勇者と切なさとプライベートビーチと

 

*これは、去年の9月4日に書いた記事です。なぜか非公開にしてました。
しばらく、更新できそうにないので、とりあえずアップ。 
 

「勇者」って、どう読む?

 
 史上最弱の主人公が登場するゲームとして、いまだに高い認知度を得ているのが「スペランカー」というファミコンゲーム。
 しかし、その続編である「スペランカー2」を知る者は、ほとんどいない。
 ライフ制となっていて、高い場所から飛び降りても死ぬことはないことから、インパクトがなくなってしまったからだ。
 しかし、「史上最弱の主人公」という汚名を返上したものの、ステージがやたらと大きく、操作性はきわめて悪いという、ダメゲーの典型という作品である。
 そもそも、探検家(スペランカー)というタイトルなのにエスパーや聖職者という怪しい職業が使えたりとか、しゃがみ攻撃がやりにくいとか、ツタからのジャンプに失敗すれば一人死ぬどころか即ゲームオーバーになる理不尽なゲームデザインとか、頼みの綱のコンテニューじいさんが死んでたりとか。
 そんなツッコミどころ満載の続編なのだが、もっとも多くの人が突っ込んだのは、そのサブタイトルにあると思う。
 

 
 「スペランカー2 勇者への挑戦」
 あなたは、これを何と読むだろうか?
 
 
 正解は「ゆうしゃへのちょうせん」ではなく「ゆうじゃへのちょうせん」である。
 

↑ゲーム中のメッセージも「ユウジャ」に統一されている。
 

↑ROMカセットの表記も「ゆうじゃ」
 
 さすがスペランカーというクソゲーを作ったスタッフ、漢字の読み方すら知らないとは、とあきれる人がいるかもしれないが、実はこれ、間違った読み方ではないのだ。
 
勇者 ―Wikipedia
 
 「勇者」という漢字は、「ゆうしゃ」と読んでもいいし、「ゆうじゃ」と読んでもいいし、「ようしゃ」と読んでもいいのである。
 試しに「ゆうじゃ」で変換してみるといい。僕の使っている「Google日本語変換」だと、「ゆうじゃ」で「勇者」が候補に出てくる。
 
 それなのに、「勇者=ゆうしゃ」が当たり前になったのは、間違いなく「ドラゴンクエスト」の影響によるものだ。
 「勇者」を「ゆうじゃ」と読ませる「スペランカー2」が発売されたのは、1989年である。他の有名ゲームと発売順に並べてみると……
 
スペランカーファミコン版)
スーパーマリオブラザーズ
ドラゴンクエスト
ドラゴンクエストII 悪霊の神々
スペランカー2 勇者への挑戦
ドラゴンクエストIII そして伝説へ
 
 つまり、今から二十年ほど前は、「勇者」の読み方は「ゆうしゃ」一辺倒ではなかったということである。「スペランカー2」を作ったスタッフがバカだったわけでも意固地だったわけでもなく、その当時、「ゆうじゃ」と読んでも問題なかったのだ。
 それほどまでに「勇者=ゆうしゃ」という通例は、最近作られたものである。ギャルゲーが「フラグが立った」という用語を生み出したのと同じような、新しい概念である、といえる。
 
 

切なさのバーゲンセール

 
 「一夏の切ない物語をあなたに」というキャッチコピーに騙されてプレイしてみると、
 
「お兄ちゃん、そんなことされたら切なくなっちゃう!!」
 
 なんて、とんでもないセリフが出てきて茫然自失としてしまう今日この頃の僕である。
 いや、「切ない」というのは「センチメンタル」ということであって、乳首をいじられた快楽を「切ない」と表現するのは問題あるのではないかと。
 
 しかし、エロゲでは、わりと「切ない」という言葉が人気である。この誤用を使うのは、いわゆる「ロリっ娘」キャラに多い。
 彼女たちはそのような経験も知識もないから、未知の快楽への遭遇に戸惑っちゃうわけである。それを明確に表現する言葉を持ち得ないのだ。
 そして、エロゲというのは、ボイスがなければならないわけで、ある程度、ヒロインにみずからの状況説明をさせなければならない。
 
 そこで生み出されたのが「切ない」という表現である。
 
 即座に「気持ちイイ!」なんてセリフを吐こうものならば、プレイヤーは「経験ないくせに知ったような口ききやがって。こいつはエセロリだ」とガッカリしてしまう。
 だから、そういうゲームでは「あははは! こすばいよお、お兄ちゃん」→「あ、アン、ハァハァ」→「切ないよお、お兄ちゃん」→「なんかくる! なんかきちゃうよお! お兄ちゃん!!」という黄金パターンができちゃうわけだ。
 「イク」という表現を使わないために生み出された工夫と言えるだろうが、僕としては「いや、それは切ないといわないから」と冷静になっちゃうのである。困ったものだ。
 
