたという
キューバとの新たな関係を築き、人権から経済までさまざまな問題を話し合う用意があるとの考えを提示。その引き換えとしてキューバ政府には、国交回復の障害となっている政治改革を求めた。また、南米諸国の各国首脳にもキューバの民主主義に焦点を当てるよう促した。
しかし、人権や表現の自由について、本当にキューバは遅れているのだろうか。中南米諸国には、カストロ政権よりも強圧的なところが多い。
そして、現代史は「開発独裁」が経済発展をもたらしたことを語っている。特に、東アジアではその傾向が強い。朴正煕しかり、トウ小平しかり。リー・クアンユーしかり。
・開発独裁―Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%96%8B%E7%99%BA%E7%8B%AC%E8%A3%81
フィデル・カストロの長期政権は、米国との断交がもたらしたものである。キューバの窮状を、フィデルは米国の制裁のせいであると説き続けた。
フィデル・カストロは「正義」の政治家である。人種よりも民族よりも「社会正義」にこだわり続けてきたのが、彼が多くの独裁者と違うところであろう。
彼は「正義」のために、米国への強硬姿勢を崩さなかった。両国間の歴史を見て、米国に非があるのは間違いなく、フィデル・カストロの長期政権を好ましく思っていない人々にとっても、米国が制裁を続けるかぎり、カストロ政権に正義があることは理解できるだろう。
いっぽうで、米国としても、対キューバ政策を簡単に方針転換できない事情がある。ただ、オバマ大統領は、ブッシュ大統領に比べると、そのしがらみがないはずである。
米国民の71%は、キューバとの外交関係正常化をのぞんでいると言う。
http://www.cnn.co.jp/usa/CNN200904110015.html
キューバは新しい時代に立つべきである。そのためには、一刻も早く米国は制裁を解くべきだ。オバマ大統領はそうすることで、キューバ人にとって、そして南北アメリカにとって「正義」の人となりうる。
国際政治において、特に、ラテンアメリカにおいて、「正義」というのは重要だ。
統計上のデータからして、キューバが中南米において、教育・医療・文化の面では、きわめて高い水準にいることは事実で、他の社会主義国家に比べて、貧富の格差が少ないキューバは、経済の問題さえなくなれば、彼らの力で新しいものが生み出せるはずである。
米国民はフィデル・カストロという厄介な隣人をさまざま分析してきたが、多くの者は彼の社会主義への転向が理解できず、なかには彼の人間性にその政策を帰すという愚考をくりかえした。
フィデル・カストロはよくも悪くも「正義」を貫いてきた。「正義」の前には、人種や性別、そして経済すらも、彼にとっては取るに足らないことだったのだ。彼がソ連側に与したのは、「正義を貫くために生き延びる」ための手段にしかすぎなかった。だから、ソ連が崩壊しても、みずからの「社会主義国家体制」を崩そうとはしなかった。
もし、経済的に豊かとはいえないキューバ国民に同情するのならば、せめて、フィデル・カストロの「正義」をのさばらせた、米国のキューバ政策を批判しなければならないだろう。