ニコニコ動画「スーパーマリオ テクニックプレイ」
以前、ニコニコ動画で一つのジャンルを確立している「TAS動画」について紹介した。
「TAS」とは「tool-assisted speedrun」の略で、エミュレーターを使って最速クリアを目指すこと。
エミュレーターを使えば、実機(ファミコン)ではできないことが可能になる。
- どこでもセーブ
- ゲームスピードの調整
世界でもっとも売れたゲームソフト「スーパーマリオブラザーズ」では、もちろん、数多くのTAS動画が作られ、コンマ一秒でも縮めるべく、様々なアイディアが発表された。
そのため、今の世界最高記録動画は、バグ技を多用している。バグ技については、以下のページを参考に。
さて、これらのバグ技を駆使して「speedrun」ではなく「superplay」を全32面にわたって魅せてくれる動画を、ニコニコ動画で見つけたので紹介しよう。
07/04/10 16:50 投稿 スーパーマリオ テクニックプレイ(全ワールド) |
チビファイヤーマリオや糸引きキラーなど、懐かしいバグ技も披露してくれている。一秒たりとも油断できない良い動画であった。
しかし、相変わらずコメントでは「TASではなくて、TA」「Sはspeedrunの略」「TASさんって誰ですか?」など荒れている。個人的には「TAS=タス」「TA=ティー・エー」という言いにくさから「tool-assisted superplay」の略でいいじゃないかと思うのだが、それでは許せない人が多いらしい。
もちろん「ツールを使ったインチキだ!」というコメントも多い。世の中を見渡すと、過剰な編集・過剰なオーバーダブがまかり通っているのに、TAS動画は素直に楽しめないというのも妙な話である。ライブにはライブの良さがあるし、スタジオ盤にもスタジオ盤の良さがある。
おそらく、ゲームのプレイ動画は「誰にでもできる」と思われているのだろう。実際、ニコニコ動画にはゲームのプレイ動画があふれかえっている。確かに、TAS動画なんて誰にでも作れる。下の動画を見れば、あなたにだって作れる。
07/10/05 09:38 投稿 TAS動画の作り方 |
しかし、「見せる目的」のない動画に意味はあるのか。ゲームプレイ動画だけでは、プレイする楽しさというのは伝わりにくいものなのだ。友達でワイワイ騒いでいるレベルのものを、ニコニコ動画という不特定多数の戦場に公開して「どうだ!」と胸を張るのは、ちょっとプライドがないのか、と思ってしまう(もちろん、ニコニコ動画は敷居の低さの魅力であるが)
誰にでもできる「TAS動画」だからこそ、人気のある動画には「理由」がある。
今回の動画は「speedrun」ではないが、無駄な動きが一つもなく、明確な意志によって作られた動画であることがわかる。おそらく、何千回もやり直して、ようやく完成させたものなのだろう。
「TAS動画」というのは、誰にでも作れる分、敷居が高いジャンルであると思う。他人をひきつけるアイディアが思いつかないかぎり、エミュレーターを駆使した動画を作ろうとは考えないほうがいい。
「TAS動画」とは1%のひらめきと99%の努力によって作られるものだが、努力するなら誰でもできる。時間がありあまった人はいくらでもいる。
ぜひ「TAS動画」を見るときは、その1%のひらめきの素晴らしさと、それを表現するためにつちかわれた99%の努力に思いをはせながら楽しんでいただきたい。
【オマケ】
外人ゲーマーは、何もTAS動画ばかりを作っているのではない。レビュアーが個性を生かして、それぞれのゲームを紹介するというスタイルも人気を博している。
そんなTAS動画と正反対に属するゲームプレイ動画を紹介しておこう。意訳も実に楽しい出来になっている。
Youtube -ブチ切れゲーマー ドラゴンズ・レア編
Youtube -ブチ切れゲーマー ゴーストバスターズ編
日本の場合、ニコニコ動画のコメントにより、それぞれのゲームの面白さ(ダメなところも含めて)を紹介することはできるが、センスのある人のコメントがいつまでも残っているわけではない。ただ、あまりレビュアーがでしゃばるっていうのは、日本人の美学に反するところもあるみたいで、プレイ動画だけで「魅せる」工夫をする人が大半である。
しかし、なかなか、それぞれのゲームのデザイン(バランスやシステムなどを含めて)の特色を、動画だけで伝えるのは難しい。