 ちなみに、最近のトレンドは、兄妹ネタではないらしい。エロゲをプレイする人々が「お兄ちゃん」と呼ばれるには年を取りすぎて、感情移入できなくなったからである。
 かわりに人気になっているのが、父娘とか叔父姪とか祖父孫娘とか、そういうシチュエーションである。義理にしろ、義理じゃないにしろ、どんどんヤバイ方向になっていることは間違いない。とっとと規制して、そういう趣向を持つ人々はアンダーグラウンドに引きこもらせればいいのに、と僕は思うのだが。
 
 まあ、そういう風潮とは関係ないのかもしれないが、最近、アニメ化されたり映画化されたりと話題を集めているのが「うさぎドロップス」
 
 これを見ると「ああ、今の俺がダメダメなのは、女の子を育ててないからだ」とかんちがいしてしまう。結婚する経済力はないけれど、娘は育てたいと胸ふくらませる愚かな連中がどれだけいることか。
 
 そう思いながら、先日、ネットカフェに入り「うさぎドロップス」を全巻読破したのが……
 
 なんなのだ、あの終わり方は!!
 
 いやいや、俺たちはああいう展開を期待していたのではないはずだ。理奈ちゃんかわいい、という感情を「これはロリ感情ではない父性だ」と割り切ることで、ページを進めてきた俺たちに対して、あの結末は背信行為だといっていい。
 
 そう、「よつばと!」の三姉妹の父親のように、ウェディングドレス姿の娘に肩たたきをしてもらいたい。そして、さみしさをにじませながらも、笑顔で新たな門出を見送る。そんな展開を期待して、皆さんも「うさぎドロップス」を読んだのではなかろうか。
 
 そんなわけで「うさぎドロップス」を全巻読破した今では「幼い娘を育てれば俺は変われる」という愚かな願望をいだくことはなくなった僕である。
 だいたい、十歳ぐらいのときに「パパと結婚する!」と言われるのはかわいいけど、女子高生になって「実はパパのことが……」とか言われるのは、ちょっと違うと思う。
 世の中にはもっと素晴らしいものがあるはずだ、とエロゲをプレイしながら思う今日この頃である。
 
 

プライベートビーチってどこにあるんですか?

 
 と、そんな文章を書きながらも僕はロリコンではないのだが、近所のK先輩はすっかりかんちがいしたのか「君には小学生がいいだろう」と僕に「ロウきゅーぶ!」文庫本を貸してきた。
 
 まあ、受け取った僕が悪いわけで、しかも五巻まで読んでしまったわけだが、それでも現在放送中のアニメを見る気にはなれない。どう考えても頭身がおかしいだろう、あのデザイン。
 
 そんなわけでアニメは知らないが、ラノベに関していえば、あまり「小学生らしさ」というのは感じられない。ひなたちゃんはかわいいが、それは、素の小学生らしさを体現しているからではない。どうも「小学生を好きになるのはヤバイ」という背徳感だけで成り立ってるような内容である。僕はロリコンではないが、そういうエセロリコン小説を読むと「ロリへの追求が甘い!」と憤りを感じざるをえない。
 
 それにしても、なぜ、ラノベでは「プライベートビーチ」が頻繁に出てくるのだろうか。
 
 実際のところ、夏の人混みの海岸にうんざりしている我々からすれば、プライベートビーチで優雅にしている連中がいると思うだけで腹が立つ。これはもう革命ものだと言っていい。
 
 ちなみに、カストロゲバラキューバには、革命以前にはプライベートビーチが腐るほどあった。もちろん、そこは黒人禁制だったのである。革命後、それらの海岸は黒人にも解放された。
 
 革命政権打倒を目指して米国政府が主導した「ブラヤ・ヒロン湾侵攻(ピッグス湾事件)」が失敗に終わったあと、ゲバラは米国の黒人兵士にこう語りかけたそうだ。
 
「君のような黒人は米国の海岸じゃ締めだされるけど、我がキューバには、どこにもそんな人種差別はない。それなのに、なぜ、君は我々と戦おうとしたんだい?」
 
 そんなわけで、僕は社会主義国家の欠点をキューバを研究して知り尽くしているのに関わらず、ラノベで「プライベートビーチ」というものが安易に出てくることに戸惑いを感じるのだ。まあ、結局、今の日本を何とかするには、一度ぶっ壊すことしかないみたいなので、そういう虚飾された富豪像から革命家が生まれるのも面白いかもしれないと思ったりする。
 
 そうそう、かなり書き進めたのに関わらず、連載することをやめた「女子高生まどか☆マギカ」という僕の二次創作では、マミさんが共産主義者として出てくる予定だった。
 それぞれのキャラの役割を紹介すると、こういう設定である。
 
巴マミ ボランティア部部長で共産主義者
暁美ほむら 軍ヲタでネトウヨ
佐倉杏子 腐れキリスト教
・キュウベエ(久米さん) 芸能事務所スカウト 元キャバクラのキャッチ
 
 でも、こういうのって、書くのは面白いけど、ボランティアに従事する人は左翼かぶれだ、とか余計な偏見を助長するだけなのでやめた。実際、書いていてかなり悪ノリしちゃったし。
 
 ちなみに、先日に入院した原因というのが、これを書きすぎて徹夜したまま働いたせいなのだから情けない。
 僕も年をとったのだから、そういう悪ノリは妄想だけに控えたいと思う今日この頃である。